第3章「空腹力を高めれば、これだけの病気は遠ざかる!」の「❸空腹力で認知症のリスクを減らす」を要約します。
① 認知症の大きな原因となる生活習慣病
近年、認知症の患者数は増加の一途をだどっており、2025年には800万人前後=高齢者の5人に1人にまで達する可能性があるとの推計がでている。現在、認知症に対する決定的な予防方法や治療方法はまだ見つかっていないが、「できるだけ人と交流し、社会とのつながりをもつ」「生きがいや達成感が感じられるようなことをし、心と脳を働かせる」といったことに加え、「生活習慣病を予防する」ことが、非常に大切だとされている。高血圧症や糖尿病、脂質異常症、脳卒中、肥満といった生活習慣病と、認知症との関連は、過去の多くの研究から、食生活の改善や適度の運動が認知症の予防につながるとかんがえらえている。
② 認知症がアルツハイマー型認知症にかかるリスクをを2倍高める
アルツハイマー型認知症~「アミロイドβ」や「タウ」というタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が減少して、記憶を司る「海馬」を中心に脳が委縮するもの(認知症患者の6~7割)。
原因は不明だが、かってアメリカで行われた研究では、高血圧症や糖尿病など、生活習慣病に関わる因子とアルツハイマー型認知症との関連性が明らかにされている。また、動物実験により、「内臓脂肪から分泌される悪玉ホルモンが、アミロイドβを脳に蓄積される」という結果が出たケースもある。一方、九州大学の研究では、内臓脂肪の増加や2型糖尿病に伴う高インシュリン血症状態がアミロイドβの分解を阻害すること、タウの変質促進に関わっていること、糖尿病患者がアルツハイマー型認知症を発症するリスクが、血糖値が正常な人より2.1倍も高いことが明らかになっている。
脳血管型認知症~脳梗塞や脳出血などが原因で、脳の一部が壊死して機能が低下するもの(認知症患者の約2割)。梗塞が脳のあちこちに起こった時や、完全に血管が詰まっていなくても脳の動脈硬化が強く血流が極端に悪くなった時に、発症しやすいと考えられている。
③ 認知症の予防効果も期待できる空腹の力
以上のように、認知症と生活習慣病には密接な関わりがある。さらに、活性酸素が脳の海馬を傷つけ、神経細胞に障害を与えることもわかっている。「空腹を作る」食事法には、生活習慣病の予防効果があり、また、活性酸素を発生させる古いミトコンドリアを除去する効果がある。
なお、東京医科歯科大学の研究結果(2015年)では、アルツハイマー型認知症を発症している場合、オートファジーが脳内のアミロイドβを増やし、症状を悪化させる可能性が示唆されている。本食事法は、あくまでも予防のためのもので、認知症の疑いのある人、既に発症している人は、医師の指示に従うこと。