殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

女帝

2009年05月23日 13時19分45秒 | みりこんぐらし
昨日、義母が退院した。

おまえんとこのバアさんの話なんかどうでもええわい…

と言われそうだが、まあ、まあ…。


癌と言われていたのに、手術に臨んだら違っていた。

軽い手術ですみ、図らずも早期の退院となった。


「早く帰れてよかった」

と言いながら、義母はなんとなく残念そう。

病状の軽重は、そのまま彼女の地位に直結するからだ。


そんなはずはない…病気とはどんなものでもつらいはずだ…

と普通は思うだろうが、義母に限っては違う。

昭和初期には珍しかったであろう一人っ子の義母は

みんなが心配して優しくしてくれる病気が大好き

病気が友達なのだ。


「体が弱くて…」と言いながら

数年ぶりの“友達”の訪れに顔は輝き

病気なんだから優しくしろオーラを体中から発する。

いつもの娘の侍女役から、つかの間のナンバーワンに返り咲く

この瞬間が大好きなのだ。


「誰にもナイショで入院するから、みんなもそのつもりでね…」

と言いながら、入院直前まで電話にかじりついて

知り合いという知り合いにふれ回る行事もいつもどおり。


入院前、遠方から見舞ってくれた親戚に

「私の形見…」と称して、涙ながらに渡した自作の押し花の額は

次回作を贈呈することになるだろう。


入院中は例のごとく、いつも周囲を笑わせて

同室の患者からも、医師からも看護師からも人気者だったと強調。

自分だけ「特別に」主治医の人数が多かった…

自分だけ「特別に」回診の回数が多かった…

これも恒例。


退院のその足で義父と寿司屋へ行き

病院食には出てこなかった菓子パンや惣菜を

しこたま買って帰宅するのも恒例。

食事療法をする気などさらさら無い。

健康になったらただのヒト…それでは都合が悪いらしい。


術後の痛みが消えぬ間に、すませておきたい心残りはただひとつ。

うちの長男との和解だ。

昨日も涙ぐんで色々言っていた。

「私もムシャクシャして、つい当たってしまって…」

そこまではしおらしいのだが、以後いきなり逆上する。


「だって、しょうがないでしょ?!」

しょうがなくない…。

一応長男に伝えると

「はっはっは。死んだと思ってもらおうか」


まさか

「あんたの変な娘が無茶するから、とりあえず絶縁ということにしている」

なんて真実を言えようはずもない。


娘のこととなったら異様に興奮するので

とどめをさす結果となる恐れ濃厚。

つつくのはおもしろそうだが、人殺しにはなりたくない。


しかもこの人、妙に刺激すると、昔から私の実家に文句言うのだ。

もちろん、尾ひれどころか胴体まで付け替える。

「いいっ?実家に電話するわよっ!」

と、一応良心的に予告する。

その表情や態度を眺めるのは、かなり消耗する。


すでに実家で過ごした年月より

嫁いでからのほうが圧倒的に長い。

製造元としても

いつまでもアフターサービスを続けるわけにはいかないのだが

万年少女の義母には理解できないようだ。

そこがまた、かわらしい部分でもある。


食欲旺盛、明日から娘とどこへ買物に行こうかと

楽しみにしている義母。

元気に帰って来たのはうれしい。

めでたしめでたし。

このぶんだと、あと20年はカタい。

おそらく私のほうが先に死ぬと思われる。
コメント (14)
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