<声明>
★ 学問と教育の国家統制は「新しい戦前」への道
「大学法人化法」改悪と「学術会議」法人化に反対する!
許すな『日の丸・君が代』強制、止めよう!改憲・教育破壊 全国ネットワーク
(略称「ひのきみ全国ネット」)(連絡先:代表世話人・小野政美 gorillaono@gmail.com)
1.いま、「新しい戦時体制」構築のために、教育・学問・メディアなどへの執拗な攻撃と国家による管理統制が続いている。岸田政権による「安保3文書」閣議決定による「大軍拡」・「敵基地攻撃」は、沖縄・琉球弧などの軍事基地増強・日米韓などの共同軍事訓練を進め、自民族優越主義・民族排外主義に基づく画一的な価値観を植え付け、多様な個性と多様な価値観を認めず愛国心教育体制に突き進んでいる。
私たち、全国の教員・退職教員・保護者・市民による全国ネットワークである<許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう!安倍・菅政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク>は、学問と教育、メディアの国家統制は「新しい戦前」への道である。私たちは、「改悪大学法人化法」と「学術会議」法人化に反対することをここに宣言する。「教育・学問とメディアが戦争を準備する」。
2.2006年の第1次安倍内閣は、1947年教育基本法の前文の「民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする…理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」とした文言を「改正」で削除した。
2006年に成立した「改正教育基本法」で、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」とする教育目標が挿入され、その後の政府・文科省も愛国心教育・教育政策・教科書行政が進められていることに対して、私たちは粘り強く抗議の声を上げ続けてきた。
3.私たちは、東京と大阪など全国の学校の「卒業式・入学式」・「周年行事」の場などでの「日の丸・君が代」強制、「君が代」斉唱に不起立・不服従の教員への処分と「思想転向研修」に抗議の声を上げ続け、安倍・菅・岸田政権の改憲・教育破壊に対する活動を継続している。
私たちの改憲・教育破壊に対する活動は、
「日の丸・君が代」強制と処分、
新型コロナ下での一斉休校、
教育格差・不平等、
子どもと教員の個人情報の一元管理と監視・統制、
「オリパラ教育」という名の教育強制・子ども動員、
「天皇奉迎」行事への子ども動員、
教育勅語教育の是認、
学校教育の行政による集中管理、
教育の自立性を破棄する国家の統制支配とテスト主義・ICTのシステム化、
「日の丸・君が代」強制処分者の再任用拒否、
戦争肯定の「育鵬社」歴史公民教科書採択、
「大阪市チャレンジテスト」、
国連人権委員会への提起とセアートの勧告実現、
日本軍「慰安婦」授業への弾圧抗議、
「思想表現の自由」の侵害への抗議、
日本学術会議会員6名任命拒否」、
防衛省・地方自治体による自衛隊への個人情報の提供と法制化運動、
軍国主義教育、9条改憲・非常事態条項挿入などの改憲反対
など多岐にわたる。
また、私たちは、元菅義偉内閣総理大臣によって、「学者の国会」ともいわれる日本学術会議で長年守られてきた人事の独立が破られ、日本国憲法23条の「学問の自由」を蹂躙する日本学術会議会員の人事への政治的介入により、日本学術会議への6人の新会員の任命が拒否された。政府は拒否した理由を現在も明らかにしていないが、6人の中には、安全保障関連法や「共謀罪」を創設した改正組織犯罪処罰法を批判してきた学者が複数含まれている。私たちは、6人の学術会議新会員の任命拒否に抗議し、6人が任命されなかった理由を明らかにするとともに、6人の任命拒否の撤回と6人の任命を求める声明を2020年10月に発出し、現在も6人の学術会員の任命を求め続けている。
4.教育・学問は、戦前・戦中を通じて、天皇制にもとづく国民統治を最大限に機能させる手段として、一貫して権力の側に重視されてきた。戦後も、戦前からの連続性を巧みに利用して、国家主義・愛国心教育を強化する政策は揺らぐことはない。
第1次安部政権以来の「教育改革」は、子どもたちをアジア・太平洋戦争による侵略戦争と植民地支配の時代、明治憲法下の天皇制の時代へと誘うものである。国家主義的な教育は、国家や「公」なるものに対する個人の犠牲を強要し、美化し、個人主義を否定するものである。日本の戦前・戦中の教育は、国家が教育を全面支配し、学校は「教育勅語」に基づく教育により忠君愛国の精神で天皇のために命を捧げる「少国民」を育成する場として、子どもたちと人々を侵略戦争に動員する上で決定的な役割を果たした。
私たちは、教育・学問とメディアが戦争を準備すると考え、学問と教育の自由の保障を求める立場から何度でも訴える。「教え子を戦場に送るな!」
5.2023年12月13日、臨時国会において、「国立大学法人法の一部を改正する法律案」が自民党、公明党などの賛成多数で可決・成立した。
「改正案」には、大学教員や学生などから多くの反対の声が上がり、野党の一部反対し、国会審議中に、岸田文雄首相あてに4万筆を超える反対のオンライン署名も提出された。
「改正国立大学法人法」は、国際卓越研究大学における合議体を位置づけるという本来の法改正の趣旨から逸脱し、それ以外の大学に「運営方針会議」設置を義務付けるなど国立大学の運営に政府が介入し、国立大学法人にその組織・運営のあり方の重大な変更をもたらす新たな制度である。「運営方針会議」の委員選任は文部科学大臣の承認が必要とし政府の政治介入を企図するものである。
この法律の「改正」については、なぜ法改正が必要なのか、法律案はいつ誰が決めたのかも明らかにならないという法律案策定過程が民主的ではない欠陥をもつものである。
法案内容が明らかになったのが10月31日の閣議決定であり、大学の在り方を変えようとする重大な内容が関係者への説明や意見聴取が不十分であり、大学関係者をはじめ広く社会に周知されず、議論もされないまま、10月31日、「国立大学法人法の一部を改正する法律案」を国会に提出し、11月7日に文教科学委員会で法案説明、11月14日に参考人質疑が実施、11月15日に委員会採決が行われて1週間で衆議院を通過し、参院で採決され、12月13日にこの法律案が強行成立された。
この「改正国立大学法人法」は、大学の自治、自律性を破壊し大学のガバナンスを政府・産業界の統制下に置こうとするものである。これは、日本学術会議への執拗な改革要求と合わせ、日本の学問界(アカデミア)をコントロールするもので、日本の学術、日本社会の発展に大きな影響を及ぼすものである。
国立大学では、2004年の法人化、そして2014年の学校教育法改正などを経て、教育研究に携わる教職員、そして大学の真の受益者である学生や市民の声が大学運営に反映されない「トップダウン体制」が強化されてきた。
「改正国立大学法人法」は、大学教職員や学生・大学院生と関係のない外部の委員は文部科学大臣が承認する「運営方針会議」が強大な権限を持ち、大学の方針を決定していく、そして大学自治と自律的な改革を後退させるものである。
「大学の自治」は、教育と研究を実際に担っている大学教職員や学生・大学院生の力で歴史的に作り上げてきたものであり、今後も自律的に継続し発展させていかなければならないものである。私たちは、学問と教育の国家統制を強める「改正国立大学法人法」の強行成立に強く抗議するものである。
6.政府は、組織の見直しを検討している日本学術会議について、日本学術会議を政府から排除し独立法人化する動きが急速に進められている。
学術会議「改革」論の発端は2020年の菅義偉前首相による新会員候補6人の任命拒否であるが、岸田文雄首相に代わっても理由を明らかにしていない。任命拒否はいまだに撤回されず、政府、自民党は矛先を転じて学術会議への圧力を強めている。国の特別機関である現状を改め、切り離して法人化する方針を示した。
科学的な根拠に基づいて政府に助言・勧告を行う役割は変わらないとするが、会員選考と運営、活動評価に外部の有識者による委員会が関与する仕組みを導入する。一部のメンバーは担当大臣が任命するとしている。
現在は国費で運営している財政基盤は「多様化に努める」と含みを持たせた上で、政府は必要な支援を行うというが、独立させるとしながら、政府が運営や人事に介入できる枠組みとする狙いは明らかである。財政も不安定になりかねない。
岸田政権は2023年6月に「日本学術会議を国から独立した法人とする案等を俎上に載せて議論し、早期に結論を得る」と明記したいわゆる「骨太の方針2023」を閣議決定し、8月に12名からなる有識者懇談会を立ち上げた。
そして、日本学術会議の組織改編のために組織された内閣府の「有識者懇談会」は2023年8月から議論を続け、12月18日、学術会議を国から切り離して法人化するという中間報告案などを議論した。
9回目の今回、「法人化が望ましいとする懇談会の中間報告案」と、「内閣府による法人化の方針案」が提示された。いずれも学術会議の独立性・自律性のために現状の国の組織ではなくなり法人になることを想定している。
学術会議の総会に出席した内閣府の担当者の説明は、政府として法人化はもはや動かしがたい方針であることをうかがわせる口ぶりだった。政府からの独立が最も大事だと言うなら、なぜ国の機関であることにこだわるのか理解できないとまで語っている。
政府や自民党の主張は会員選考の「透明性」の確保である。「仲間内で決めており不公正」だとか、予算は政府が支出しているから「第三者機関が関与すべきだ」などと言うが、学術会議の役割は何か、なぜ独立性が必要なのかということへの理解が全くない。
学術会議は、組織を変更するとしても、活動や会員・会長選考の独立性と自律性の確保、安定した財政基盤の継続的な確保といった条件を満たす必要があるとして「法人化案」に懸念を示した。
2021年には、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を発表し、5要件を提示した。
(1)学術的に国を代表する機関としての地位
(2)そのための公的資格の付与
(3)国家財政支出による安定した財政基盤
(4)活動面での政府からの独立
(5)会員選考における自主性・独立性―
である。5項目の取り組みの一つとして「会員選考プロセスの透明性の向上」も掲げた。会員は「優れた研究または業績がある科学者」であることが前提である。
選考方法は、時代と共に変遷してきたが、当初は選挙だったが、研究者の少ない分野が代表されない弊害があった。学会による推薦制度では個別学会の利益代表となってしまい課題が生じた。
そこで現在は海外でも主流となっている方法をとり、会員や関係学会から推薦を受け、選考委員会、幹事会、総会を経て決定してきた。直近では105人の改選枠に約1300人の推薦があった。
また、透明性を向上させる取り組みとして
(1)次期の課題と必要な人材像を明確にした選考方針の公表
(2)その際に学会、大学、産業界、NPOなど第三者の意見を聞く
(3)選考過程、候補ごとの選考理由、業績、抱負の公表
などを示した。独立性を担保しながら透明性を向上させることは可能である。
私たちは、学術会議の方針を基に、オープンな場での協議を始めるべきであると考える。
日本学術会議は、人文・社会科学や生命科学、理工など国内約87万人の科学者を代表し、科学政策について政府に提言したり、科学の啓発活動をしたりするために1949年に設立された。「学者の国会」とも言われる。
210人の会員は非常勤特別職の国家公務員で任期は6年間。3年ごとに半数が交代する。
1954年には、原子力の平和利用について「自主、民主、公開」の原子力三原則を打ち出し、55年の原子力基本法に盛り込まれた。
軍事研究のあり方についても、「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない声明」を1950年と1967年に発表し、2017年にも、防衛装備庁が創設した研究助成制度をめぐり、軍事研究を禁じた過去2回の声明を継承するとの声明を発表した。
政府が「学術会議」改革を急ぐ理由は、表向きは助言機能の低下が理由だが、本音は軍事研究をめぐる動きである。
防衛省が2015年に大学に研究資金を出す制度を始めたのを契機に、学術会議は1年間の議論の末、2017年、日本の大学や学術研究機関に対して軍事研究への参加に慎重さを求める声明を公表した。国の軍事研究費は研究内容への介入の度合いが大きく学問の自由を損ないかねないのでよく議論して慎重に判断するよう求めた。
防衛省の制度への大学からの応募はその後、少ないまま推移したことから自民党議員らの間で学術会議の声明を批判する声が強まり、「米中対立」や「ロシアのウクライナ侵略」などを機に、「国際的な安全保障環境が急激に変わっている。日本の国防力向上に向けて軍・学が協力すべきだ」という主張が政府内で台頭する中で、学術会議の「体質」を変えたいと考える政治家にとって、学術会議を「改編」して会員選考の改革を行いたいというのが透かして見えてくる。
学術会議をめぐって今起きていることは、学問研究の世界に限らず、市民一人ひとりの自由や民主主義に深く関わる問題である。政府は学術会議側の異論を押し切って事を進めてはならない。
日本の科学者を内外に代表する組織である学術会議は、国の「特別の機関」に位置づけられ、政府からの独立と自律が法で保障されている。組織のあり方は本来、学術会議側が主体的に考えるべきことであって、政府から指図を受ける必要はない。
7.「学問の自由」の侵害が、言論や思想の苛烈な弾圧・統制につながったことを戦時下の歴史は教えている。
「滝川事件」とは、1933年、京都帝国大学法学部の瀧川幸辰教授がおこなった講演やその著書が自由主義的であるなどとして、当時の鳩山一郎文部大臣が滝川教授の休職を決定したことから始まった思想弾圧である。滝川教授の学説は
▽社会環境をよくしなければ、刑罰をいくら重くしても犯罪はなくならない
▽妻の姦通(かんつう=不倫)だけを犯罪にし、夫の姦通を不問にするのはおかしい
というごくまともな内容である。
この決定に対して、学問の自由や大学の自治を侵害などとして、1933年5月26日、首相官邸での閣議決定を経て滝川教授の休職が発令された。
その後、京大法学部教官は全員辞表を提出し、学生らも抵抗したが、覆ることはなく、6月に小西京大総長は辞任した。後任の総長が滝川を含めた6人の教授らの辞表を文部省に提出し、多くの教員が京大を去った。
また、「天皇機関説事件」(1935年)は、憲法学者の美濃部達吉の著書が発禁処分とされ公職も追放された。国家を法的に一つの法人とし、天皇はその最高機関として位置付ける天皇機関説は、政党政治に正当性を与える学説で、美濃部はその主な論者だった。「滝川事件」後、政府は学問への抑圧を強めた。
戦後は滝川事件などへの反省から、憲法23条で「学問の自由」が定められた。
なぜ、大日本帝国憲法にない「学問の自由」がなぜ日本国憲法に定められたのか。大日本帝国憲法(明治憲法)時代に起きた「滝川事件」(1933年)や「天皇機関説事件」(1935年)への反省があった。
現在の憲法23条「学問の自由」は、滝川事件や天皇機関説事件をなど、学問の自由ないしは学説の内容が、直接に国家権力によって侵害された歴史を踏まえて特に規定されたものである。学問研究や発表の自由に留まらず、自由な研究を実質的に裏付けする研究者の身分保障、さらに政治的干渉からの保護が「学問の自由」条項にはそのような意味がある。
日本国憲法制定当時の議論でも、1946年の衆院で新憲法担当大臣の金森徳次郎は、中国・始皇帝の焚書坑儒、ダーウィンの進化論、天動説・地動説の論争を採り上げて答弁している。
<公の権力を以て制限圧迫を加えない。各人正しいと思う道に従って学問をしていくことを、国家が権力を以て之を妨げないことです>。
金森氏自身が天皇機関説事件に巻き込まれた。当時、法制局長官だった金森氏大臣は帝国議会で「学問のことは政治の舞台で論じないのがよい」と答弁し、自著にも機関説の記述があったため帝国議会でつるし上げられ、1936年に退官に追い込まれた歴史があった。
8.「新しい戦時体制」構築のために、教育・学問・メディアなどへの執拗な攻撃と国家による管理統制が続いている。岸田政権による「安保3文書」閣議決定による「大軍拡」・「敵基地攻撃」は、沖縄・琉球弧などの軍事基地増強・日米韓などの共同軍事訓練を進め、自民族優越主義・民族排外主義に基づく画一的な価値観を植え付け、多様な個性と多様な価値観を認めず愛国心教育体制に突き進んでいる。
今年、2023年は、「学徒出陣」80年である。
「アジア・太平洋戦争」終局の1943年(「昭和」18年)に兵力不足を補うため、高等教育機関に在籍する20歳(1944年10月以降は19歳)以上の文科系〈および農学部農業経済学科などの一部の理系学部の〉学生を在学途中で徴兵し出征させた。
日本国内の学生だけでなく、当時日本の統治・占領下の台湾や朝鮮、「満洲国」や日本軍占領地、日系二世の学生も対象にされた。
1943年(昭和18年)10月21日、東京の明治神宮外苑競技場で「出陣学徒壮行会」が文部省主催、陸海軍省等の後援で実施され、全国各地の77大学などでも「出陣学徒壮行会」が行われた。
その後、全国で、「徴兵検査」が行われ、1943年(昭和18年)12月1日、陸軍へ入営し、12月9日・10日に海軍へ入営した。「学徒出陣」80年のいま、その意味を考えることが重要である。
私たち、全国の教員・退職教員・保護者・市民による全国ネットワークである<許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう!安倍・菅政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク>は、学問と教育、メディアの国家統制は「新しい戦前」への道であることを訴え、日本国憲法で保障された「学問の自由」・「大学の自治」を侵害する「改正大学法人化法」と「学術会議」法人化に反対することをここに宣言する。
「教育・学問とメディアが戦争を準備する」。
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