びわ湖と水銀

2017年04月03日 | 防災と琵琶湖

  

水銀の生物への蓄積

☑ 北極圏のいくつかの海洋哺乳類種において、水銀
  含有量が産業革命以前の平均12倍にまで上昇し
  ている。
☑ この上昇は、これら海洋生物に今日蓄積されてい
  る水銀の平均90%以
上が、人為的発生源による
  ことを意味している。

【びわ湖と水銀】

● 水銀による新環境汚染防止制度が始動

2013年10月、熊本市・水俣市で開催された外交会議で採
択された「水銀に関する水俣条約(Minamata
Convention
on Mercury
)」.水銀のライフサイクルにわたる適正な管
理と排出の削減を定めるている。日本政府は必要
な法
令整備を進め2016年02月02日に条約を締結。

ところで、水俣条約とは、水銀及び水銀化合物の人為

的排出から人の健康・環境を保護することを目的に採
掘から流通、使用、廃棄にいたる、水銀のライフサイ
クルにわたる適正な管理と排出の削減を定める条約。
水銀に関する国際的な取り組みは、2001年、国連環境
計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染に関わる調査活動を
開始したことに始まり、
調査の結果として2002年にU
NEP
が公
表した報告書「世界水銀アセスメン」は、グ
ローバルな水銀汚染の状況に警鐘を鳴らす。

報告書では、➀水銀は様々な排出源から様々な形態で
環境に排出され、分解
されず、全世界を循環する、➁
人への毒
性が強く、特に発達途上の神経系に有害、➂
先進国では使用量が減っている
が、途上国では依然利
用されリスクが高、➃
人為的排出が大気中の水銀濃度
や堆積速度を高めているといったことを示し、世界的
な取り組みによる、人為
的な排出の削減・根絶が必要
であると
指摘。この報告を受け、国際社会において、
水銀によるリスク削減の必要性について認識が高まり、
国際的な水銀の管理
に開する法的拘束力のある文書(
条約)
の制定に向けた交渉が開始。2013年、熊本市・
水俣市で開催された外交会議で
T水銀に関する水俣条約
。が採択される。
 



地球規模の水銀循環

☑ 環境中に排出される水銀(年間5,500~8,000トン)
  のうち人為的排出
は約30%、自然的発生は約10
  %、再排出/再移動は約60%

☑ 水銀の人為的排出の削減は、将来的に環境中を循環
  する水銀量を削減
するために極めて重要

● 条約の発効日

水俣条約の発効は、50か国が締結してから90日後
となる。2016年02月03日時点の締結国は38か国。残
り12か国の締結が必要ですが、2017年9
月には第1
回締約国会合が予定されており、それまでには発効す
るものと予想されている。水俣条約を踏まえ、2015年
6月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(
水銀汚染防止法)」が成立。この法律は、水銀に関す
る水俣条約の的確かつ円滑な実施を確保し、
水銀によ
る環境の汚染を防止するため水銀の掘採、特定の水銀
使用製品の製造、
特定の製造工程における水銀等の使
及び水銀等を使用する方法による金の採取を禁止す
るとともに水銀等の貯
蔵及び水銀を含有する再生資源
の管理
等について定めた法律。この法律は、我が国に
ついて水俣条
約が効力を生ずる日に施行される。 

● 水俣条約発効後の展開

水俣条約では、電池、スイッチ・リレー、一定含有量
以上の一般照明用蛍
光ランフ、石鹸、化粧品、殺虫剤、
圧計、体温計などの水銀添加製品(一部例外あり)
について、2020年までに製
造等を原則禁止する

一方、水銀汚染防止法においては、水銀等(水銀及び
その化合物)が使用され
ている製品のうち、その製造
に係る規
制を行うことが特に必要なものを、「特定水
銀使用製品」として条約の規制に
準拠して定めており、
製造の禁止等を措
置している。

特定水銀使用製品は、製品ごとに水銀含有量の基準値
と廃止期限を定めて
おり、一部の製品については、条
約における廃止期限より早い時期の廃止 (前例
いや
で求められる水銀含有量基準よりさらに低い含有量
基準 (深掘り)
を設定。

例えば、アルカリボタン電池については、水銀を使用
する製品の製造は、
2020年末までに廃止することとし
ている(
条約の規制どおり)。また、酸化銀ボタン電
池、空気亜鉛ボタン電池、一
般照明用蛍光ランプにつ
いては、一定の
水銀含有量の基準値を満たさないもの
の製造は2017年末までに廃止する(条約の規制の前倒
し)が、基準値を満たすものの製造は2017年以降も禁
止されない。これらの水銀含有量基準や廃止期限は、
国内製造・市場流通の実態等を踏まえて設定している。

● 水銀を使用製品対象

水銀汚染防止法において規制されるものは、特定水銀
使用製品「製造」
。消費者が現在使用している製品
継続して使用することや、店頭で売られているものを
購入することは禁止されていない。また、酸化銀ボタ
ン電池、空気亜鉛ボタン電池、一般照明用蛍光ランプで
あっても、水銀含有量の基準値を満たすものの製造は
2017年以降も禁止されないで、引き続きそれらの製品
を購入/使用は可能。

水銀汚染防止法に基づく「水銀等の貯蔵に関する報告」
と「水銀含有再生資源の管理に関する報告」は、
水銀
等を貯蔵事業者は、国が定める指針に沿った貯蔵を行
うとともに、一定量以上の水銀等の貯蔵者は、年度ご
とに主務大臣に貯蔵の状況を報告義務が定められてい
る。

ここで、水銀等の貯蔵とは、水銀等を現に所持し、販
売や製品の製造、試験研究等のためにとっておくこと、
またはためておくことを言います。なお、水銀等が封
入された製品(水銀血圧計等)を所持していることは、「
水銀等の貯蔵」に該当しないなど定められている。

● 水銀を使用した製品の廃棄

2017年10月より「水銀使用製品産業廃棄物」については
処理基準が追加されることとなっているので、新たな
処理基準に基づいた処理を行うことになる。なお、水
銀を使用した製品を捨てられなくならないが、処理費
用は水俣条例発効後は高くなると考えられている。

 

 【エピソード】

 ● 報告書「世界水銀アセスメン」

 

【脚注及びリンク】
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  1. 2013年09月19日:水銀に関する水俣条約の概要
    環境省
  2. 2016年10月31日:最近の水環境行政の動向につ
    いて 水銀大気排出規制の実施に向けて 環境省
  3. 2017年03月14日:水銀による環境の汚染の防止
    に関する法律概要等 環境省

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