近事変々

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※表題の「変々」は字面の遊びです。(念のため)

新宿区落合地区の備射祭(びしゃまつり)

2010-01-16 10:06:47 | 民俗・行事
1月13日、都内でも珍しい民俗行事である備射祭を見るため、新宿区の哲学堂公園近くにある落合の地まで出かけた。
この備射祭は、西落合二丁目にある葛谷御霊神社(くずがやごりょうじんじゃ)と、中井二丁目の中井御霊神社(なかいごりょうじんじゃ)に古来から伝わっているもので、新宿区の無形文化財に指定されているものである。
午前中は葛谷御霊神社、午後からは中井御霊神社へ行って、備射祭の一部始終を見てきた。

備射祭というのは、馬に乗らず矢を射る歩射(ぶしゃ)がなまって備射となったそうだが、同じ落合の地区に二つの御霊神社があるのは珍しいのではなかろうか。
また、弓も矢も伝統的にすべて手作りというのも、昔からの行事らしい趣きがある。

葛谷御霊神社では、午前10時に太鼓が打ち鳴らされて行事が始まったが、神殿での儀式が1時間半ほども続けられ、その間、古いお飾りを燃やす火のそばで暖を取りながら待っていた。

普通、どんど焼きと呼ばれる物は野積みにして火をつけるものだが、ここの神社では四方に注連縄を張った中に、大小2つの鉄製のカマドが設えてあり、大きい方で古いお飾りを燃やし、その熾き火を小さいほうに移し、そこに網を被せ、氏子の人達が持参したお餅を載せて焼いていた。
どんど焼きの火でお餅を焼き、無病息災を願う風習はどこにでもあるが、こういうのは初めて見る光景であった。





神殿での儀式が終わったあと、鳥居に掲げられた的に向かって矢を射る引弓の儀が執り行われた。
裃で正装した年番の方が二人で交互に弓を引くわけだが、20mも先にある鳥居に掲げられた的には矢は1本も届かなかった。
矢が的に当ると、ことしの豊作が約束されるのだそうだが、なかなかうまくはいかないらしい。
引弓の儀が終わったのち、関係者一同が鳥居の前で記念撮影して、こちらの行事は終了した。





葛谷御霊神社から妙正寺川沿いに、次の目的地である中井御霊神社へと向かったが、土地不案内のため、途中でちょっと道を迷いかけてしまったが、どうにか中井の坂上にある御霊神社に到着した。

式典が始まるのが午後2時からということなので、西武新宿線の線路沿いにある落合公園で昼飯を済ませた。
開始時間まで間があるので、付近を少し散歩してから中井御霊神社へ戻り、こちらの備射祭も見学した。
境内は三方に幕が張られ、中央の入口には注連飾りと的が設えてあった。



こちらでは、午後二時を期して、木遣り衆を先頭に神官や氏子、頭家(年番)の人達が拝殿に進み、拝殿内での儀式が始まった。





拝殿で祝詞奏上の後、しばらくして弓射の儀に移り、拝殿の前から的に向かって矢が射られる。
まず、頭家二人が射たあと参列した総代全員が射るのだが、やはり、20mも先にある的には頭家の矢は当たらなかった。
しかし、総代の中には的に当てた人もいて、見物人から大きな拍手が沸いていた。
この間に、見物人には温かい甘酒が配られ、甘酒を片手にカメラを構えていたが、冷えた体が温まる感じがして美味しかった。







弓射の儀は神官が最後に矢を放って終了し、拝殿では謡いを唱和、手締めで備射祭がお開きとなる訳だが、そちらの内容は遠くから見ているだけなので皆目分からなかった。
同じ備射祭といっても、その進め方にはかなり違いが感じられた。


おびしゃ祭り(葛谷御霊神社)/東京のまつり・近藤英一郎

おびしゃ祭り(中井御霊神社)/東京のまつり・近藤英一郎