田園城郭都市構想 16

2017年02月06日 | 湖と城郭都市

1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
       -理想都市像の変遷-

5-4 イギリス:ニュータウン政策の新展開
4-3 ミルトン・キーンズの新たな成長

「ミルトン・キーンズ成長戦略 2031

ここでは、20066 月に公表された「ミルトン・キーン
ズ・成長戦略2031The New Plan for Milton Keynes:Strategy
for
Growth to 2031)」の概要を紹介される


① 空間ビジョン・目標像

・より持続可能な未来を保証するためにライフスタイル
 の変化に対応し、個性とダイナミズムを保持し続ける
 象徴的な都市
・都市の中心部に大学を持ち、イノベーションとテクノ
 ロジーによって成長し続ける知識ベースの都市
・特色ある緑とランドスケープ、豊かな文化、教育、レ
 クリェーション活動、優れた生活質を享受できる都市
・既存のエリアの主要な改善と、これを補完する持続可
 能な都市の拡張によって、バランスのとれた成長を遂
 げる都市
・都市全体を結びつける安全で近代的、効率的な公共交
 通システムの実現

② 成長戦略・戦略的目標

・成長のスケール:2001~31 年の間に新たに現況都市
 域で35,900 戸(新規開発20,800戸、再開発15,100戸)、
 新たな拡張エリア(約1,860ha)で32,700 戸、全体で
 68,600戸の住宅を建設、うち30%はアフォーダブル住
 宅とする。

 注)2005 年Milton Local Plan 2001-2011 で既に約600ha
 の区域拡張が決定してる。この成長戦略ではこれに加
 えて、現在のMilton Keynes Borough の外側にニュータ
  ウン区域を約1,260ha 拡張することが提案されている。

・成長の焦点:グリーンフィールド開発より、既開発エ
 リアの活用を優先させること。都心部の再活性化を最
 大化し、本都市の広域的役割を維持・発展させること。
・アーバン・ルネサンス:既成都市地域でのローカルな
 ニ ーズを考慮した都市再生をすすめること。
・バランスのとれた成長:最も優先すべき既成都市地域
 の再生を阻害せず、これを補完するように、慎重に配
 慮された都市の拡張プログラムを計画すること。

・経済の繁栄:経済成長に向けて、特に知識ベース産業
 と創造的産業における新規雇用及び高度な技術を持つ
 労働力をともに拡大すること。

・住宅と雇用のバランス:より良い立地条件の場所への
 事業所用地の移転と立地の悪い用地の土地利用の転換、
 住宅と雇用のバランスを維持すること。

・持続可能なコミュニティ:都市再生エリア・都市拡張
 エリアの双方で、都市の成長にあわせながら、適切な
 社会的、文化的インフラを伴った住宅と就業機会を供
 給すること。

・持続可能な輸送システム:新しく改良された公共交通
 システムを導入し、これと新たな開発とを結合するこ
 と。公共交通の利便性の高いエリアに高密度開発を導
 入し、自動車交通への依存を低減、歩行と自転車利用
 を促進すること。

・ランドスケープ・田園環境の保全:グリーン・インフ
 ラ及び歴史的環境の保全と増進、各地区の景観特性や
 居住地の一体性を向上させるような計画を保証するこ
 と。

・コミュニティの個性の尊重:既存の居住地及びコミュ
 ニティの独自の性格やアイデンティティを維持するこ
 と。

・持続可能な開発:デザイン、持続可能な建設、エネル
 ギー効率に関する高水準のスタンダードを設定し、都
 市開発が環境の改善に結びつけられるようにすること。

※ この項目には「防災」という項目を入れる必要があ
  るだろう。

③ 空間計画の原則

・自然資産の保全と増進:リニアパークを始めとする戦
 略的な緑地構造を保全しつつ、拡張区域への連続的拡
 大を図り、さらに都市域外の自然資産とのネットワー
 クを形成する。また、重要なランドスケープ及び生態
 的特性を保全し、重要な生態系、自然景観の保全を考
 慮して都市の成長限界を設定する。

・成長と変化に向けての「Whole City」アプローチ
 次世代の都市建設は、成長と変化(growth and change
 を一体的にすすめる「全体論的(holistic)」な方法に
 基づくものとする。一体的で持続可能な居住地形成の
 ために、新たなコミュニティの建設と社会的、経済的、
 物理的に衰退したエリアの改善を同時に進める。

・都市の拡張
 新たな拡張エリアを既成都市の南東部、南西部に設定
 する。これらの区域の開発は格子状パターンによるも
 のではなく、約7,000 戸の近隣住区を構成単位とし、
 住宅、コミュニティ施設及び雇用機会を一体的に組み
 込んだ用途複合型のコミュニティとする。また、これ
 らのエリアを効率的かつ実現可能な公共交通によって
 都市センター等に結びつけることとする。新たな拡張
 エリアでは、幅広い社会的、経済的広がりを持つ居住
 者のミックスを実現するために、幅広い住宅タイプや
 規模、多様なスタイルとデザイン、様々な密度の住宅
 を組み込み、豊かな多様性、選択性を持つ住宅地を形
 成する。



都市再生エリア
 ニュータウン内で最も初期に建設され、現在では住宅
 の質、教育・健康サービス、雇用等の問題を抱え、高
 いレベルの貧困エリアを形成する地区を中心に都市の
 再生を進める。これらの地区の多くが都市の中心軸を
 形成するSaxon Street Corridor に沿って展開するため、
 このエリアを都市再生の最優先地区(Priority Corridor
 として位置づけ、公共交通へのアクセス、コミュニテ
 ィ施設、住宅・住環境等の飛躍的改善をすすめる。団
 地の再生を通じて各地区の個性とアイデンティティを
 つくりだすこと、近隣センターの計画と団地の再生に
 よって住宅タイプやスタイル、建物やスペースのデザ
 インの多様性を高めること、また持続可能なコミュニ
 ティの形成、公共交通の利用を促進するために交通ア
 クセスの容易なエリアの高密化を図っていくことを基
 本にこれらの地区の再生を進める。住宅の再開発とあ
 わせて、Priority Corridor 沿いで新たな近隣センターの
 形成を図る。新たな近隣センターは、これまでのロー
 カルなサービスに対してより広い圏域をカバーし、隣
 接するgrid square を結びつける役割を持つものとする。
 また従来に比べ、はるかに高いレベルの機能を備えた
 ものとする。

 場所の感覚とアイデンティティの強化
 全ての新たな開発は、人々に住み、働き、訪れる場所
 への親
しみを感じさせる明確な個性と場所の感覚を持
 つものとする。
特に重要なポイントは、近隣センター
 の機能とデザインを基本
的に改善し、人々の幅広いニ
 ーズに対応し、多くの人々を引き
つける個性豊かな場
 所を創りだすことである。

※ この項はしっくりいかない。彦根市民憲章というエ
  シカルコードをベースにた「近隣センターの機能と
  デザインを改善→人々の幅広いニーズに対応→個性
  豊かな場所を創りだす」とあるが、彦根城という観
  光地という強烈なアイデンティテイだけで多くの既
  存コミニティでのポジティブな独自のアイデンティ
  ティの形成はややもすれれば翳む。まして、財政難・
  超高齢化・少子化時代である。



交通ネットワークの形成
 高レベル、高品質のアクセスを、都市内外を通じて実
 現し、
公共交通と私的交通の適切なバランスを実現す
 ることは、成長
戦略における最も重要なテーマの一つ
 として位置づけられる。
鉄道網の強化:ミルトン・キ
 ーンズとオクスフォードを連絡
する東西鉄道の延伸に
 よって、地域間連携を強化し、同時に新
たな拡張エリ
 ア、業務ゾーンへの公共交通アクセスを確保する。

 公共交通システム:新たな都市の骨格を形成するPriori-
  ty 
Corridor 及び拡張エリア、再生エリアを連絡する主
 要道路
Strategic City Road)において、公共交通シス
  テムの改善を
集中的、かつ段階的にすすめる。当初段
 階にはバス輸送システ
ムの改善を行い、沿道における
 再開発、高密度住宅地の形成の
進展に合わせて、トラ
 ム等の軌道系輸送システムの導入を図る。

 道路網:格子状道路パターンを維持しつつ、公共交通
 を導入す
べき主要道路において、道路構造の改善をす
 すめる。また、道
路リザーブ用地の活用等によって、
 隣接する二つの地区を結び
つける近隣センターの形成
 をすすめ、沿道の活性化を図る。新
たな拡張エリアで
 は、格子状道路パターンを拡張するのではな
く、公共
 交通を含む主要道路によってこれらの地区が直接都市

 センターに結びつけられるように計画する。

 パーク&ライドの導入:公共交通の利用を高めるため
 に、新
たなパーク&ライド駐車場を交通結節点に設け
 る。

※ 自動車社会に政策対応、中央政府は常に後手に回っ
  てきた(貨物搬送車などの排ガス規制など)。また、
  交通事故も減ってはいない。「パーク&ランド導入」
  で、減少するのだろうか?上擦っているような感も
  しないわけはない。例えば、「童の登下校時間帯
  の自動車速度制限条
例制定」や「交通事故ゼロ市民
  運動
」などの是非の方が、安全・安心・環境配慮の
  視点から、よりインパクトがあり、優先度も高い。

 
彦根市道路交通事故のすう勢

                            この項つづく

【エピソード】

 
 
  

 

【脚注及びリンク】
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  1. 田園都市 Wikipedia
  2. 第8次彦根市交通安全計画 2012,03.22
  3. Core Strategy (2013) - Milton Keynes Council
  4. "The New Towns: There Problems and the Future
    Department for Communities and Local Government,
    2002.11.21
  5. 日本エシカル推進協議会Japan Ethical Initiative-
    エシカル日本
  6. 明治期廃絶城郭の公園化について ―史跡の保存
    活用の前史として― 佐々木孝文
     2015.06.26
  7. 都市とは何か 都市計画なぜ必要か - 東北大学
    奥村誠  2015.10.15
  8. 和歌山市都市計画マスタープラン 和歌山市
    2017.01.12
  9. 和歌山市立地適正化計画 2016.12.22
  10. 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
    京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也
  11. 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
  12. 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
    45、2003.7.8
  13. 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
  14. 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
    宮﨑洋司市
  15. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.06 28
  16. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 26
  17. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 26
  18. 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
    佐藤健正、2016.07 03
  19. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  20. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
    橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  21. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  22. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
    のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2
    例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画
    制度全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  23. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  24. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  25. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  26. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  27. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  28. 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
  29. 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  30. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  31. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
    波新書
  32. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  33. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  34. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  35. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  36. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  37. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
  38. 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31 
  39. 彦根市立図書館|簡易検索
  40. 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
  41. 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
    展望 2014.11.26
  42. アウガ Wikipedia
  43. 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
  44. 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
  45. コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
    青森から見る居住の自由 2016.11.08, Yahoo!ニュー

  46. <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河
    北新聞 2016.01.28
     
       

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