たんぽぽ舎です。【TMM:No4808】【TMM:No4809】「メディア改革」連載第130回
★ グロッシ氏事務局長は原子力マフィアの首領
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◎ 国際原子力機関(IAEA)によるチェルノブイリ原発事故の影響調査、ウクライナ戦争での原発をめぐる攻防に関する姿勢などを見てきた私は、IAEAは科学的、中立的な国際機関などではなく、原発産業を推進する胡散臭い組織だと思ってきた。
7月4日朝、来日したラファエル・グロッシIAEA事務局長は、日本政府が東京電力福島第一原子力発電所の敷地内に貯まり続ける放射能汚染水を海洋放出する計画に何の問題もないと説得している。
5日午後には首相官邸で「放出は国際基準に合致」との包括報告書を岸田文雄首相へ手渡した。
IAEAはまさに「原子力マフィアの総元締め」(小出裕章・元京都大学原子力研究所助教)だと確信した。
◎ 日本のメディアはIAEAを「核の番人」と呼び、「科学的な調査を実施した」と報じているが。IAEAは「原子力マフィア」の用心棒、日本の自民・公明野合政権の宣伝広報官ではないか。
IAEAは、菅義偉政権が2021年4月、関係閣僚会議で、海洋放出する方針を突然決めた後、日本政府の依頼を受け、去年からアメリカや中国、韓国など11か国の専門家が参加する調査団を日本に派遣。放出方法の妥当性や、東電や原子力規制委員会の対応の適格性などを検証していた。
グロッシ氏は岸田氏との面談前、林芳正外相と会談した後の共同記者会見で、「福島原発をめぐって重要な局面を迎えている。本日午後、報告書を提出することができ、光栄に思う」と述べていた。
★ 海洋放出で“水の惑星”地球の敵になる日本
◎ グロッシ氏は岸田氏との面談後に日本記者クラブで会見し、「人体や環境に与える影響は無視できる程度」「水や魚など環境に大きな影響はない」と断言した。
海洋放出以外の選択肢はないのかと記者から尋ねられると、「一定量の放射性物質を含む水を薄めて放出することは中国や韓国、米国、フランスなど多くの国々で行われている」と説明。
数十年の放出期間の安全性をどう保証するのかという質問には、「第一原発内にIAEAの事務所を設置し、そこに居続けてレビューを継続する」と答えた。
グロッシ氏は5日、福島県いわき市で開かれた廃炉と処理水対策の評議会に出席。放出に反対している福島県漁協組合連合会の野崎哲会長ら一人一人と握手を交わして回った。
「最も大切なのは、皆さんの声を聞くこと。皆さんの考え方、疑問や懸念に耳を傾けることだ。我々は皆さんとともに、この先何十年もここに居続ける。処理水の最後の一滴が安全に放出されるまで」。その後、福島第一原発の汚染水処理施設を視察した。
[福島中央テレビ]
https://news.yahoo.co.jp/articles/161e174f894089860ed5632aa9b7caea422a1f80
◎ 政府と東電の計画でも海流放出は早くても30年はかかると言われる。グロッシ氏が生きている間に終わるのか。グロッシ氏は7日から9日まで韓国を訪問する。韓国ではIAEA批判の行動があるのではないか。
その後、ニュージーランド、クック諸島の3カ国を訪問する。日本政府と東電の工作員だ。
IAEA報告書は「処理水の放出は日本政府が決定することであり、この報告書はその方針を推奨するものでも承認するものでもない」と強調している。グロッシ氏は、汚染水の放出決定は日本政府と東電が行うものだと逃げをうっている。
そうであるなら、なぜ、「報告書は、日本が次のステージに進む決断を下すのに必要な要素がすべて含まれている」「人体や環境に与える影響は無視できる」などと無責任なことを言うのか。
◎ 公明党の山口那津男代表は2日、福島市で記者団に、「海水浴シーズンなどは避けた方がいいのではないか。いたずらに不安を招かないようにすべきであり、考慮していただきたい」と述べ、政府は慎重に放出時期を判断すべきだという考えを示した。
海水浴シーズンが終わっても、不安は消えないのではないか。薄めているから安全だというなら、中国や韓国の人たちが言うように、工業用水などに使えばいい。麻生太郎自民党副総裁は「飲める」と言うのだから、自民党本部の食堂、麻生事務所で飲用に使えばいい。薄めるのは、汚染水がそもそも危険だからではないか。
★ 御用メディアは「中国・韓国と漁協だけ反発」と捏造
◎ メディアはIAEAの報告書が、海洋放出に「お墨付き」を与え、政府と東電は「後ろ盾を得た」と強調した。松野官房長官は5日の会見で、「春、夏ごろに開始という決定に変更はない」と述べ、日経新聞は「8月に開始か」と報じた。
日本のテレビ・新聞は、「安全性が評価されたことで、政府が夏ごろとしている放出開始に向けて準備は最終段階に入る。反発している国内の漁業関係者、中国、韓国などへの説明が課題」(5日朝のNHKニュース)
「『夏ごろ』としている政府の具体的な放出時期の判断に注目が集まる」(毎日新聞)
「既に関連設備の工事は完了し、原子力規制委員会による使用前の検査にも近く合格が出る見通し」(読売新聞)などと報じた。
★ 太平洋諸国フォーラムが6月30日に海洋放出反対の声明
◎ 岸田氏は5月7日から8日に韓国を訪問した際、尹錫悦大統領との会談で、韓国の専門家らによる視察団の現地への派遣に合意。韓国の視察団は5月21日から25日まで来日し、福島原発を訪問し、汚染水を浄化する設備(ALPS)や、「処理水」を保管するタンクなどを確認した。
日本の報道各社は、政府に従って「処理水」(Treated Water)という用語を使っているが、尹氏は首脳会談でも従来通り「汚染水」(Contaminated Water)と表現。
韓国の政府・メディアは今も「汚染水」(最近、政権党内で「汚染処理水」と呼び始めた議員もいる)と表現している。
◎ 韓国では、市民・労働者・政権反対党政治家らが連日、ハンストなど様々な反対運動を展開している。共同通信によると、安全性への懸念の高まりから、塩の買いだめをする人や水産物の購入を控える人が続出している。
韓国政府は不安感の払拭に躍起で、6月15日から処理水に関する記者会見を平日は連日行い、日本の意向に沿って、「科学的、客観的に安全」と宣伝している。
しかし、世論調査会社「韓国ギャラップ」が30日発表した調査結果によると、海洋汚染が「心配だ」と回答した人が78%に上った。
6月26日の朝鮮新報のコラム「春・夏・秋・冬」でも紹介されたが、韓国のネットメディア「市民言論ザ探査」は6月21日に公開した動画で、「日本外務省幹部A」がアジア開発銀行(ABD)総裁と見られる浅川という人物の質問に答える形式の非公開対話の録音を文字化した。
IAEAが日本政府の要求通りに動き、その中の重要人物(複数)に少なくとも100万ユーロ以上「政治献金(賄賂)」を渡したと告発している。日本外務省は事実ではないと反論した。
本メルマガで詳しく伝えられているように、太平洋諸国フォーラムが6月30日に海洋放出反対の声明を出している。「中国、韓国と日本の漁協関係者だけが反対している」とするメディア報道は犯罪的だ。
★ 「福島原発に溜まっている水はれっきとした放射能汚染水」小出裕章氏
◎ 私は4日、朝鮮新報の「沈黙の声」の連載に汚染水放出について記事を書くため小出裕章氏に取材した。小出氏からすぐにメールで回答があり、回答の内容は7月10日付での拙稿に掲載する。
私のブログでも載せる予定だ。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/31904449.html
小出氏は今年1月に福島県三春町での講演で、汚染水放出について語っている。武藤類子氏の司会。その時の動画を以下のURLで視聴できる。
https://www.youtube.com/watch?v=rrXxlQuR8io
◎ 小出氏は5月と6月に、中国中央テレビと韓国KBSの取材を受け、韓国も中国も原発を止めるべきだと強調した。KBSの取材には、「福島原発に溜まっている水はれっきとした放射能汚染水」「地球は水の惑星。放射能汚染水を海に流してはいけない」と指摘してこう述べた。
「日本では原発の使用済み燃料はすべて再処理すると決められている。福島原発が事故を起こさなければ、使用済み燃料になった段階で再処理工場へ送られる予定だった。再処理とは使用済み燃料を高温の濃硝酸に溶かして、プルトニウムを分離する作業である。その過程でトリチウムは全量が水に移り、環境に放出される。六ヶ所村に計画されている再処理工場がもし運転を始めれば、1年間に800トンの使用済み燃料を処理し、毎年18ペタベクレルのトリチウムを環境に放出することで原子力が成り立っている」
「もし、福島のトリチウムを海に流してはいけないということになれば、再処理工場の運転もできなくなり、日本の原子力は崩壊する。そのため、漁民がどんなに反対しようが、世界の国がどんなに抗議しようが、日本というこの国は放射能汚染水を海に流す。(もちろん、私がそれを是としているわけではない。)」
「福島の汚染水の問題は、今それが安全か否か(被曝に安全などないが…)ではなく、それは日本の原子力の死活問題に関わっているということだ。今、福島の汚染水の海への放出を許し、原子力を延命させてしまうなら、将来もっと大量のトリチウムが海に流されることになる。それを防ぐためにも、福島にある汚染水を海に流させないようにしたい」
◎ 小出氏の説明で、政府と電力資本が、六ヶ所村再処理工場のために、海洋放出にこだわることがわかる。
福島のトリチウムを海に流してはいけないということになれば、再処理工場の運転もできなくなり、日本の原子力は崩壊するというのだ。
私たちの力で、原発をすべて廃炉にしない限り、放射能汚染水を海に流すことを止められない。
民意を無視して原発政策を大転換している自民・公明野合政権を殲滅(せんめつ)し、反原発の民主的政府をつくろう。
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