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「個人通報制度」の実現をめざす6・25学習会

2009年08月18日 | 人権
 《国際人権活動ニュース》 2009年7月7日(火) 第99号
 ★ 「個人通報制度」の実現をめざす6・25学習会
  制度の内容、手続きの方法、通報の実例、批准の目途は・・・


 6月25日(木)、「個人通報制度って何?」-実現すれば私たちの人権はどう変わる? をテーマに、東京労働会館7階ラパスホールで学習会を開催し、30名が参加しました。講師は鈴木亜英議長、司会は山口弘文事務局長ですすめられました。
 配布された資料、1966年12月に国連で決議され1976年3月に発効した自由権規約選択議定書の条文、2008年11月委員会から出された「一般的意見(ゼネラルコメント)33―第1選択議定書に基づく締約国の義務」、第3回、4回、5回の日本政府報告で出された総括所見(最終見解・勧告)一覧表、日弁連リーフ、などを活用しながらの具体的で実践的な内容の学習会となりました。
 レジュメに沿いながら、講演の内容を要約してご紹介します。

 ★ はじめに
 まず、自由権規約と自由権第1選択議定書(個人通報制度)の関係、国際人権条約と個人通報制度についての解説があり、国際人権条約(自由権規約、女性差別撤廃条約、拷問禁止条約、人種差別撤廃条約、障害者権利条約、社会権規約)にはすべて、個人通報制度があること、それは条約に実効性を持たせるためであることが明確にされた。
 ★ 個人通報制度とは
 それぞれの条約の選択議定書を批准・受諾することによって、条約において認められた権利を侵害されたと主張する個人が条約機関に対して直接訴え(個人通報)を起こし、その救済をはかる制度である。
 ★ 個人通報制度批准国と日本の位置
 自由権規約を批准した国(締約国)は現在164ヵ国。そのうち、個人通報制度を批准している国は112ヵ国。自由権規約締約国の67.76%、3分の2、すべての国連加盟国の6割近くが批准している。
 アジア・オセアニアでは、オーストラリア、韓国、フィリピン、ニュージーランド、モンゴルなどが批准しているが、日本は批准していない
 OECD30ヵ国のなかでは未批准は日本を含めて2ヵ国のみ、サミット参加国(先進首脳国)で個人通報制度を持たない国は日本のみ。これだけみても日本が人権後進国であることがわかる。
 ★ 個人通報制度の手続き
 個人通報するためには、国内救済手続きを尽くすことが大前提で、具体的な人権侵害を受けている被害者本人であること(サポートすることは可能)、自由権規約に定められた権利の侵害であること、選択議定書批准後におこった事例であること(ただし、権利侵害の影響の継続性があればよい)、権利侵害の申立人の国が未批准であっても被害を受けた時点が、締約国の管轄下であればよい(メルボルン事件の日本人申立ての例)などの要件が必要。また、通報は国連の公用語(6ヶ国語であるが、一般的には英語、フランス語、スペイン語が早く処理される)で行うこと。
 委員会の審査を経ての救済措置としては、損害賠償の支払い、法律の改正、裁判のやり直し、刑の軽減、釈放などが考えられる。委員会の決定に法的拘束力はないといわれるが、委員会と相手国、そして当事者の間での意見のキャッチボールが行われるなかで、問題点はなにかがはっきりし、何らかの改善が行われる事例が多い
 ★ 32年間の個人通報例は1819件
 個人通報制度が発効した1976年から2008年までの32年間に、自由権規約委員会に通報された件数は、88ヵ国を相手に1819件。そのうち規約違反ありと判断されたものが512件、違反なしが133件、受理されなかった件数が518件である。
 通報の内容は、生命に対する権利(死刑、「失踪」)、被拘禁者の権利(オランダ、ハンガリーの例)、法の下の平等(オランダ、フランスの例)、マイノリティの権利、表現の自由(カナダ、フランス対韓国の例)、プライバシー権家族生活の保護などと、実例を示しながら紹介した。
 ★ 批准をめぐる日本の状況
 この問題への日本政府の対応は、自由権規約を批准した当時より後退している。
 国際人権活動日本委員会は10年以上にわたって団体署名にとりくみ、政府要請行動を行ってきたが、「個人通報制度」の批准について政府は、あれこれの理由をあげて今日まで批准をしていない。しかし、「司法の独立が犯される」という理由も、すでに批准している国で司法の独立が犯されたという例はひとつもないことからも、もはや理由にはならない
 国連人権機関のあらゆる審査で強く勧告され、昨年10月の審査でもきびしく追及された。最終見解でも勧告のトップに上げられるなかで、日本の状況も変化している。国会、政党(マニフェストに入れる政党が多くなった)、関係省庁、マスコミなどの状況にも前向きな動きが出てきている。しかし、そう簡単に批准をするとは考えられない。
 現在取り組んでいる11回目の団体署名の取り組みを強めるとともに、他のNGOと協力・連帯し、幅広く、大きな運動にしていくことが大事である。日本が受諾した場合の制度設計について日弁連などでの検討が始まっているとの紹介もあった。
 講演のあと参加者から質問と意見が出され、8時半近くに終了。学習会に参加した、消防職員ネットワークの細井郁秀さんから感想が送られてきたので紹介する。
 ※ 細井郁秀さん(消防職員ネットワーク)の感想
 25日の個人通報制度学習会はたいへん意義深いものでした。選択議定書についての基本がはじめてわかりました。たとえ、日本が選択議定書を批准しても、日本国内でクリアすべき課題、さらに国連での審査過程での課題があることを知りました。きょうの講演をパワーポイントにまとめるといいと思います。このような学習会を今後も続けてください。
 当日、署名をお願いした件が、労働法律旬報(昨月号)に掲載されました。政府がこの裁判を和解に持ちこむよう備前市当局にはたらきかけています。

国連経社理特別協議資格NGO 国際人権活動日本委員会
〒170-0005東京都豊島区南大塚2-33-10 東京労働会館1F
tel:03-3943-2420 fax:03-3943-2431
e-mail:hmrights@yahoo.co.jp
JWCHR
JAPANESE WORKERS' COMMITTEE FOR HUMAN RIGHTS
NGO in special consultative status with the Economic and Social Council of the United Nations
国際人権活動ニュース2009年7月7日(火) 第99号
URL:http://jwchr.s59.xrea.com/

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