琉球語の音声や文字情報をインターネットで公開する「琉球語音声データベース」を拡充する計画が進められている。現在、琉球大学付属図書館ホームページで、首里・那覇、今帰仁、奄美、宮古の言語を公開。2021年度までに、新たに奄美・沖縄各地の7地域の語彙(ごい)と音声データを追加する。関係者は「従来の3~4倍の規模になり、島々の言葉の多様性がより理解できる」と話す。(学芸部・与儀武秀)
データベースは、琉球語の文字データに標準語の意味や音声がリンクされたデジタル辞典。消滅の危機にひんする琉球語の記録・保存、普及・継承を目的に、1998年から作成が始まった。
沖縄言語研究センターなどのグループや言語研究者による調査語彙の蓄積があったことから、首里・那覇、今帰仁、奄美、宮古の4地域でデータベースの運用を開始。現在計約4万5千語を公開する。
名詞や動詞などの品詞や五十音による検索が可能。「正月」と検索すると「ソーグヮチ」(首里・那覇)、「ソーガち」(今帰仁)と結果が出る。
データベース公開後、各地域で方言辞典の編さんが進んだ。辞典が発刊された7地域の語彙、奄美・龍郷、与論、伊是名、伊江島、伊良部、石垣、竹富を順次追加する計画だ。1地域につき1万~1万7000語のデータと音声を順次追加し、2021年度までの完成を目指す。昨年5月に拡充のための文科省科学研究費が採択された。
現在、句語彙入力や、未収の音声データの収録など、作業を進める。完成すれば、従来の各地域の言葉ごとに検索から、複数地域間での横断検索が可能になる。
研究代表を務める琉球大学・国際沖縄研究所の狩俣繁久教授は「データベースを作って約20年。いつどこでも誰でも、再現された音声をネットで繰り返し聞き、勉強することができる利点がある。現在も1日100~200件の利用がある」と説明する。
その一方で、近年のしまくとぅばの継承活動で、主に那覇・首里の言葉の継承普及が強調される傾向を指摘。「各地域ごとにさまざまな言葉がある。データベースが各地域の言葉を記録することで、言葉の多様性を伝えられる。県民が使う言葉の選択の幅を広げることができる」と強調した。
データベースのアドレスは、http://ryukyu-lang.lib.u-ryukyu.ac.jp/