昨年12月におこなわれた草加市議会12月定例会で、包括管理について質問しました。
草加市役所は現在、公共施設の「包括管理業務」導入について検討を進めています。目的は、公共施設の管理業務の効率化と品質の向上を図ることしています。しかしながら、そこから見えてくる未来は真逆のものです。
■包括管理の対象
現状想定されている包括管理は、市役所庁舎や市営住宅、保育園、公民館など87施設が対象になります。これら施設の保守点検や清掃、130万円未満の修繕などを民間企業に一括管理してもらう仕組みです。
期間は2025年度から5年間で総事業費15億円を想定。包括管理を受けた会社に毎年5千万円近いマネジメント費用を払い、各施設の修繕をおこなう順番を決めてもらったり、定期点検などをおこなってもらいます。
■マネジメント料5千万円の経常経費化
今回の包括管理のポイントとして、予算削減が主眼ではなく、実質、予算を使う優先順位を決めることに狙いがあります。そのため、修繕も何もしなくても包括管理会社に毎年5千万円ものマネジメント費用を支払い続けることになります。マネジメント費用は経常経費化され、今後、対象施設や業務内容が広がれば増額していきます。
現状は各施設がそれぞれ修繕などを行っています。施設によって維持・修繕の対応に差が生じたり、費用面での適正化や効率化といった面にも課題が生じています。これを一括管理することで予算の効率化につながるとしています。確かにそのメリットはあります。
しかし、いくら優先順位をつけても、そもそもの修繕予算を増やさない限り、予定通りの修繕はできず課題の本質は何も変わりません。
また、施設維持にかかわる業務が職員の手から離れて、はたして包括管理業務の監視や適正な予算積算をどこまで担保できるのか懸念されます。冗談抜きに、民間委託した包括管理を管理・監視するための民間委託がおこなわれる時代が訪れるかもしれません。
■市外の大手企業に巨大な権益を与える
草加市によると、包括管理は市内企業で受けられない規模であることから、市外の大手企業が引き受ける想定です。
これまで各施設が地域の電気屋さんなどにお願いしていた修繕などの仕事を、これからは大手企業が一括で管理します。もちろん原資は税金です。大きな権益を民間大手に与えることになります。この点について市に質問しましたが、対応策は「透明性を確保します」との回答のみで具体策ゼロです。
さらに、包括管理会社がグループ企業内で仕事を回したり、業務を特定の事業者に偏らせたりすることが懸念されます。この点も禁止できるのか市に質問しました。市は「禁止できない」と述べました。
地域に根差した公共施設の維持管理は、地元企業の育成や地域振興といった側面もあります。しかし、包括管理ではその保障がゼロです。ここも、包括管理会社に草加市からお願いするしかないことが質問で明らかとなりました。
すべて性善説に基づく制度設計で、お願いベースでしか何もできないのです。
■結局、何が変わるのか…
結局、市民の多額の血税を毎年払って何が変わるのでしょうか?
公共施設の維持や運営という重要な業務まで民間任せで、はたして公務員の質は向上していくでしょうか?
施策や計画策定も民間依存、重要な公共施設の業務も民間丸投げで、自治体職員の本来業務とはいったい何でしょうか?
厳しい言い方になりますが…今回の制度設計から見える未来は、市役所職員が施設の維持管理業務から解放され、単純に楽するだけです。
■未来の草加市役所をどう描くか
効率的な維持管理を目指して、公共施設の維持管理の司令塔をつくることは私も賛成です。今、草加市が行おうとしている目的は大切です。
しかし、それは職員自身が責任をもって担うべきです。
現状に問題意識をもって何とか変えようとしている担当課職員の想いは非常に意義のあることです。そうした意識を持たれた職員がいることは、草加市にとっての貴重な財産です。将来の市役所をどう描くのか。市民のための市役所とは。原点に立ち返った再検討を期待します。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます