島しょ県沖縄の空の玄関口として年間2138万人が利用する那覇空港。さらなる利用者増加を見込んで進められている第2滑走路の建設工事は2020年3月の供用開始まで残り1年となった。
巨大プロジェクトは投資を呼び込み、さらなる観光客増加が期待される。同時に、航空機の定時運航の実現、オーバーツーリズム対策など課題解決の必要性も指摘される。
沖縄総合事務局によると17年7月の事業再評価で、第2滑走路の事業費は総費用2343億円、対して利用者便益など総便益は9551億円で、純現在価値(NPV)は7209億円、費用便益比(CBR)は4・1と高い値を示している。
工事は好調な県内景気をけん引すると同時に、さらなる波及効果も期待されている。県は滑走路増設による空港基盤の拡充などから、欧米、豪州などの旅行者が沖縄を組み込んだ旅行を楽しみ、国内客も沖縄を経由して海外に飛び立つという周遊型旅行の拠点とする「国際旅客ハブ構想」を進めている。構想により投資を呼び込むなどの効果が期待されているが、既にその一端は見えている。
定期便があり重点市場に位置付けられる台湾、香港など東アジア4地域は沖縄への入域観光客数の大部分を占めるほか、同地域資本のホテルや外食の参入も活発で、滑走路増設でさらなる送客に期待する。戦略開拓市場のマレーシアは定期便はないもののチャーター便が好調。同国拠点のベルジャヤ・コーポレーションが恩納通信所跡地に総開発費440億円のホテル建設を発表しており「これも効果の一つだ」(県関係者)との見方もある。
観光客増加に向けては空港の年間発着回数が鍵を握るが、国の公式見解では滑走路増設で18・5万回、17年実績の1・1倍と限定的だ。ただ政府内では増加に向けた検討が進められており、政府関係者は現時点でも運用の調整で「滑走路処理容量」の13・5万回を3万回も上回っているとして「18・5万回から増やせるのは確実。ニーズも見ながらの調整では」と語る。一方、航空会社幹部からは定時制を確保するために混雑状態の緩和を優先すべきとの声もある。
増加の一途をたどる観光客数はどこまで伸びるか。県は21年度の観光客目標を1200万人に設定。その後の県の目標は未定だが、沖縄観光コンベンションビューローは30年度に1742万人と推計している。県の嘉手苅孝夫文化観光スポーツ部長は実現可能な数字だとの見方を示しながら「ただ増やすだけでなく、オーバーツーリズム対策も必要だ。観光収入の増加など県民の利益もきちんと示さないといけない」と指摘する。滑走路増設が観光の量だけでなく、質の向上にも寄与するかも注視される。