―「昨日の記事(142)」を書き直します。―
(01)
「原文」と「括弧(返り点)」と「訓読(書き下し文)」と「通釈(翻訳)」は、次の通りです。
(原文)
世有伯楽、然後有千里馬。
千里馬常有、而伯楽不常有。
故雖有名馬、祇辱於奴隷人之手、
駢死於槽櫪之間、不以千里称也。
馬之千里者、一食或盡粟一石。
食馬者、不知其能千里而食也。
(括弧)
世有(伯楽)、然後有(千里馬)。
千里馬常有、而伯楽不(常有)。
故雖有(名馬)、祇辱於(奴隷人之手)、
駢-死(於槽櫪之間)、不〔以(千里)称〕也。
馬之千里者、一食或盡(粟一石)。
食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
(訓読)
世に伯楽有りて、然る後に千里の馬有り。
千里馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。
故に名馬有りと雖も、祇だ奴隷人之手於辱かしめられ、
槽櫪之間於駢死し、千里を以て称せられ不るなり。
馬の千里なる者は、一食に或いは粟一石を盡くす。
馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
(通釈)
この世には、伯楽のような馬の鑑定の名人があって、そこではじめて一日に千里も走る名馬が見いだされることになるのである。
一日に千里走る名馬はいつもいるのであるが、(これを見わける)伯楽はいつもいるとはかぎらないのである。
それゆえ、せっかく名馬がいるにしても、(その才能が見いだされず)ただいやしいしもべたていの手にかかって粗末なあつかいをうけ、
(駄馬といっしょに)馬小屋の中で首をならべて死んでいき、千里を走るという評判をえられずに終わってしまうのである。
馬で千里も走る能力があるものは、一回の食事に穀物一石をたいらげるものもある。ところが、
馬の飼い主は、自分の馬が千里も走る能力があることを知って飼うことをしない。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、154頁)。
然るに、
(02)
◆ 不下 知二 其能千里一 而食上 也 この句は、別に、
「不レ 知二 其能千里一 而食 也」と返り点をつけて「その能の千里なるを知らずして食ふなり。」(=その能力が千里もあるのを知らずに養っている。)と訓読することができる。例文の場合、書き下し文だけを読むと
「知二 其能千里一 而不レ食也」(その能力が千里もあることを知りながら養わない。)と混同するおそれがあるのでじゅうぶんに注意しなければならない(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973、156頁)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に於いて、
① と ② は、「原文(漢文)」が「共通」であるが、「訓読(書き下し文)」が「異なる」。
① と ③ は、「原文(漢文)」は「異なる」が、 「訓読(書き下し文)」が「共通」であって、尚且つ、「意味」が「異なる」。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
「赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973」の中では、
① と ② は、「原文(漢文)」が「共通」であるが、「訓読(書き下し文)」が「異なる」際に、
① と ② の、「意味」が「同じなのかか、同じではのか」といふことが、述べられてゐない。
然るに、
(05)
(ⅰ)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
に於いて、
① 食( )⇒( )食
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也⇒
① (馬)食者、〔(其能千里)知而食〕不也=
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり=
① 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知って養ふ。)といふことがない。
(ⅱ)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
に於いて、
② 食( )⇒( )食
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也⇒
② (馬)食者、〔(其能千里)知〕不而食也=
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり=
② 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知ら)ずに養ふ。
(ⅲ)
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に於いて、
③ 食( )⇒( )食
③ 知( )⇒( )知
③ 不( )⇒( )不
といふ「移動」を行ふと、
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也⇒
③ (馬)食者、(其能千里)知而(食)不也=
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり=
③ 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを)知って養ふ。
従って、
(05)により、
(06)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
といふ「漢文」に於いて、これらは、
① 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知って養ふ。)といふことがない。
② 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知ら)ずに養ふ。
③ 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを)知って養ふ。
といふ「意味」になる。
然るに、
(07)
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに養ふ。
③ 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って、養ふ。
であるならば、
② 知らずに養ふ。
③ 知って、養ふ。
であるため、明らかに、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」ではない。
従って、
(05)(07)により、
(08)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
といふ「漢文」に於いて、
② の「意味」と、
③ の「意味」は、「同じ」ではない。
然るに、
(09)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
といふのであれば、
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふことになるし、
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふのであれば、
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
といふ、ことになる。
従って、
(09)により、
(10)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふ「日本語」は、「同じ、一つの命題」の、「言ひ換へ」に過ぎない。
従って、
(10)により、
(11)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふ「命題」に於いて、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」である。
従って、
(05)(11)により、
(12)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
といふ「漢文」に於いて、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
といふ「漢文」に於いて、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」である。
然るに、
(13)
(a)
1 (1) P A
2 (2)~(Q&P) A
3 (3) P A
4(4) Q A
34(5) Q&P 34&I
234(6)~(Q&P)&
(Q&P) 25&I
23 (7) ~Q 46RAA
2 (8) P→~Q 37CP
12 (9) ~Q 18MPP
12 (ア) P&~Q 19&I
∴ (イ)P,~(Q&P)├ P&~Q
(b)
1 (1) P A
2 (2)~(Q)&P A
2 (3) ~Q 2&E
12 (4) P&~Q 13&I
∴ (5)P,~(Q)&P├ P&~Q
従って、
(13)により、
(14)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」である。
従って、
(15)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
といふ「二つの連式」は、「妥当」であって、尚且つ、「結論(P&~Q)」としては、「同じ」である。
従って、
(15)により、
(16)
P=馬を養ふ。
Q=其の能の千里なるを知る。
であるとして、
① P,~(Q&P)├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② P,~(Q)&P├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
従って、
(16)により、
(17)
P=食馬。
~=不
Q=知其其能千里。
&=而
であるとして、
① 食馬,不(知其能千里而食馬)├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食馬,不(知其能千里)而食馬├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
従って、
(12)(17)により、
(18)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
然るに、
(19)
(c)
1 (1)~(Q)&P A
1 (2) ~Q 1&E
1 (3) P 1&E
1 (4) P&~Q 23&I
∴ (5)~(Q)&P├ P&~Q
(d)
1 (1)~(Q&P) A
2 (2) P A
3(3) Q A
23(4) Q&P 23&I
123(5)~(Q&P)&
(Q&P) 14&I
12 (6) ~Q 35RAA
1 (7) P→~Q 26CP
∴ (8)~(Q&P)├ P→~Q
従って、
(19)により、
(20)
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
「連式(sequents)」に於いて、
③ は、「妥当」であって、
④ も、「妥当」であるが、
その一方で、
③ ├ P→~Q
④ ├ P&~Q
でるため、
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
に於いて、「結論」に関しては、
③=④ ではない。
従って、
(15)(20)により、
(21)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
といふ「4つの連式」は、それぞれが、「妥当」であるが、
③ だけは、 「結論(P→~Q)」が、「同じ」ではない。
従って、
(18)(21)により、
(22)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
③ 不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ふならば、其の馬の千里なるを知らない。
④ 不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
③ 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひならば、其の馬の千里なるを知らない。
④ 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、それぞれが、「妥当」であるが、「結論」に関しては、
①├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
②├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
③├ 馬を養ふならば、其の馬の千里なるを知らない。
④├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
であるため、
③ だけが、「他の3つの結論」と、「同じ」ではない。
従って、
(22)により、
(23)
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
③ 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
④ 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
といふ「漢文」に於いて、
① と ② は、その「結論」としては、「同じ意味」であるが、
③ と ④ は、その「結論」としても、「同じ意味」ではない。
然るに、
(24)
然るに、
(25)
① その能力を知っていることと、食うことの両方を否定する。
といふのであれば、
① その能力を知らないし、養ひもしない。
といふ「意味」であると、思はれる。
然るに、
(26)
① 不知其能千里而不食也=
① 不〔知(其能千里)〕而不(食)也⇒
① 〔(其能千里)知〕不而(食)不也=
① 〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして(食は)ざるなり=
① その能力を知らないし、養ひもしない。のだ。
従って、
(25)(26)により、
(27)
① その能力を知っていることと、食うことの両方を否定する。
といふのであれば、「漢文と、返り点」は、
(イ)不下 知二 其能千里一 而食上 也。
ではなく、
(イ)不レ 知二 其能千里一 而不レ食 也。
でなければ、ならない。
(28)
(イ)不下 知二 其能千里一 而食上 也。
といふ「漢文」は、飽くまでも、
①「その能力を知っていること」と、「馬を養ふこと」とが、「同時には、成り立たない」といふ「意味」である。
cf.
~(P&Q)=(~P∨~Q)=(P→~Q)=(~~Q→~P)=(Q→~P)
従って、
(28)により、
(29)
(イ)「馬を養ふ」ならば「其の能力を知らない」。といふことになり、
(イ)「其の能力を知ってゐる」ならば、「馬を養はない。」といふことになる。
然るに、
(30)
(イ)「馬を養ふ者」は、「馬を養ふ」。
従って、
(29)(30)により、
(31)
(イ)「馬を養ふ」ならば「其の能力を知らない」。然るに、
(イ)「馬を養ふ者」は、「馬を養ふ」。故に、
(イ)「馬を養ふ者」は、「其の能力を知らない」。
といふ「推論(三段論法)」が成立するのであって、「この記事」で言ひたかかったことは、要するに、さういふことである。
(01)
「原文」と「括弧(返り点)」と「訓読(書き下し文)」と「通釈(翻訳)」は、次の通りです。
(原文)
世有伯楽、然後有千里馬。
千里馬常有、而伯楽不常有。
故雖有名馬、祇辱於奴隷人之手、
駢死於槽櫪之間、不以千里称也。
馬之千里者、一食或盡粟一石。
食馬者、不知其能千里而食也。
(括弧)
世有(伯楽)、然後有(千里馬)。
千里馬常有、而伯楽不(常有)。
故雖有(名馬)、祇辱於(奴隷人之手)、
駢-死(於槽櫪之間)、不〔以(千里)称〕也。
馬之千里者、一食或盡(粟一石)。
食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
(訓読)
世に伯楽有りて、然る後に千里の馬有り。
千里馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。
故に名馬有りと雖も、祇だ奴隷人之手於辱かしめられ、
槽櫪之間於駢死し、千里を以て称せられ不るなり。
馬の千里なる者は、一食に或いは粟一石を盡くす。
馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はざるなり。
(通釈)
この世には、伯楽のような馬の鑑定の名人があって、そこではじめて一日に千里も走る名馬が見いだされることになるのである。
一日に千里走る名馬はいつもいるのであるが、(これを見わける)伯楽はいつもいるとはかぎらないのである。
それゆえ、せっかく名馬がいるにしても、(その才能が見いだされず)ただいやしいしもべたていの手にかかって粗末なあつかいをうけ、
(駄馬といっしょに)馬小屋の中で首をならべて死んでいき、千里を走るという評判をえられずに終わってしまうのである。
馬で千里も走る能力があるものは、一回の食事に穀物一石をたいらげるものもある。ところが、
馬の飼い主は、自分の馬が千里も走る能力があることを知って飼うことをしない。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、154頁)。
然るに、
(02)
◆ 不下 知二 其能千里一 而食上 也 この句は、別に、
「不レ 知二 其能千里一 而食 也」と返り点をつけて「その能の千里なるを知らずして食ふなり。」(=その能力が千里もあるのを知らずに養っている。)と訓読することができる。例文の場合、書き下し文だけを読むと
「知二 其能千里一 而不レ食也」(その能力が千里もあることを知りながら養わない。)と混同するおそれがあるのでじゅうぶんに注意しなければならない(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973、156頁)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に於いて、
① と ② は、「原文(漢文)」が「共通」であるが、「訓読(書き下し文)」が「異なる」。
① と ③ は、「原文(漢文)」は「異なる」が、 「訓読(書き下し文)」が「共通」であって、尚且つ、「意味」が「異なる」。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
「赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973」の中では、
① と ② は、「原文(漢文)」が「共通」であるが、「訓読(書き下し文)」が「異なる」際に、
① と ② の、「意味」が「同じなのかか、同じではのか」といふことが、述べられてゐない。
然るに、
(05)
(ⅰ)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
に於いて、
① 食( )⇒( )食
① 不〔 〕⇒〔 〕不
① 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也⇒
① (馬)食者、〔(其能千里)知而食〕不也=
① (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ざるなり=
① 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知って養ふ。)といふことがない。
(ⅱ)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也。
に於いて、
② 食( )⇒( )食
② 不〔 〕⇒〔 〕不
② 知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ふと、
② 食(馬)者、不〔知(其能千里)〕而食也⇒
② (馬)食者、〔(其能千里)知〕不而食也=
② (馬を)食ふ者は、〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして食ふなり=
② 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知ら)ずに養ふ。
(ⅲ)
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
に於いて、
③ 食( )⇒( )食
③ 知( )⇒( )知
③ 不( )⇒( )不
といふ「移動」を行ふと、
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也⇒
③ (馬)食者、(其能千里)知而(食)不也=
③ (馬を)食ふ者は、(其の能の千里なるを)知りて(食は)ざるなり=
③ 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを)知って養ふ。
従って、
(05)により、
(06)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
といふ「漢文」に於いて、これらは、
① 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知って養ふ。)といふことがない。
② 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを知ら)ずに養ふ。
③ 馬を養ふ者は、(其の能が千里であることを)知って養ふ。
といふ「意味」になる。
然るに、
(07)
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに養ふ。
③ 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って、養ふ。
であるならば、
② 知らずに養ふ。
③ 知って、養ふ。
であるため、明らかに、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」ではない。
従って、
(05)(07)により、
(08)
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
③ 食(馬)者、知(其能千里)而不(食)也。
といふ「漢文」に於いて、
② の「意味」と、
③ の「意味」は、「同じ」ではない。
然るに、
(09)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
といふのであれば、
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふことになるし、
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふのであれば、
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
といふ、ことになる。
従って、
(09)により、
(10)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふ「日本語」は、「同じ、一つの命題」の、「言ひ換へ」に過ぎない。
従って、
(10)により、
(11)
① 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知って養ふ。といふことがない。
② 馬を養ふ者は、其の能が千里であることを知らずに、養ふ。
といふ「命題」に於いて、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」である。
従って、
(05)(11)により、
(12)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也。
といふ「漢文」に於いて、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
といふ「漢文」に於いて、
① の「意味」と、
② の「意味」は、「同じ」である。
然るに、
(13)
(a)
1 (1) P A
2 (2)~(Q&P) A
3 (3) P A
4(4) Q A
34(5) Q&P 34&I
234(6)~(Q&P)&
(Q&P) 25&I
23 (7) ~Q 46RAA
2 (8) P→~Q 37CP
12 (9) ~Q 18MPP
12 (ア) P&~Q 19&I
∴ (イ)P,~(Q&P)├ P&~Q
(b)
1 (1) P A
2 (2)~(Q)&P A
2 (3) ~Q 2&E
12 (4) P&~Q 13&I
∴ (5)P,~(Q)&P├ P&~Q
従って、
(13)により、
(14)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」である。
従って、
(15)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
といふ「二つの連式」は、「妥当」であって、尚且つ、「結論(P&~Q)」としては、「同じ」である。
従って、
(15)により、
(16)
P=馬を養ふ。
Q=其の能の千里なるを知る。
であるとして、
① P,~(Q&P)├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② P,~(Q)&P├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
従って、
(16)により、
(17)
P=食馬。
~=不
Q=知其其能千里。
&=而
であるとして、
① 食馬,不(知其能千里而食馬)├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食馬,不(知其能千里)而食馬├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
従って、
(12)(17)により、
(18)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、「妥当」であって、「結論(馬を養ひ、其の馬の千里なるを知らない。)」としては、「同じ」である。
然るに、
(19)
(c)
1 (1)~(Q)&P A
1 (2) ~Q 1&E
1 (3) P 1&E
1 (4) P&~Q 23&I
∴ (5)~(Q)&P├ P&~Q
(d)
1 (1)~(Q&P) A
2 (2) P A
3(3) Q A
23(4) Q&P 23&I
123(5)~(Q&P)&
(Q&P) 14&I
12 (6) ~Q 35RAA
1 (7) P→~Q 26CP
∴ (8)~(Q&P)├ P→~Q
従って、
(19)により、
(20)
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
「連式(sequents)」に於いて、
③ は、「妥当」であって、
④ も、「妥当」であるが、
その一方で、
③ ├ P→~Q
④ ├ P&~Q
でるため、
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
に於いて、「結論」に関しては、
③=④ ではない。
従って、
(15)(20)により、
(21)
① P,~(Q&P)├ P&~Q
② P,~(Q)&P├ P&~Q
③ ~(Q&P)├ P→~Q
④ ~(Q)&P├ P&~Q
といふ「4つの連式」は、それぞれが、「妥当」であるが、
③ だけは、 「結論(P→~Q)」が、「同じ」ではない。
従って、
(18)(21)により、
(22)
① 食(馬)者、不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
② 食(馬)者、不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
③ 不〔知(其能千里)而食〕也├ 馬を養ふならば、其の馬の千里なるを知らない。
④ 不〔知(其能千里〕而食〕也├ 馬を養ひ、 其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」、すなはち、
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
③ 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也├ 馬を養ひならば、其の馬の千里なるを知らない。
④ 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
といふ「連式(sequents)」は、それぞれが、「妥当」であるが、「結論」に関しては、
①├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
②├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
③├ 馬を養ふならば、其の馬の千里なるを知らない。
④├ 馬を養ひ、らば、其の馬の千里なるを知らない。
であるため、
③ だけが、「他の3つの結論」と、「同じ」ではない。
従って、
(22)により、
(23)
① 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
② 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
③ 食レ 馬者、不下 知二 其能千里一 而食上 也。
④ 食レ 馬者、不レ 知二 其能千里一 而食 也。
といふ「漢文」に於いて、
① と ② は、その「結論」としては、「同じ意味」であるが、
③ と ④ は、その「結論」としても、「同じ意味」ではない。
然るに、
(24)
然るに、
(25)
① その能力を知っていることと、食うことの両方を否定する。
といふのであれば、
① その能力を知らないし、養ひもしない。
といふ「意味」であると、思はれる。
然るに、
(26)
① 不知其能千里而不食也=
① 不〔知(其能千里)〕而不(食)也⇒
① 〔(其能千里)知〕不而(食)不也=
① 〔(其の能の千里なるを)知ら〕ずして(食は)ざるなり=
① その能力を知らないし、養ひもしない。のだ。
従って、
(25)(26)により、
(27)
① その能力を知っていることと、食うことの両方を否定する。
といふのであれば、「漢文と、返り点」は、
(イ)不下 知二 其能千里一 而食上 也。
ではなく、
(イ)不レ 知二 其能千里一 而不レ食 也。
でなければ、ならない。
(28)
(イ)不下 知二 其能千里一 而食上 也。
といふ「漢文」は、飽くまでも、
①「その能力を知っていること」と、「馬を養ふこと」とが、「同時には、成り立たない」といふ「意味」である。
cf.
~(P&Q)=(~P∨~Q)=(P→~Q)=(~~Q→~P)=(Q→~P)
従って、
(28)により、
(29)
(イ)「馬を養ふ」ならば「其の能力を知らない」。といふことになり、
(イ)「其の能力を知ってゐる」ならば、「馬を養はない。」といふことになる。
然るに、
(30)
(イ)「馬を養ふ者」は、「馬を養ふ」。
従って、
(29)(30)により、
(31)
(イ)「馬を養ふ」ならば「其の能力を知らない」。然るに、
(イ)「馬を養ふ者」は、「馬を養ふ」。故に、
(イ)「馬を養ふ者」は、「其の能力を知らない」。
といふ「推論(三段論法)」が成立するのであって、「この記事」で言ひたかかったことは、要するに、さういふことである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます