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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

戦後70年の節目、時代の風向きの変容は格別だった(五木寛之)

2016年01月04日 | 平和憲法
 ◆ 「今さら戦前はないだろう」 五木寛之氏年頭特別寄稿 (日刊ゲンダイ)
 戦後70年という区切りが、ひときわ大きく話題になった一年だった。
 毎年のように時代の風向きが変った、と強調され続けてきた。しかし今年の変容は格別である
 この国はおおっぴらに戦争ができる国になったのだ。
 その動きに反対する市民のデモも変った。組織とか、動員とかと無関係の自然発生的な一般人のデモが誕生したのである。
 またピケティ・ブームと共に、格差の問題も注目を集めた。非正規勤労者が4割をこえ、さらに増加する方向へ時代は動いている。非正規社員というのは、非公式の失業者である。
 高齢者というのは、現役世代の競争者である。その二つの層が共存共栄することは不可能だ。世代間の対立は、今後ますます激化していかざるをえないだろう。さらに団塊の世代と呼ばれる巨大人口が、もうすぐ70代に達するのだ。
 情報社会といいながら、メディアはすでに上意下達の世界となった。

 今年は野球、サッカー、ゴルフなどが国民的関心をどこか失った年でもあった。
 それにかわってブームとなったラグビーやフィギュア・スケートも、個人スター選手の人気におぶさるところが大きい。東京オリンピックへの期待も、尻すぼみの感がある。
 国際政治の焦点は、ヨーロッパから中東に移った。『文明の衝突』のなかで、散々に叩かれたキリスト教文明とイスラム文明の対立の問題が、あらためてリアルな主題として再浮上しつつある。
 パリの無差別テロに対して、フランス大統領は「戦争」宣言をしたが、戦争はすでに自分たちが勝手に始めた事ではなかったか。
 現代の戦争とは、テロとドローンだ。自爆テロと、本国からのキーボード操作で行う人力対コンピューターの戦争である。すでに戦争は続行中である。
 戦前の空気と似ているなどと、呑気な事を言っている場合ではあるまい。20世紀になって、この世界に戦争が行われていなかった時代などないのである。
 明治初期の人口、3400万人。敗戦時が7200万。1970年代に1億を超えた日本国民の数は、今後ふたたび7000万人台へとゆるやかに下降していく。下山の時代は、すなわち経済低成長=文明高成熟の時代である。
 戦後70年。それは敗戦以来、ずっと隠されていたこの国の本質が、ようやく地上に露呈してきた一年といえるかもしれない。今さらなにをじたばたすることがあろうか。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月1日)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/172517
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