1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
3.日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
-理想都市像の変遷-
6.世界遺産登録に向けた取り組み
7.街道と湖上交通と都市形成
6-1 世界遺産登録制度
6-2 世界遺産登録と国内事例
6-3 「白川郷」の場合
6-3-2 「白川郷」における景観保全の現場
6-3-3 世界遺産登録の影響―
規制強化の考察を中心に
世界遺産登録の影響としては、やはり真っ先に観光客の急
増とそれに付随する変化をあげるべきかもしれない。しか
し、本節では,そうした変化ではなく、登録にともなって
行われた規制強化について見ていく。なぜなら、この規制強
化もまた世界遺産登録後の荻町地区の人々の生活に大ぎな
影響を与えているものの一つであるにもかかわらず、〈景
観の「改善」〉という名目で行われているためか、これま
でほとんど問われてこなかったからである。
① 明文化された規制内容の変化
「伝建地区」選定後に荻町地区に課せられた規制について
は先述した(表1)が、ここでは、それが世界遺産登録に
ともなってどのように変化したのかを見ていきたい。
表1(前回に掲載) にあるように、「白川郷」が世界遺産
の暫定リストに載った(1992年) 後の1994 年には、世界
遺産登録を見越して、「白川村荻町伝統的建造物群保存地
区保存計画」が改訂された。この改訂の最も注目すべき点
は、「3.保存地区内における建造物及びその他の物件の
保存整備計画」の「(4 )建造物の移転,除却,新築,増
築,改築」の項の最後に、「ただし、かってあった家屋を
科学的根拠に基づいて復原するもの以外は、合掌造り家屋
に似せたものを造ることはできない」という文章が加筆さ
れたことである。
このような「伝統的様式を用いての修景の禁止」は、「日
本の伝統的建造物群保存地区の修景基準としては初めての
規定で、他に例がないもの」(斎藤,2001: 92)だという。
このことは今後重要な意味を持ってくると思われる(その
理由については後術言及)。
そして,世界遺産登録後の1999年には「自川村荻町伝統的
建造物群保存地区景観保存基準」が改正され、 同時に「景
観保存基準におけるガイドライン」がつくられた。「白川
村荻町伝統的建造物群保存地区景観保存基準」の改正では,
伝統的建造物の保存・修理に関する基準や伝統的建造物以
外の建築物外観修景の基準が一層厳密になった。
また、「景観保存基準におけるガイドライン」では、住宅
等の新築・増築・改築の際の建築面積や,土地の形質の変
更および駐車場の造成に関するガイドラインが定められた。
特に,右料駐車場の造成を食いIEめるのが,「景観保存基
準におけるガイドライン」作成の目的だったという。本稿
では個々の条文を詳述することはできないが,これらの規
制が今までのもの以上に細部まで具体的に規制する内容で
あることは確かである。
以下、明文化された規制内容の変化を見てぎたが、規制強
化はこれらだけに止まらない。以下の項では、まず、景観
保全の促進とともに規制強化にも繋がっている財団法人世
界遺産白川郷合掌造り保存財団(以下「財団」)の創設と
事業内容について概観する。次に、白川村教育委員会予算
(1998年度)および「財団」の1999年度の調査・普及事業
によって行われた調査で、その結果が直接荻町地区の人々
に報告され、反響が大きかった$例を紹介したい。
②「財団」の創設と規制強化
「則団」は、「白川村荻町伝統的建造物群保存地区保存条
例(昭和51年自川村条例第15号)に基づき、世界遺産に登
録された自川村荻町伝統的建造物群保存地区(以ド「世界
遺産集落」という)とそれらをとりまく地域の環境を保全
するとともに,住民の生活環境を向トさせることにより、
匿界遺産集落の価値を永く後世に継承し、もってわが国の
文化の向上と自川村の振興発展に寄ケすること」(財団法
人世界遺産白川郷合掌造り保存財団 online : gaiyou .html)
を目的に1997年に設立された。職員は現在4人で、他に白
川村役場職員が兼任している事務局長がいる。また、職員
の1人は文化財技師である。
「財団」の主なな事業としては、世界遺産集落の保存のた
めの修理事業、修景事業、地域活性化事業、調査・普及事
業、受託事業、文化財建造物修理設計監理受託事業(伝統
的建造物修理事業設計監理受託、現状変更申請書のチェッ
ク及び遺産地区内修景指導受託) などがあげられている
(財団法人匹界遺産白川郷合掌造り保存財団 online : jigyo.
hutml )。これによって、文化財保護法に基づいた「伝建
地区」への補助制度では対象とならなかった修理や修景に
対しても助成金が出るようになり、荻町地区の人々に、規
制に則した形での修理・修景を行ってもらいやすくなった
(規制に則した形でしか助成金を出さないため)。
また、特筆すべきなのは,文化財建造物修理設計監理受託
事業として、文化財技師が中心となって、「守る会」委員
会にかけられる「現状変更行為許可申請書」を「白川村荻
町伝統的建造物群保存地区景観保存基準」に照らし合わせ
てチェックし、チェック表を申請書に添付して「守る会」
委員会に提出している上に,文化財技師と他の職員の2 名
が「守る会」委員会での審議の場にも参加していることで
ある。さらに、地域活性化事業として、「守る会」の活動
費も助成している。
なぜこうした「財団」の事業が重要かというと、これらに
よって、「守る会」という荻町地区の住民組織によって行
われてぎた。いわば住民の住民による住民のための審議に
外部の視角一しかも文化財の専門家という視角一が持ち込
まれることになったからである。このことが「白川村荻町
伝統的建造物群保存地区景保存基準」をはじめとした規制
の遵守に発揮する効果はかなり大ぎいものと思われる。
③ 「白川村荻町伝統的建造物群保存地区の景観
評価に関する調査・研究」報告会
白川村と「財団」に依頼された前東京芸大教授〔現筑波大
学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻・教授)の斎藤
英俊と修十課程の学生だった松井乃生(現黒田乃生,筑波
大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻・助教授)ら
が行った「白川村荻町伝統的建造物群保存地区の景観評価
に関する調査・研究」の報告会は,2000年7 月14日に荻町
多目的集会施設で行われた。彼らの報告の内容は,以下の
ようなものだった。
まず、報告会の前半では、松井が、荻町地区の「景観」を
構成する要素を特定し、それらが「価値となる景観要素」
と「価値を阻害する景観要素」の二つに分類できることを
示した(表2)。そして,荻町地区内で撮影したそれぞれ
の要素に該当するものの写真をスライドで見せながら、荻
町地区の人々に「価値となる景観要素」を守り、「価値を
阻害する景観要素」を取り除くよう助言したのである。た
とえば、「価値となる景観要素」としては, 写真1 のよ
うなものが紹介された。
これには表2でいう「建造物」欄の「明快で多様な妻面」・
「大きな規模」・「急勾配の切妻造り」・「茅葺き屋根の質感」,
「植栽」欄の「独立樹・家屋に添うように」・「イチイの
低い生垣」などの要素が含まれていると考えられる。また,
「価値を阻害する景観要素」としては、写真2、3のよう
なものが示された。写真2は、表2 「その他」の欄の「
合掌を真似たデザイン」に該当し、写真3は、「水路」の
欄の「違和感のある素材」に該当する。写真3の「違和感」
は、一見わかりにくいと思われる。コンクリートと形のそろっ
た玉石という水路の素材が,「伝統的な」空石積みのもの一不
揃いの石のみで積まれたもの一と比べて,違和感があるという
指摘なのである。
【脚注及びリンク】
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運輸政策研究所 第35回 研究報告会 小室充弘
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- 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市 橋梁長寿
命化修繕計画による対策橋梁について
滋賀県 - 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
- 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
のまち創る-近世城下町彦根市本町地区の2例の
場合-(これからの都市づくりと都市計画制度全
国市長会) 中島一 2005.05.09 - 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
- 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
- ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
- 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
- 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
- 「道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
波新書 - 日本の道路史 武部健一 中公新書
- 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
- 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
- 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
- 彦根市都市計画道路網見直し指針
- 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
- 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31
- 彦根市立図書館|簡易検索
- 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
- 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と展望
2014.11.26 - アウガ Wikipedia
- 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
- 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
- コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
青森から見る居住の自由 2016.11.08, Yahoo!ニュース - <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北
新聞 2016.01.28
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