パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 台湾有事と沖縄の戦場化

2025年03月07日 | 平和憲法

  《百万人署名運動全国通信から》
 ☆ 「台湾有事は日本有事で日米同盟有事」か!戦争するな!

新垣卓也さん(「沖縄タイムス」記者)

 2024年11月25日付の『沖縄タイムス』の各面の見出しは台湾有事と対中作戦の危機を伝えるものでした(写真)。共同通信の石井暁編集委員が「沖タイ」に執筆する形で、「台湾有事と米日による対中国攻撃作戦は南西諸島とフィリピンの二正面て軍事拠点を設けて行うことか明らかになった」と報しました。『沖縄タイムス』記者の新垣卓也さんに、台湾有事と沖縄の戦場化について話していただきました。新垣さんは33歳てす。(文責事務局)

 ☆ 「台湾有事は日本有事」とは

  「台湾有事」は比較的最近使われ始めた言葉で、有事とは武力攻撃事態など、戦争ということてす。つまり台湾有事とは台湾か戦争やその前段階にあることだと理解できると思います。なせ台湾有事か起こるかというと、基本的に台湾は中国の領土の不可分の一部で、中国政府は統一を望んているという認識が大前提としてあるわけです。

 2021年頃から、中国の習近平国家首席が一つの中国を押し出して2027年にも統一するんたと、言ったということか流布されてきていますが、習近平氏のそうした発言が明示されているわけではないようてす。
 この問題がクローズアップされ始めたのは、米インド太平洋軍のデービットソン司令官が、2021年3月に上院軍事委員会の公聴会て「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言した頃からです。
 麻生太郎副総理(当時)は、2021年7月の講演でシーレーンを一例として「台湾海峡は石油に限らず日本の多くの輸出入物資か通る」とし、台湾有事を念頭に「日本にとって(安全保障関連法の)存立危機事態に関係してくると言ってもおかしくない」との見解を示しました。
 中東からの石油なとは台湾付近を通って日本の港に人る。中国が武力を用いて台湾を攻撃するとなった場合に、艦艇なとか配備されたりして台湾付近の海上は封鎖される。すると日本に重要な物資か届かなくなってしまうので、それは日本の国の存立にも重要な影響を及ぼす。存立危機事態と認定されれば、日米で防衛しないといけないという見方か示された形と言えます。

 2021年12月には安倍元首相「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と言って、台湾有事に備えるために日本はどうしたらいいかということが政府・与党内で叫ばれ始めていった流れがあります。
 そういうふうに中国による台湾の武力統一の戦争に、必然的に日本も「巻き込まれてしまう」という認識がどんどん広がり、台湾で有事が起きたときに日本としてどう備えるのかという議論が盛んになって、そのタイミングで2022年末には岸田政権によって安保関連3文書の改定が行われたわけです。

 台湾有事が本当に起きるのかどうかということではいろんな意見があって、例えば日本政府内でも起きると言う人も、起きないけど備えは必要だよと言う人もいます。
 アメリカと中国は核兵器を持つ世界の二大軍事大国ですから、戦争が避けられなければ、核戦争に発展してしまう危険性もあり、米国にとっては自国も危うくなる可能性もあるため、米国も本当は有事に発展させたくないだろうという見方もあります。1月20日にトランプ政権が発足し、今後世界情勢がどうなるか、米中関係はどうなるかということも非常に重要なわけです。
 米国政府の主要ポストに対中国強硬派が配置されるということですし、米海軍の『航海計画2024』は「2027年までに戦争になる可能性」が明記されるなど、日米は「台湾有事」を念頭に置いて様々な戦争準備を進めている状況です。

 ☆ どんな戦争準備がされているか

 2015年に安保関連法制が作られて、そこで集団的自衛権の行使ができるようになったんですけど、これは日本の歴史の中で非常に大きなターニング・ポイントだったと思います。
 それに基づいて2022年に安保3文書の改定が行われ、敵基地攻撃能力の保有が打ち出され、弾道ミサイルの基地など敵国の基地や拠点などを攻撃する態勢の整備が進められています。
 南西諸島の島々に自衛隊の基地が建設されてミサイル部隊が配備され、弾薬庫等々も作られているわけです。
 スタンド・オフ防衛能力の強化のために巡航ミサイルのトマホークを導入したり、射程が1000km以上もあるような国産ミサイルを開発したり、今までとは次元の違う軍事力の強化を進めているわけですね。
 沖縄は台湾に近いし、在日米軍基地が集中していて、中国側が脅威に感じている場所で、極東最大と言われる嘉手納空軍基地には、今後数年かけて最新鋭のF15EX戦闘機を配備する計画です。
 また、海兵隊は新たに沖縄で沿岸連隊(MLR)を発足させました(23/11)が、これは島々に設けた前線拠点から地対艦ミサイルや地対空ミサイルで敵を迎え撃ち、反撃される前に別の島々に転戦するという対中国のエアボ前方基地作戦(EABO)に基づいています。
 南西諸島で中国軍の侵攻を食い止めて米軍の拠点のグアムやハワイへの攻撃を阻止する構想です。

 日米共同訓練では、2024年2月の図上訓練「キーン・エッジ24」で初めて「中国」を敵国と名指しし、それまで使用していたデフォルメした地図ではなく本物の地図を使ったと報じられています。
 そして10~11月の「キーン・ソード25」では、2022年に海上自衛隊が初めて導入した油槽船(呉基地配備)を石垣島の港に入港させて、民間の石油会社のタンクに接続できるかどうかを調べる訓練を初めて行っているんです。

 「特定利用空港・港湾」に指定された民間の空港・港湾では、自衛隊や海上保安庁の航空機や艦船が使えるように滑走路を整備したり水深を深くしたりする取り組みが始まっています。
 民間の特定利用空港での戦闘機の滑走訓練は、滑走路を点検すること、パイロットをその空港での離着陸に習熟させることも目的としていて、戦争準備そのものとも言えます。
 継戦能力を高めるために実戦を想定した訓練が行われているという印象を私は受けています。
 九州などに大型の弾薬庫を作ろうとしているのも、長く戦いを続けるための「継戦能力」を確保する目的で、そこにスタンド・オフ・ミサイルが配備される可能性もあります。
 沖縄だけじゃなくて日本中いたるところ、そういう戦争の準備が進められているんです。

 ☆ 住民避難の訓練も戦争準備

 仮に日本が「戦争に巻き込まれる」場合、「重要影響事態」、「存立危機事態(同予測事態)」、「武力攻撃事態(同予測事態)」といった事態認定を経ることになっていて、法制上は原則、国会で事前に承認しなければいけません。
 ただ、国会でも何度も議論になったように、「事態」認定の線引きは非常に難しいわけです。

 戦争から国民を守る「住民避難」国民保護法に基づいて行われますが、事態認定がされてからでないと具体的に避難に取り掛かれません。
 つまり事態認定のための根拠をそろえないといけないわけで、実際に事前の避難をしっかり実行することは困難だという意見も多くあります。
 防衛省の『国民保護計画』には、武力攻撃そのものの排除が自衛隊の主任務であり、支障のない範囲で可能な限り国民保護を実行すると書かれているんです。
 部隊を遠くに運んで展開させる輸送艦などの整備は国民保護、住民避難にも転用できるよねというのが建前ですが、実際には住民保護には手が回らないだろう、結局、住民は守られない可能性が高いという見方も多いです。

 また、安保3文書の『国家安全保障戦略』では「武力攻撃より十分に先だって南西地域を含む住民の迅速な避難を実現」、「避難施設の確保」の取り組みとしてシェルターについて書かれていて、政府は離島でのシェルターの整備方針を決めました。
 2022年にペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問したとき、中国が発射したミサイルが与那国島の近く80kmぐらいのところに着弾したことがあり、住民は大変な危機感を持っています。

 実際に「台湾有事」となったとき、沖縄県民の生命、財産をしっかり守るためにどうしていくかという議論は重要だと思っていますが、沖縄からの避難の手段は船舶や航空機に限られていて、図上訓練では先島諸島の12万人を空路で九州と山口県に運ぶのに6日間かかるという見通しが出ています。
 本当に12万人を安全に避難させられるのか、沖縄本島の約140万人の住民避難、国民保護はどう実現するのか、大変な危険にさらされるのではないかと多くの疑問を抱きます。県民の生命と財産を守るためには、二度と戦争を起こさせないということ以外ないと思います。

 ☆ 日米同盟関係の強化

 「台湾有事は日米同盟の有事」という安倍元首相の発言には、日本は集団的自衛権の行使も敵基地攻撃も米国と一体でやっていくという意志が如実にあらわれていると思います。
 在日米軍の司令部は横田基地にありますが、いわゆる行政的な権限しか持っておらず、部隊運用の指揮権はハワイにある米インド太平洋軍(太平洋陸軍、太平洋海兵隊、海軍太平洋艦隊、太平洋空軍およびインド太平洋宇宙軍)の司令官が持っています。

 ハワイと日本では時差も距離もあって意思疎通が大変で、有事にはそれがネックになるということで米軍は横田基地にある在日米軍司令部を「統合軍司令部」に改称・再編して、部隊の作戦の立案や履行の指揮権を持たせるようにしました。
 インド太平洋軍のパパロ司令官(2024.5.3~)は、その再編について「在日米軍の発足以来最も重大な変革で、過去70年の軍事協力で最も力強いもの」と言っています。
 日本も、2024年度中に陸海空3自衛隊を一元指揮する「統合作戦司令部」を新しく市ケ谷の防衛省に作ります。日米同盟の深化などがうたわれますが、事実上、自衛隊が米軍の指揮下に置かれるのではないかとの懸念もあります。
 さらに、『星条旗新聞』(「スターズ&ストライプス」)によれば、在日米軍の「統合軍司令部」を横田から六本木の赤坂プレスセンターに移転させる案が検討されているということです。六本木と市ケ谷は近いので、軍事的合理性からそうしようとしているのだと思いますが、東京都はずっとその土地の返還を求めてきているので、まだどうなるかはわかりません。

 ☆ 2027年の戦争開始を止める

 日米同盟による台湾有事への準備は、中国側から見れば中国包囲網の強化でもあり、脅威として捉えているかもしれません。
 実際に中国が武力による台湾統一に踏み切るかどうかには、いろんな要素が関係してくると思います。
 内政が混乱して中国共産党の体制を維持するには台湾を統一するしかないと判断すれば、なりふり構わず侵攻することもあり得るし、トランプ政権の対中国政策が引き金になる可能性もあるかもしれません。

 戦争は始まったらなかなか止められませんから、始まる前に止めないといけない。どうしたら止められるか。私も答えが出せていませんが、日本では沖縄以外の人たちは戦争に「巻き込まれる」という感覚が薄いのではないかと感じています。だから皆さんに一度立ち止まって考えてもらいたいのです。
 台湾が近い、尖閣列島が近い離島の人々とは意識の温度差もあると思います。本土と遠く離れ、陸続きではない離島には生活の大変さもあります。自衛隊基地ができ、防衛体制強化に対する懸念を持っていてもあきらめ感につながってしまっている側面もあるかもしれません。

 『沖縄タイムス』は1月1日号に赤嶺由紀子編集局長の「二度と戦争起こさない」、「鉄の暴風吹かせない」という主張を出しました。
 当社が1950年に出版した『鉄の暴風』は『沖縄タイムス』の魂の原点であり、戦後80年たった今なお戦後処理も終らない沖縄で「新たな戦前」を迎えるわけにはいかないと主張しています。

 沖縄では、私のような若い世代でも祖父母や親戚が沖縄戦を体験したり、身内を亡くしたりていますし、学校で沖縄戦について学ぶ機会が必ずあります。私も沖縄戦の取材を担当してきましたが、一人でも多くの人々の証言を聞き集めることは本当に大事だと思います。
 沖縄を二度と戦場にするなというのは、私の切なる願いでもあります。

『百万人署名運動全国通信』(2025年2月1日)

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
« ☆ レイバーネット2月川柳句... | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

平和憲法」カテゴリの最新記事