水銀の生物への蓄積
☑ 北極圏のいくつかの海洋哺乳類種において、水銀
含有量が産業革命以前の平均12倍にまで上昇し
ている。
☑ この上昇は、これら海洋生物に今日蓄積されてい
る水銀の平均90%以上が、人為的発生源による
ことを意味している。
【びわ湖と水銀】
● 水銀による新環境汚染防止制度が始動
2013年10月、熊本市・水俣市で開催された外交会議で採
択された「水銀に関する水俣条約(Minamata Convention
on Mercury)」.水銀のライフサイクルにわたる適正な管
理と排出の削減を定めるている。日本政府は必要な法
令整備を進め2016年02月02日に条約を締結。
ところで、水俣条約とは、水銀及び水銀化合物の人為
的排出から人の健康・環境を保護することを目的に採
掘から流通、使用、廃棄にいたる、水銀のライフサイ
クルにわたる適正な管理と排出の削減を定める条約。
水銀に関する国際的な取り組みは、2001年、国連環境
計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染に関わる調査活動を
開始したことに始まり、調査の結果として2002年にU
NEPが公表した報告書「世界水銀アセスメン」は、グ
ローバルな水銀汚染の状況に警鐘を鳴らす。
報告書では、➀水銀は様々な排出源から様々な形態で
環境に排出され、分解されず、全世界を循環する、➁
人への毒性が強く、特に発達途上の神経系に有害、➂
先進国では使用量が減っているが、途上国では依然利
用されリスクが高、➃人為的排出が大気中の水銀濃度
や堆積速度を高めているといったことを示し、世界的
な取り組みによる、人為的な排出の削減・根絶が必要
であると指摘。この報告を受け、国際社会において、
水銀によるリスク削減の必要性について認識が高まり、
国際的な水銀の管理に開する法的拘束力のある文書(
条約)の制定に向けた交渉が開始。2013年、熊本市・
水俣市で開催された外交会議でT水銀に関する水俣条約
。が採択される。
地球規模の水銀循環
☑ 環境中に排出される水銀(年間5,500~8,000トン)
のうち人為的排出は約30%、自然的発生は約10
%、再排出/再移動は約60%
☑ 水銀の人為的排出の削減は、将来的に環境中を循環
する水銀量を削減するために極めて重要
● 条約の発効日
水俣条約の発効は、50か国が締結してから90日後
となる。2016年02月03日時点の締結国は38か国。残
り12か国の締結が必要ですが、2017年9月には第1
回締約国会合が予定されており、それまでには発効す
るものと予想されている。水俣条約を踏まえ、2015年
6月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(
水銀汚染防止法)」が成立。この法律は、水銀に関す
る水俣条約の的確かつ円滑な実施を確保し、水銀によ
る環境の汚染を防止するため水銀の掘採、特定の水銀
使用製品の製造、特定の製造工程における水銀等の使
用及び水銀等を使用する方法による金の採取を禁止す
るとともに水銀等の貯蔵及び水銀を含有する再生資源
の管理等について定めた法律。この法律は、我が国に
ついて水俣条約が効力を生ずる日に施行される。
● 水俣条約発効後の展開
水俣条約では、電池、スイッチ・リレー、一定含有量
以上の一般照明用蛍光ランフ、石鹸、化粧品、殺虫剤、
血圧計、体温計などの水銀添加製品(一部例外あり)
について、2020年までに製造等を原則禁止する。
一方、水銀汚染防止法においては、水銀等(水銀及び
その化合物)が使用されている製品のうち、その製造
に係る規制を行うことが特に必要なものを、「特定水
銀使用製品」として条約の規制に準拠して定めており、
製造の禁止等を措置している。
特定水銀使用製品は、製品ごとに水銀含有量の基準値
と廃止期限を定めており、一部の製品については、条
約における廃止期限より早い時期の廃止 (前例いや条
約で求められる水銀含有量基準よりさらに低い含有量
基準 (深掘り) を設定。
例えば、アルカリボタン電池については、水銀を使用
する製品の製造は、2020年末までに廃止することとし
ている(条約の規制どおり)。また、酸化銀ボタン電
池、空気亜鉛ボタン電池、一般照明用蛍光ランプにつ
いては、一定の水銀含有量の基準値を満たさないもの
の製造は2017年末までに廃止する(条約の規制の前倒
し)が、基準値を満たすものの製造は2017年以降も禁
止されない。これらの水銀含有量基準や廃止期限は、
国内製造・市場流通の実態等を踏まえて設定している。
● 水銀を使用製品対象
水銀汚染防止法において規制されるものは、特定水銀
使用製品「製造」。消費者が現在使用している製品を
継続して使用することや、店頭で売られているものを
購入することは禁止されていない。また、酸化銀ボタ
ン電池、空気亜鉛ボタン電池、一般照明用蛍光ランプで
あっても、水銀含有量の基準値を満たすものの製造は
2017年以降も禁止されないで、引き続きそれらの製品
を購入/使用は可能。
水銀汚染防止法に基づく「水銀等の貯蔵に関する報告」
と「水銀含有再生資源の管理に関する報告」は、水銀
等を貯蔵事業者は、国が定める指針に沿った貯蔵を行
うとともに、一定量以上の水銀等の貯蔵者は、年度ご
とに主務大臣に貯蔵の状況を報告義務が定められてい
る。
ここで、水銀等の貯蔵とは、水銀等を現に所持し、販
売や製品の製造、試験研究等のためにとっておくこと、
またはためておくことを言います。なお、水銀等が封
入された製品(水銀血圧計等)を所持していることは、「
水銀等の貯蔵」に該当しないなど定められている。
● 水銀を使用した製品の廃棄
2017年10月より「水銀使用製品産業廃棄物」については
処理基準が追加されることとなっているので、新たな
処理基準に基づいた処理を行うことになる。なお、水
銀を使用した製品を捨てられなくならないが、処理費
用は水俣条例発効後は高くなると考えられている。
● 報告書「世界水銀アセスメン」
【脚注及びリンク】
----------------------------------------------
- 2013年09月19日:水銀に関する水俣条約の概要
環境省 - 2016年10月31日:最近の水環境行政の動向につ
いて 水銀大気排出規制の実施に向けて 環境省 - 2017年03月14日:水銀による環境の汚染の防止
に関する法律概要等 環境省
-------------------------;--------------------