《立川テント村通信から》
☆ 小中学校にもなりふり構わず食い込む自衛隊
●岸田前政権で「軍事費倍増」が決まったが、肝心の「人」がいないのが自衛隊である。「24万自衛隊」の定員割れは慢性化し、昨年度の募集目標人数の連成率はわずか50%で過去最低。
今回は、「人手不足」解消の取り組みを中心に『朝雲』紙を追う。
●石破政権は自衛官の給料大幅アップに取り組むという。具体的には、①若い自衛官に年間20万円の給付金、②定年引上げと再就職あっせんの警察・消防などへの拡大、③28年度からの俸給表アップ、④8つの手当新設、既存25手当の賃上げ、⑤個室化、私物スマホのための回線確保…などなど。どうなるか(1/9)
★「金がマジでない!崇高な理由の志願じゃありません」という衝撃的な書き出しの投稿。投稿したのは、即応予備自衛官(有事の際に動員される予備役兵)についた41歳の女性。即応予備自は、年間30日の訓練と招集対応が求められ、代わりに年60万円程度が支給される。
3人の子どもがいて、昼は宝くじ売り場、夜は飲み屋でのバイト。家のローンがやばくなり、即応予備自へ応募。年60万円はもちろん切実だ。しかし『朝雲』紙に隊員のこんな露骨な「カネのため」の記事が載ることはかなり異例。人材不足解消に向けて本気度の現われ?(11/28)
●小中学校にもなりふり構わず食い込む自衛隊。投稿欄に「楽しい自衛隊のキヤンプ」(小学6年生)、「楽しかった自衛隊のイベント」(小学5年生)など写真付きの感想文が並ぶ。駐屯地での子供同けキャンプでは、ローブ渡り、体験搭乗、負傷兵の運搬体験。夜はカレーを食べ、花火に肝試し。女子は集まって、女性隊員が盛り上げるお話会・・・。中学2年生の職場体験は、教師がレポート。「ピシっと背筋を伸ばす凛々しい生徒たちの姿は本当に素敵だった」とのこと。さもしい(12/5等)
●そんな「奮闘」横目に?防衛官僚が書くコラム「朝雲寸言」はかなり悲観的。長めに引用しよう。「わが国総人ロは2050年までに1億人を下回り、外国に依存できない人的防衛力への影響は深刻…航空機もミサイルも買えるが、国を守る人材はその国で生を受けた若者しか担えない」まさに正論だ。では対策は、といえぱ「採用年齢見直しや女性自衛官の職域拡大などの人材確保策は限界を迎えつつある…」と無策を正直に告白。
嘆くなら小さくなるこの国の現実に合わせた、ダウンサイジングした防衛力を構想するのが君達の仕事だろう、と言いたくなる。大日本帝国の亡霊、ここにもか(11/28)
●世界の軍需企業のトップ100に日本企薬が初めて5社ランクイン(2023年度)。トップは世界39位の三菱重。以下65位の川崎重、71位富士通、91位NEC、96位三菱電機と続く。大軍拡による軍需拡大は顕著で、5社計で売上高前年度比35%増というぼろ儲けである。24年度はさらにランクアップは必至。
しかし世界全体の軍需産業でみると、若干の構造変化がある模様。実は世界トップシエアのロッキード・マーチン、2位のRTXはわずかに売り上げを落としている。
統計を発表したストックホルム国際平和研究所の分析によれば、「サブライチェーンの混乱により、メガ軍需企業は対応の小回りがきかず、代わりに中小規模生産者が効率的に需要に応じた」ということらしい。ドローン戦などの戦術の変化も影響しているか。
重厚長大で高価な米ハイテク軍需企業が敬遠され、グローバルサウスの武器需要に規制緩和された日本の軍需産業が応えていく…。こんな絵を描いている人たちもいるのかもしれない(12/26)
●防衛研究所の専門家によるトランプ新政権をめぐる座談会は読み応えがあった。自衛隊を代表する頭脳集団による世界情勢把握である。ざっと見てみよう。
「①トランプは、対中国の大国間競争に資源を集中する、②トランプ政権は米国の国際的威信を低下させる。中国は対抗的にグローバルサウスや米国の同盟国との関係強化をはかる、③中東は対イランに集中のサウジとイスラエルの関係改善を優先するためにガザ戦を落ち着かせる可能性もある、④トランプが中国に想定以上の繁張を生むと、日本は難しい立場に置かれる。日中関係の決定的悪化は国益にマイナス」
総じて「正しい米国」についていく日本の戦略が岐路にある、という認識か(1/16)
『立川テント村通信 564号』(2025年2月1日)
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