きのうは、雪のちらつく中を一ツ橋ホールまで出かけ、全国農協観光協会主催の「民俗芸能と農村生活を考える会」の公演を観てきた。
演目は、秋田県由利本荘市に伝わる民俗芸能、「本海番楽(ほんかいばんがく)」である。
最初に由利本荘市の自然・文化を紹介するビデオが上映され、その後2時間半ほど各種の番楽が演じられた。
【本海獅子舞番楽】の概要
「本海獅子舞番楽」は、江戸時代初期の寛永年間(1624~1644)、京都醍醐寺三宝院に属する修験者で芸能優れた本海行人(本海坊)が、秋田県由利本荘市鳥海町の村々に直接伝授した、修験の要素が濃い獅子舞番楽です。
本海行人最後の地とされる同市矢島町荒沢地区の白山長根には、「安永八亥 本海上人 三月十八日建立」と陰刻された碑が建立されており、また鳥海町上直根講中には、寛永3年7月に本海行人が記した「巻物」が伝わっていたことからもうかがい知ることができます。
本海行人は、鳥海山の麓に位置する鳥海町を中心に、修験的な行事をとり入れた獅子舞・番楽を伝え、現在これを総称して「本海獅子舞番楽」と呼んでいます。一般的には獅子頭を使うものを「獅子舞」、獅子頭を使わないものを「番楽」としています。(由利本荘市HPより転載)
演目順に簡単に紹介するが、記述は当日配布された「民俗芸能と農村生活を考える会」のパンフレットからの引用である。
第22回 民俗芸能と農村生活を考える会/全国農協観光協会
秋田県由利本荘市「本海番楽」
http://www.znk.or.jp/event/20101005.php
【祓い獅子・・・下直根講中】
一般的に行われている獅子舞で、掛け唄に合わせて獅子を振ります。
家内安全・健康祈願の獅子舞で、獅子を振った後に合掌して座った人の頭と体を次々に噛んで悪疫を退けます。
本海番楽の獅子舞には、「天地和合」、「龍門の振り返し」、「三条のみ腰」の獅子舞の三大所作が受け継がれています。
youtube 上直根講中「祓い獅子」
http://www.youtube.com/watch?v=sTy_kidnS3w&feature=player_embedded
【三番叟(式舞)・・・猿倉講中】
翁舞いと対になっている演目で、一人舞です。
烏帽子を被り、切顎の黒色尉面(三番叟面)を着け扇と錫杖を持って舞います。
もともと猿能楽に発した演目で、悪霊を地に踏み鎮めるための足拍子が見どころです。
【御神楽(式舞)・・・下直根講中】
鳥兜、直面(ひためん)のもの二人が、右手に錫杖、左手に扇を採って対になり舞います。
「御神楽や いつ立ち初めしの御神楽や 今日立ち初めし 神の御神楽」という幕出歌を歌います。
youtube 下直根講中「御神楽(式舞)・三番叟」
http://www.youtube.com/watch?v=v1n6Gb2dwn0&feature=related
【三人立(神之舞)・・・猿倉講中】
高天原(天照大神をはじめ多くの神々が住んでいたとされる天上の世界)に四方の神々を集めての神遊びの一つで、三人の武者が扇と錫杖で舞い、後半は足拍子を揃えての太刀くぐりをする勇壮な舞です。
youtube 猿倉講中「女舞・三人立」
http://www.youtube.com/watch?v=y523g-nYSNw&feature=player_embedded
【山之神(神之舞)・・・猿倉講中】
番楽諸曲の中でも重厚な演目とされ、鳥兜に直面(ひためん)で両腰に太刀を帯びて舞います。
筋は山之神の本地を語り、年の豊作を祈り悪魔を祓って舞います。
修験風の荒舞で、足の踏み方に難しい作法があります。
【鐘巻(女舞)・・・下直根講中】
紀州あやめ伏屋の一人姫が鐘巻道成寺を拝もうと女人禁制を押して通り、鐘を撞こうとするが、かえって鐘の緒に巻き込められ蛇身となります。
そこへ山伏が出て間語(まがた)りをなし、蛇身を折り伏せると蛇身のものが成仏し、女姿に戻って舞うという筋のものです。
最初に女が出て扇を持って舞い幕に入ります。
【やさぎ獅子(獅子舞)・・・猿倉講中】
最も激しい獅子舞で、上下左右に頭を振り返し、唄掛けのない時は歯ぐいをする、後幕取りの軽妙なさばきに
特徴があり、「切り上げの獅子」として番楽の最後に舞われます。
私自身も、「番楽]というものを観たのは初めてのことなのだが、こうした会場では写真撮影はできないので、どうしても中途半端な説明にならざるを得ない。
youtubeに動画があったので、それを見て雰囲気を感じて頂ければ幸いである。
いってみれば、お神楽の範疇に入るもののような印象であったが、毎度、地方の伝統芸能を身近で見られることに感謝の念を禁じえないところである。