たまたま犬を飼い始めた時期に書店で見つけたこの本、とりわけラブラドール・レトリーバーを飼う人なら読み進むにつれ共感に咽ぶだろう。
1991年、若い新婚カップルだったジョンと妻のジェニーは、ラブラドール・レトリーバーの仔犬を買って、マーリーとなづけた。
ラブラドール・レトリーバーはアメリカ随一の人気犬種で犬の本には「気質は愛らしく、穏やかで、子どもにも優しく、攻撃性とは無縁、陽気で楽しい」などと褒め言葉が並んでいた。ところがそんな一般論を見事に裏切って、マーリーはとんでもない問題犬だった。凡そなんでも飲み込む、なんでも壊す、ひどい雷恐怖症で大暴れし壁だろうと床だろうと鋼鉄製の頑丈な檻だろうと、巨体とバカ力に物言わせてとにかく何でも破壊してしまう。留守中には何度となく網戸を破られる。訓練教室に入れてもたちまち失格の烙印を押され追い出される始末・・・・
それでも底抜けの明るさとあふれる愛情とゆるぎない忠誠心を具えたマーリーは、健やかなる時も病めるときもいつも家族の一員だった。マーリーと過ごした13年間に、ジョンとジェニーには3人の子どもが出来、マーリーとまるで兄弟のように育った。
犬は人間の5~7倍の速さで老いていく。マーリーも老犬となり最後のお別れのとき、ジョンはマーリーの耳元で「おまえは最高の犬だったよ」とささやく。犬を愛したことがある人、愛する犬を失った経験を持つ人なら、きっとジョンの言葉に深く共感せずには居られないはず。
印象に残った言葉
「ペットが私たちと過ごす一生はとても短いし、その大半は、家に帰ってくる私たちを待つことに費やされます。」
「犬との暮らしにはなにかと苦労がつきものだけれど、ともに過ごす犬が与えてくれる喜びや恩恵はこの上なく大きい。例え問題だらけの犬だろうと、とりわけ愛情と忠誠心の点では、どんな人間もおよびもつかない。」