八潮市の障がい児通所支援事業所が給付費1億1千万円を自治体に不正請求していた問題について、草加市の損害額1366万円の回収が困難となっています。さらに、草加市の損害額のうち国・県からの負担分は、全額を草加市の財政で返還しなければならない事態が生じています。
報道によると、株式会社MISが運営する児童発達支援や放課後等デイサービスなどを手掛ける3施設(八潮市内)が、利用者の利用日数を水増しして自治体に不正請求をおこなったとのことです。被害を受けた自治体は、八潮市、草加市、三郷市の3市で、総額1億1千万円にのぼります。
◎自治体ごとの不正請求額(被害額)と実人数
- 八潮市:9661万1783円(64人)
- 草加市:1366万2458円(12人)
- 三郷市:48万469円(1人)
現在開かれている草加市議会2月定例会で、草加市が国・県から受け取った障がい児入所給付費等負担金のうち、不正請求に伴う負担金分(約1千万円)を国・県に返還する補正予算が計上されました。その内容について福祉子ども委員会で質疑しました。以下、概要です。
■権限や責任の所在
障がい児通所支援事業の不正受給にかかわる権限や責任は、県にあるのか?市にあるのか?を委員会で質疑しました。
- 草加市によると、障がい児通所支援をおこなう事業所は、児童福祉法により埼玉県(都道府県)が指定するルール。
- 指導権限は、児童福祉法により都道府県知事または市町村長が必要があると認めるときは、事業者への質問や立ち入り、帳簿書類等を検査することができるルール。
- 現状は、埼玉県が3年に1回程度の実地指導をおこない、事業所の訪問や給付費請求、管理運営、利用者支援への支援などを指導している。
そのため、「県と市ともに同事業の支給にかかわる権限・責任があると考えている」との認識を示しました。
■国と県の被害額は草加市が全額負担…なぜ?
障がい児通所支援事業は、草加市から事業者へ給付金が支払われますが、その100%を草加市が負担している訳ではありません。草加市は、給付金額のうち50%を国から、25%を県から負担金として受け取るため、草加市の実質負担は25%分です。
今回の不正請求も、草加市から事業者へ支払われた支給金1366万円のうち、75%(約1千万円)が国と県からの負担金でまかなわれています。その75%分を、草加市が国と県に全額返還する補正予算が今議会で計上されました。この補正予算で、国と県は被害額が0円になります。つまり、草加市が被害の全額を引き受けるのです…
- なぜ、埼玉県が認可した施設でおきた損害を、草加市だけが引き受けなければならないのでしょうか?
- なぜ、国や県の損害額まで、草加市の財源(市民の税金)で全額返還しないといけないのでしょうか?
この点、質疑しました。
草加市によると、「市が超過交付を受けた国庫負担金は、超過分を国に返還することが交付要綱で定められている」「埼玉県もこれに準ずると県に確認した」ことから、国・県に対して全額返還しないといけないとのことです。また、事業所の指定は県ですが、障がい児通所支援事業は市が実施主体となっているから、国・県への負担金(損害)の返還は草加市がおこなうとのことです。
たしかに要綱でそう規定されていますが、埼玉県が認めた事業所で、しかも、八潮市にある施設で起きた不正ですよ…
■差し押さえで回収できた額は13万円のみ
今回の問題を受けて草加市は、事業所の財産調査をおこない約13万円を差し押さえたとのことです…桁が2つ足りません。
引き続き、草加市が督促を行っていくとしていますが、全額回収することは非常に困難な状況です。
■不正防止の対応と限界
今回の問題を踏まえて草加市はどのような対応や対策を図ったのかも質疑しました。
質疑に対して草加市は、障がい児通所支援事業所連絡会で不正受給にかんする注意喚起をおこない、不正防止対策の研修をおこなったと答弁。また、全体への周知とともに「子育て支援課による事業所訪問を開始し、利用者への支援について確認をおこなうとともに、不正受給の防止になるよう努めています」と説明しました。
再発防止に向けて草加市がアクションを起こしたことは良いのですが、残念ながら今回のように市外事業所の不正まで防止する取り組みは、市町村レベルでは限界があることも浮き彫りとなりました。
最後に、草加市子ども未来部長に対して、埼玉県も責任を果たすよう再調整・協議することを求めました。
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