IT企業・琉球インタラクティブ(宜野湾市)の木谷寿男さん(43)が開発したスイーツが人気を広げている。木谷さんは「沖縄の素材を生かしてスイーツを作りたい」と、静岡の信用金庫を退職して2010年に移住した。開発したスイーツ「紅芋とちんすこうのフローズンちいずケーキ」は第8回ニッポン全国おやつランキングでグランプリに輝いた。木谷さんは「ITと農業で、沖縄全体の産業発展に貢献したい」と語り、新たな商品開発にも励む。
「根っからのスイーツ好き」という木谷さんは旅行で訪れた沖縄で、紅芋やマンゴー、シークヮーサーなど「スター性のある農産物」に引かれた。製菓を学んだことはないが、沖縄の農産物を生かしたスイーツ作りの道へ飛び込んだ。
移住後は那覇市内でカフェを開き、商品開発に取り組んだ。そのカフェの常連客が、琉球インタラクティブの臼井隆秀社長だった。店で臼井社長や同社の社員が運営していた県産品販売サイト「沖縄特産品本舗」の商品選びに悩んでいる声が聞こえた。木谷さんはすぐに「うちでこんなもの作ってますよ」と、島とうがらしと酢を使ったオリジナル商品を売り込み、IT企業とスイーツを作る木谷さんの接点が生まれた。
琉球インタラクティブが2013年に宜野湾市宇地泊の「宜野湾ベイサイド情報センター」の指定管理者に決まったことがさらなる転機となった。臼井社長から「センターの1階に市民に愛されるカフェをつくりたい」と提案を受け、木谷さんも「菓子作りをやらせてくれるなら」と即答した。IT企業がスイーツを手掛けることになり、日本一の「ちいずケーキ」を生む原点となった。
木谷さんが開発した「ちいずケーキ」は、紅芋と黒糖、塩ちんすこうなど沖縄を代表する素材にこだわった「進化形スイーツ」だ。紅芋は発色が良く、甘みもある宮古島産の「美(ちゅ)ら恋紅」を選び、黒糖はコクや甘みが合う波照間島産を選んだ。木谷さん自らが島に渡り、食材を吟味した。特に紅芋は病害虫拡大の恐れがあるため県外に持ち出せないが「だからこそ、加工して新たな出口を見いだしたかった」。
ケーキの土台に粟国島の塩ちんすこうを使い、新鮮な食感を演出した。「素材の力が強いから、着色料も香料も使わずに本来の素材だけで勝負できる」と木谷さんは強調する。南国の暑さをイメージしたフローズン(半冷凍)で味わうスタイルも、これまでにありそうでなかった商品だ。
現在は琉球インタラクティブが指定管理するセンターと1階のGwave Cafe(ジーウェーブカフェ)を運営しながら、菓子作りに取り組む。沖縄の農産物を使った次の商品作りも進め、目指すは「ネット企業が手掛けるとびきりおいしいスイーツ」だ。木谷さんは「沖縄をもっと好きになるお土産、県民にも愛されるチーズケーキを作りたい」とさらなる高みを見据える。/(大橋弘基)