尚家の史料や玉座など400点余りが焼けた首里城の火災で、全体の約3分の2に当たる1075点の収蔵品が無事である可能性が出てきた。この中には県指定有形文化財3点も含まれており、首里城を管理する一般財団法人「沖縄美ら島財団」が確認作業を進める。
財団職員は2日も警察や消防とともに現場に入り、火災や収蔵品の状況を調べた。財団によるとこの日、消防が南殿と寄満(ゆいんち)の収蔵庫を開け、焼損の状況を確認。その後、財団職員も確認したところ、収蔵品が入ったケースは無事だったという。
現場に立ち会った財団幹部は取材に「耐火性がある収蔵庫はかなり頑丈だったということだ」と語った。一方で「一部はぬれている可能性がある」とも説明。ケースを開ける際に破損することがないよう、これらを運び出した上で専門家と一緒に確認することから、財団は「現時点では無事とは言えない」としている。
財団によると、南殿収蔵庫は県指定有形文化財の絵画「白澤之図(はくたくのず)」など454件724点、寄満収蔵庫には県指定有形文化財の工芸品「黒漆菊花鳥虫七宝繋沈金食籠(くろうるしきっかちょうちゅうしっぽうつなぎちんきんじきろう)」や「黒漆牡丹七宝繋沈金食籠(くろうるしぼたんしっぽうつなぎちんきんじきろう)」を含む248件351点が収蔵されている。
復元された三線「盛嶋開鐘」で演奏する人間国宝の照喜名朝一さん=30日、那覇市の県立博物館・美術館(大城直也撮影)
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沖縄県立博物館・美術館はこのほど、琉球王国時代の約160年前に作られた三線の名器「盛嶋開鐘(もりしまけーじょー)」を復元した。当時の音に近づけるために蛇皮の張り方や弦、糸掛けなど細部にこだわり、2017~18年度の2年間をかけて復元。同館で30日、琉球古典音楽の人間国宝・照喜名朝一さんが復元品を演奏して琉球王国時代の音を再現し、音や映像を収録した。
復元品は、当時の三線に合わせて皮の張り具合を今よりも緩めに製作した。現在はナイロンを使う弦に絹を使うなど材料にもこだわり、当時に近づける工夫を凝らした。今の三線に比べ、復元した盛嶋開鐘の音色は低めに響き、余韻がある音が特徴だという。
琉球古典音楽の「渡りぞう」「瀧落とし」「本散山節」を演奏した照喜名さんは「盛嶋開鐘は(琉球の)王様の前で弾いていた三線だ」と緊張した表情。再現した音が後世に残ることには「うれしい。沖縄の音階に合わせた三線を愛好してほしい」と話した。
同館は琉球王国時代の文化財の模造復元品を展示する特別展「手わざ―琉球王国の文化」を来年2月4日から3月15日まで開催し、盛嶋開鐘の復元品や収録した音源も紹介する。
Uta-Nchu (沖縄×歌人)/ 照喜名 朝一