先日の土曜日(11/20)に、毎年恒例になっている全国民俗芸能大会を見に行ってきた。
この大会は、財団法人日本青年館と全国民俗芸能保存振興市町村連盟の主催、文化庁の後援でで開かれているものであり、ことしで60回目を迎える民俗芸能の祭典である。
会場は千駄ヶ谷の日本青年館で、60回目を迎えた今回は節目を記念する意味もあり、出演団体はすべて国指定の重要無形民俗文化財に登録されているものに限定されていた。
出演団体は以下の通りである。
「天津司舞(てんづ しまい)」・・・山梨県 甲府市小瀬町「天津司舞保存会」
「那智の田楽(なちのでんがく)」・・・和歌山県 那智勝浦町那智山 「那智田楽保存会」
「山屋の田植踊(やまやのたうえおどり)」・・・岩手県 紫波町山屋 「山屋田植踊保存会」
「武雄の荒踊(たけおのあらおどり)」・・・佐賀県 武雄市高瀬 「高瀬荒踊保存会」
「長滝の延年(ながたきのえんねん」・・・岐阜県 郡上市白鳥町長滝 「長滝の延年保存会」
この会場では録音録画のために写真撮影は全面禁止ということになっているのだが、毎年、撮影をしている者がいるし、時たまフラッシュの光さえ目に届く。まったくもって嘆かわしい限りである。
そんな訳で、この記事中の写真はグーグルの画像検索で探した物であることをお断りしておく。
また民俗芸能の解説文は、案内パンフレットからの転載である。
全国民俗芸能保存振興市町村連盟
http://www.zenminren.gr.jp/
「天津司舞(てんづ しまい)」
今NHKの人形芝居新三銃士が人気ですが、わが国も古くから人形芝居が行われています。
7月19日に天津司神社に安置されている人形が鈴宮諏訪神社に渡御し、境内でオフネという舟形の幕で囲んだ中で九体の人形が太鼓と鼓、笛の囃子で田楽を踊ります。
人形の使い手は一人から三人で行い舞い終わるともとの天津司神社にもどり、人形はオクズシと言って解体され保管されます。めずらしい芸能です。
【寸評】
文楽などと同じ人形芝居なのだが、舞台はオフネという舟形の幕で、その中で人形を操作するため観客には人形しか見えない。
二人か三人で人形を操作するのだが、突然人形が幕の内部に隠れ、かなり離れた場所から再び姿を現すという動きには、ちょっと驚いた。
天津司舞/国指定文化財等データベース
http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=302&item_id=66
天津司の舞(てんづ しのまい)/甲府市観光ガイド
http://www.city.kofu.yamanashi.jp/kanko/event/0404.htm
天津司舞/客神の足跡
http://www.ne.jp/asahi/maroudo/somin/contentsmatsurisaijiki/tendushinomai.html
「那智の田楽(なちのでんがく)」
熊野三山のひとつ熊野那智大社の夏の火祭り(扇祭り、扇会式)の一部として境内の仮設舞台で田楽が行われます。多数の曲目が伝えられ形式が整っていることから田楽の代表的なものとして評価が高く人気があります。応永10年に京の田楽法師を招いて習得させ、明治維新のときに中絶したものの大正10年に復活させたものといいます。"雅の世界"へ皆さんを誘います。
【寸評】
ここの田楽は、大きなビンザサラの使い手を中心に演目が進むところに特徴が見られた。
演目は全二十一曲あるのだが、素人の身にはどんな意味があるのかほとんどわからずじまいであった。
那智の田楽/Kansai Windw
http://www.kippo.or.jp/j/art/report_detail_4.html
那智の田楽/国指定文化財等データベース
http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=302&item_id=110
那智の田楽/フリー百科事典「ウィキペディア」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%82%A3%E6%99%BA%E3%81%AE%E7%94%B0%E6%A5%BD
「山屋の田植踊(やまやのたうえおどり)」
東北地方に多い小正月に座敷でその年の五穀豊穣を願い踊るものです。三番叟をはじめ、田植えから稲刈り、収穫までの一連の過程を歌と踊りで豊かに表現します。他の地域では見られない早乙女の花笠を回す「笠ふり」も一見です。また、一八と呼ばれる道化が狂言回し役で出て来、これに嬶(かかあ)がからんで面白く囃したてます。可笑しさと楽しさのある芸能です。
【寸評】
きらびやかな衣装で田植えの過程を踊りで表現するものだが、私には「田植踊」という文字が衣装に染め込まれているのが、どうも気になってしかたがなかった。
早乙女もそうだが、神前で舞う翁の背にまで「山屋の田植踊」という文字が躍っていたのである。
国指定の重要無形民俗文化財というものが、このように変節していいものか、少なからず疑念を感じた。
踊り自体では、早乙女が頭に冠った花笠を激しく回転する「笠ふり」は、なかなか見事であった。
山屋の田植踊
http://www.bunka.pref.iwate.jp/dentou/kyodo/shousai/geinou_005.html
山屋の田植踊/国指定文化財等データベース
http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=302&item_id=10
「武雄の荒踊(たけおのあらおどり)」
伝承として戦国時代に戦勝の宴で足軽たちが即興で踊ったのが起源だといわれています。現在ではお彼岸の9月22~23日に
大小二本の脇差をさした若者たちが、宿から隊列を組んで松尾神社まで道行きをして境内で奉納します。
高瀬の荒踊り、素朴ながら「腕鉾」の所作をはじめ、手の振りや足の上げ方など流麗さの中に力強差を見ることができます。
【寸評】
脇差をさした若者たちの素踊りといった感じであったが、輪の中心で踊る者は大小二本をさしており、外側で踊る者は一本というのが役割を表しているようであった。
衣装を別にすれば、現代のよさこいソーランにも似ているような力強い踊りであった。
武雄の荒踊/国指定文化財等データベース
http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=302&item_id=137
武雄の郷土芸能/川良讃歌
http://www.geocities.jp/kawaranmon/AI14.htm
「長滝の延年(ながたきのえんねん」
古く鎌倉時代から長滝白山神社の修正会に行われていました。明治の神仏分離で僧たちによる伝承が困難となり、民間人に教えたものです。六日祭りと称して神社の拝殿で延年が行われます。
神事のあと、「酌取り」が始まります。拝殿の中央に菓子台がおかれ無言の菓子讃めが行われ式が終わると菓子は群衆に撒かれます。その後「当弁・露払い・乱拍子・田歌・花笠・代すり・倶舎・大衆舞」の九つの演目が厳かに舞われます。
【寸評】
延年というもがどういうものか知らないが、「しろすり」という演目では、大きな鍬で田を耕す仕草が面白かった。
しかし、最初は一人だった農夫が一通り踊ったあとで二人目が現れ、二人してまったく同じように踊るで、ちょっと飽きが頭をもたげてきたのも事実である。
すべての演目を舞うためには2時間あまりもかかるそうなので、一部を見ただけでは全体の様子をうかがい知ることはできない。
長滝の延年/国指定文化財等データベース
http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=302&item_id=73
長滝の延年/客神の足跡
http://www.ne.jp/asahi/maroudo/somin/contentsmatsurisaijiki/nagatakinoennen.html
ともあれ、このように全国各地の民俗芸能を身近に見られるというのは、たいへん貴重な機会である。
来年以降も案内が来ると思うが、時間の許す限り見に行きたいと思っているところである。