🐸4月に入ると、旭川も水はぬるみ、カエルが冬眠から目覚める時季になります。気の早いカエルは、まだ氷の融け切っていない池の水から顔を出し、鳴きはじめます。水田に水が入る5月半ばになると、カエルの大合唱が聞こえることでしょう。この時季になると、カエルのことを素材にし、その生きざまをうたった詩人・草野心平氏のことを思い出します。
草野心平氏のカエルの詩は、どこかで目にしたり聴いたことがあるかと思います。まず、小学校の教科書に載っている「春のうた」です。
春のうた
ほっ うれしいな。
みずは つるつる。
かぜは そよそよ。
ケルルン クック。
ああいいにおいだ。
ケルルン クック。
ほっ いぬのふぐりがさいている。
ほっ おおきなくもがうごいてくる。
クックック ケルルン クック。
ケルルン クック。
真っ暗なアナグラから目ざめ、地上に這い出し久しぶりにみる周りの風景に感動している様子を表しています。その喜び、感動を擬人語‣擬態語でうたったものです。特に、カエルの鳴き声がいろいろな言い方で使い分けされています。
え ぼ
いよう ぼくだよ
出てきたよ
えぼがえるだよ ぼくだよ
びっくりしなくてもいいよ
光がこんなに流れたり崩れたりするのは
ぼくがぐるぐる見まはしてゐるせゐではないだろ
やりきれんな まつ青だな
匂ひがキンキンするな ホッ
雲だな びつくりしなくつてもいいよ
ぐらぐらしなくつてもいいよ
ぼくだよ いつものえぼだよ
不特定多数の誰かに話しかけるように書かれています。特に、「光がこんなに流れたり崩れたりするのは」とか、「匂ひがキンキンするなホッ」などはすばらしい表現だと思います。今日は、えぼの1年間の夢いっぱいの再スタート日です。いい出会いがたくさんあり、子孫をいっぱい残せる1年でありますようにーと願います。
人間より先に地球に生まれ、人間どころじゃない、他の動物よりはるかにバカで、しかもじっと生きていて、今でも砂漠の中に生き続けている現実。この現実さが僕にとって非常に大きく、それこそ人間自体が生命の歌を歌うよりも、もっと生命的でものすごく生命として写ってくるわけです。普通の動物は利口だから生き延びれるわけだが、バカであるだけにそのカエルの生命力に興味があるーと。
これは、どんな過酷な自然環境でも”種=命”をつないできたカエルの生命力に感動して、これまで120点余りの詩を書いている草野氏の言葉です。彼の詩の多くは、そんなカエルたちが愛おしく、その生命力のスゴさを表現したものです。また、カエルをよく観察し、創意工夫を凝らしてうたっているなあ、と彼の詩を読むたびいつも感心します。