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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国連特別報告者が見た日本の「表現の自由」のレベル

2016年05月17日 | 人権
 ◆ 国連「表現の自由」特別報告者が語る「日本のメディアの独立性に暗雲」 (ハーバービジネスオンライン)
 「『報道の自由』が安倍政権によって脅かされている」という懸念が広がっている。
  それは、国内のメディア関係者はもちろん、海外のメディア関係者も危惧していることなのだという。
 4月に来日したデビッド・ケイ教授(米国カリフォルニア大)は、「日本のメディアの独立性に急激に暗雲がたち込めている」と指摘する。
 ケイ教授は国連人権理事会に任命され、各国の「表現の自由」を調査している特別報告者。今回の来日では、メディア関係者と政府関係者の双方から状況を聞くなどの調査を行った。
 ◆ 政府がメディアをコントロールしてはならない
 ケイ教授は「放送法をめぐる高市総務大臣の発言や、特定秘密保護法は非常に大きな問題があります」と語る。
 放送法をめぐる「高市早苗総務大臣の発言」とは、今年2月8日、衆院予算委員会で「テレビ局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じることができる」との趣旨の答弁を行い、翌9日も同様の見解を示すなどした一連の発言のこと。
 高市総務大臣は発言の根拠を、放送局に「政治的公平性」を求める放送法4条だと説明しているが、この4条はむしろ「権力からの放送の独立を示すもの」だというのが、憲法学者らの通説だ。
 ケイ教授も「メディアの政治的公平性を判断するのは、例えば第三者機関などであるべきで、政府がメディアをコントロールすることは、あってはならない」と問題視。
 ケイ教授は高市総務大臣に直接説明してもらうべく面会を求めたが、大臣は「国会会期中」を理由に会わなかったという。
 ◆ ジャーナリストが処罰される危険性のある「特定秘密保護法」は見直すべき
 特定秘密保護法とは、「漏えいすると国の安全保障に著しい支障を与える」とされる情報を「特定秘密」に指定し、それを外部に知らせたり、外部から知ろうとしたりする人物などを処罰する法律。安倍政権のもと2013年末に強行採決され、2014年12月に施行された。
 同法に対しては、メディア関係者(特にフリーランス)が取材の過程で処罰されうること、今年4月の時点で特定秘密が記録された行政文書は27万2020件にも及び、何が秘密かですら明らかにされていないことなどから、「『知る権利』を脅かすもの」との批判が根強い。
 「秘密の幅が広すぎます。何が秘密なのか、透明性の高いかたちで定義していくべきです。ジャーナリストが処罰される危険性は排除すべきでしょう。安全保障、原発など、最も国民の関心の高いところが規制されうる。特定秘密保護法の解釈を変えるのではなく、法律そのものを変えるべきです」(ケイ教授)
 ◆ パスポート強制返納は不適切
 さらに昨年2月、シリアに取材に行こうとしたフリーカメラマンの杉本祐一さんのパスポートを外務省が強制返納させた事件についても手厳しい。
 「本件について外務省と意見交換しました。パスポートを取り上げるという処置は、ジャーナリストに適用すべきではないと指摘しました。自らリスクを負い、紛争地で取材しようというジャーナリストがいるならば、彼らが自由に取材できるようにすべきです」(同)
 パスポート強制返納事件については、福島瑞穂参議院議員の調査により、首相官邸が外務省領事局に命じて強制返納させたことが明らかになっている。
 「ジャーナリストの後藤健二さんらがIS(いわゆる「イスラム国」)に誘拐・殺害された事件への対応で批判された安倍政権が、新たに日本人記者が拘束されるのを恐れ、前代未聞の処置に踏み切ったのではないか」。杉本さんやその代理人の弁護士らはそう疑っている。
 ◆ 自民党改憲案は、報道の自由や市民運動を弾圧するもの!?
 この夏に行われる参院選で大勝できれば、安倍政権は改憲を目指すとしているが、自民党の改憲草案にもケイ教授の厳しい視線が向けられた。
 「自民党の改憲草案では、表現の自由を保障する憲法21条に『公益を害するものでなければ』という文言を追加すると聞いています。それは、日本が批准した『市民的および政治的権利の国際規約第19条』とも矛盾することになります。同規約19条は、政府が市民の政治的権利を制約することに、大変厳しいものです。憲法21条が改悪されると、市民運動への弾圧もより強力になるのでは……と懸念しています」
 ◆ 日本のメディアは政府に対して「いや、違う」と反論する力が弱い
 ケイ教授の批判の矛先は安倍政権だけでなく、日本のメディアにも向けられた。

 「日本のメディアの構造そのものが、政府に対して必ずしも抵抗しないという問題があります。例えば記者クラブは、大手メディアや政府に都合がいいものとなっています。外国メディアや雑誌、フリーランスが排除されているなど、記者クラブはアクセスを制限するツールであり、市民の知る権利を制限しているものです。
 ジャーナリストの役割として、見張り役、WATCH DOG(番犬)であるべき。政府から聞いた話をそのまま流すのではなく、議論を起こすべきです。
 ところが日本のメディアは、政府に対してもの申すということをしない。メディアが報じたことに、政府が反論することもあるでしょうが、それに対してさらにメディアが再反論することが必要です。それこそがジャーナリズムの神髄。日本のメディアは、政府に対して『いや、違う』という力が弱まってしまっています」(ケイ教授)
 今や国際的にも懸念されている日本の「報道の自由」。今年4月に公表された「国境なき記者団」の世界報道の自由ランキングでも72位と、「報道の自由に問題がある」カテゴリに入れられてしまった。
 かつて民主党・鳩山政権の時は11位だったのだから、まさに大暴落だ。気がつけば中国や北朝鮮のような抑圧的な国になってしまわないよう、もっと危機感を持つべきだろう。
  <文/志葉 玲(ジャーナリスト)>

『ハーバービジネスオンライン』(2016年05月13日)
http://hbol.jp/94065
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