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雑誌 Pen 新年合併号は、古代エジプトを特集したものだった。
行き付けの「丸善」で、この本を見たとたん、うれしくてたまらずレジへ直行!
表紙は、あのエジプト史上、最高の美女と謳われるネフェルティティ――この本の中でも書かれていたけど、三千数百年も前の美女が、現代でも通用する基準を持っているのが本当に凄い。
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堂々たる編集で、御覧の通り、内容の濃い紹介と美しいカラー写真が、いっぱいに詰まっている。生半可なエジプトの専門書や関連本を読むより、早く深くエジプトが理解できるはず。
古代エジプトファンだったのは、大学へ入る頃までで、最近の動向についてはとんと知らなかった。今では、古代へのロマンというより、最新の機器を使った科学的調査が主流のよう。ピラミッドの中に、未知の空間があるらしいことがわかったらしいのだが、今なお、この建造物の目的は不明なのだとか(まあ、やっぱりファラオの墓なのだろうけど)。
歴代のファラオを模した石像、エジプトの神々、色鮮やかな壁画に、ヒエログリフ……やっぱり、これほど唯一無二の特徴を持ち、魅惑的な文明はない。目のまわりにアイシャドーを施した人々の横顔、アーモンド形の美しい目、ユニークな形の冠――はるかな昔生きていた人たちだというのに、壁画にかかれた姿は、生き生きとして、今にもこちらを振り返りそうなほど。
彼らは、パンを食べ、ビールやワインを楽しみ、不思議な形の楽器やゲーム(これが、現代のバックギャモンそっくり)を楽しんでいたし、「ミイラ医師シヌヘ」という最古の文学をも生みだしたのだった。
また本棚からこの本をひっぱりだして、エジプトから異郷をさすらい、故郷にたどりついたシヌヘの物語を楽しみたいもの。人生の終わりちかくになった、シヌヘの心をよぎる静かな諦念。数千年も前から、古代エジプト人は、人生とはこのようなものだ、と知っていたのだった。