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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

経団連提言『電力システムを再構築』批判

2019年06月01日 | フクシマ原発震災
 ◆ ウソ並べる経団連「提言」
   ~自然エネルギー拡大を阻害している張本人
   ~国際的に通用しない「安全性」
(週刊新社会)


 週刊『経団連タイムス』(4月11日)によると、経団連は提言『日本を支える電力システムを再構築する』をとりまとめ、中西宏明会長が記者会見した。
 会長は「かねてより日本の電力に強い危機感を持っており、このままでは国民生活や事業活動に甚大な影響を及ぼしかねないと危惧していると説明。この危機感を会長・副会長をはじめ首脳レベルで共有して取りまとめた経済界からの問題提起が今回の提言だ」とし、「電力を巡る危機感が政府・経済界・学術界をはじめ、広く国民にも共有され、電力の全体像について国民的議論が展開していくことへの期待」を強く訴えた。
 ◆ 『提言』の概要と4つの危機
 「現在、日本の電力は4つの危機に直面している。

 国際的に地球温暖化問題への関心が高まるなか、東日本大震災以降、①火力発電依存度は8割を超え、その打開策となる、②再生可能エネルギーの拡大も、③安全性が確認された原子力発電所の再稼働も、困難な状況。結果として…④国際的に遜色ない電気料金水準も実現できていない
 一方で、電気事業者は投資回収の見通しを立てにくくなり、電力インフラへの投資を抑制している。こうした危機を放置すれば、化石燃料依存から脱却できないばかりか、電力供給の質の低下や電気料金の高騰につながりかねず、地球温暖化対策や産業競争力強化に逆行する。Society5・0実現の重要な基盤である電力に対して投資を活性化すべく、環境整備を進める必要がある
 「原子力発電については、地球温暖化対策の観点からも安全性確保と国民理解を大前提に、既設発電所の再稼働やリプレース・新増設を真剣に推進することが不可欠である」
 さらに会長は記者会見の中で「化石燃料が永遠に使い続けられるものでないことは明らかであり、再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料以外のエネルギーの選択肢を確保することが重要」と強調。「原子力については、政府、電力会社、設備メーカーなど関係者が一体となって、社会的信頼を醸成していく必要がある」とした。
 「また、日本の電力が直面している課題を放置すれば、昨年9月の北海道でのブラックアウト(大規模停電)のような事態が全国で起こる可能性も排除できないとしたうえで、あれほどの事象を経験したなかでも電力に対する危機感が日本全体で共有されていないことに懸念を表明。広く危機感の共有を図り、解決に向けた議論を行つていきたい」とした。
 ◆ ウソによる誘導

 独占資本とは目先の利潤のために、いかにウソを平気で並び立てて、もっともらしく誘導するかの見本のような提言である。
 第一に、「再生可能エネルギー(自然エネルギー)の拡大」「危機」に陥っているのは経団連の諸君の責任である。
 福島事故後に喧伝された「発送電の分離」を実行しなかったばかりか、全国で発送電を独占的に支配したまま、基幹送電網は原発と火力に優先使用させ、あるいは原発稼働用に空けてあり、せっかく成長し始めた風力や太陽光の買取りを制限しているのだから。
 不安定な自然エネルギーをサポートする必要があるなどとするが、原発こそ電力供給をいかに不安定にするかは福島で明らかだ。
 普段でも原発は負荷を変動させると事故発生の確率が大きくなる。そのため一定負荷で稼働させねばならないが、それには逆に火力や水力等でサポートする以外にない。
 プラックアウトを防げるのも、分散した自然エネルギーだ。日本の風力発電ポテンシャルは洋上を中心に20億kWもある。この活用による脱原発こそ必要である。
 ◆ 原発輸出失敗の理由

 第二に、「安全性が確認された原子力発電所」などというものは存在しない。
 日本では国家権力の一翼を担う原子力規制委員会という名の原子力推進委員会が、「新基準」でことごとくの原発を「安全」と認定しているが、福島事故原発に比べて危険性をほんの少し小さくしただけであって、決して「安全性が確認された」ものではない国際的にはまったく通用しない「安全性」にすぎない。
 中西会長がイギリスへの原発輸出に失敗し、独占資本と安倍政権の「成長戦略の柱」だったはずの原発の輸出計画が総崩れしたのは、福島事故後に少しばかり改善した原発の建設費が相当に高くつくからであった。
 また洋上風力などの建設が急速に進み、そねその発電コストの方がはるかに優位に立ったからである。
 ◆ 安全性は確保できるか

 第三に、「原子力発電については、地球温暖化対策の観点からも安全性確保と国民理解を大前提に、既設発電所の再稼働やリプレース・新増設を真剣に推進することが不可欠である」などといかに強調しても、巨大地震が予想されている日本で、「安全性確保」ができるわけもないし、「国民理解」が進むわけもない。
 福島を見ると、メルトダウンした燃料デブリを取り出すことはおろか、原子炉建屋の上部にある使用済み核燃料プールの中から健全なはずの核燃料を取り出して敷地内の高台にある共用プールに移すことさえままならない。
 建屋内の放射線量が高く、ほとんどの作業は遠隔操作となるが、すでに開始は予定から4年4カ月も遅れている
 デブリ等はもとより、使用済み核燃料であれ、再処理後のガラス固化体であれ、高レベル放射性廃棄物はどこにもっていってどう処分するのかも決めようもない。受け入れる所などどこにもあるはずもない
 フレコンバッグに納められた多量の中・低レベルの廃棄物でさえ、原発敷地周辺の処理場に集めてみても、県民に約束している30年以内に移すべき処分場など現れまい。”臭いものにはふた”のごとく、公共事業に使ってしまうことさえ図られている。
 「国民理解」が進めば進むほど、再稼働もリプレース(建て替え)も新増設もできなくなるはずである。
 経団連の意を受けて経産省は新たな小型原発の開発を進め、2040年頃までに実用化を目指す。既存の大型原発より出力を調整しやすい小型原発が必要とする。福島第一の原発は小型である。150万kWに対して50万kWを3基となると、事故発生の確率は3倍になる。コストもさらにかさむ。
 地球温暖化対策なぞといっても、核分裂エネルギーの70%は海水を温めるのに浪費され、地球温暖化を進める
 ◆ 「差別」理解しない日本政府

 第四に、韓国による水産物輸入禁止措置をめぐる世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きで日本は逆転敗訴した。
 東日本大震災、原発災害からの復興を喧伝してきた政府と経団連にとって、大誤算の、しかし当然の事態となった。
 日本政府が「不当な差別」で「必要以上に貿易制限的」と主張した福島や茨城など8県の水産物に対する韓国の禁輸措置をWTOが容認したのである。
 植民地支配や徴用工や慰安婦等の問題を「不当な差別」とは思っていない日本政府は、韓国による日本産品の禁輸措置こそ許しがたい「不当な差別」だと憤慨するのである。福島の実情を見るとよい。
 第一原発には100万トンを超えた高濃度汚染水がある。東電はつい先日まで、これにはトリチウムしか残っていないとしてきたが、放射性セシウムやストロンチウムの相当量が残ったままであることが明らかになった。タンク保管が無理になったので海に放出すると言う。
 政府や規制委員会はセシウム等をできる限り濾過して、後は希釈して捨てればよいとする。だが、100万トンの中に含まれる放射性物質は絶対量としては大量となる。
 ◆ 原子力緊急事態宣言は解けていない

 他方では通常の許容被曝線量の20倍まで我慢して故郷に戻れという。原子力緊急事態宣言を解けないままの「復興五輪」である。
 独占資本の利潤をすべてのものの上に置く中西経団連会長や安倍首相の本心は、福島や沖縄を見るだけで明らかである。
 (原野人)

『週刊新社会』(2019年5月21日、28日)

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