=たんぽぽ舎です。【TMM:No4378】「メディア改革」連載第86回=
◆ 「日本は民主主義国か」を問う報道を
◎ 岸田文雄首相は12月21日、首相就任後初の本格論戦となった臨時国会(たった16日間)閉会を受けて記者会見し、冒頭発言で、「来年、新しい資本主義の実現などに向けた重要法案の成立に向けて力の限り尽くし、積極的に首脳外交を推し進める一年にしたい」と表明した。
岸田氏は「アベノマスク」の在庫に関し、「希望者に配布した上で、年度内をめどに廃棄するよう指示した」と表明した。
また、「国会では、私が首相になってから初めて憲法審査会(16日)が開催された。国会において憲法改正の議論が始まったことを歓迎する」と壊憲に意欲を見せた。
岸田首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(記者会常勤幹事社19社の持ち回り)が代表して質問。
その後、司会の四方敬之内閣広報官が挙手した記者を指名し、幹事社を含め計14人が質問した。
挙手する記者はまだ残っていたが、1時間11分で打ち切られた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/150305
◎ 記者の質問は、コロナ対策、10万円給付、訪米の予定、北京五輪への対応などで、日本学術会議問題、自民党のダミー会社の収納センター(岸田氏も元役員)と取引のあるワンズクエスト所有のアカウント「Dappi」による情報操作、岸田氏や斎藤鉄夫国交相(広島3区)の応援演説での日当支払い事件について誰も聞かなかった。
今年最後となった会見も緊張関係はなかった。
朝日新聞の池尻記者が「森友改ざん問題で、近畿財務局元職員の赤木(俊夫)さんの家族が起こした損害賠償訴訟で、国は一転して(認諾で)賠償責任を認めた。家族の願いは真相究明にあり、御家族の中には落胆の声が上がっている。首相自ら対応する考えは。国交省の書き換えの問題のように第三者委員会を立ち上げるなどの対応をとるか」と質問したのはよかった。
◎ しかし、岸田氏は「14日の日に私自身、財務省から報告を受け、全面的に損害賠償責任を認めるということを承知した。別に、情報公開に関する訴訟が係属中で丁寧に対応すること、様々な場で真摯に説明を尽くすことを指示した。私自身も真摯に向き合う」と述べたが、再調査などの具体策は示さなかった。
岸田首相は就任以来、4回会見を開いたが、会見の進め方は安倍晋三・菅義偉政権時代と全く変わらない。
元外務官僚の四方広報官の司会で、1時間前後で強制的に終わらせる。
会見は昨年4月の緊急事態宣言発令を機に、参加記者を29人(制限前は約130人)に縮小している。
主催の内閣記者会(正式名・永田クラブ)は記者席の拡大を申し入れているが、官邸側は拒否している。
記者会見のあり方をめぐる、記者会と政府(官邸報道室)とのやりとりが、市民(読者・視聴者)に十分伝わっていないのは異常だ。
内閣記者会は日本にしかないキシャクラブの中でも最も影響力がある。
内閣記者会は常勤幹事社19社が事実上、運営している。
キシャクラブが今のままでは、日本の民主化は進まない。
◆ 国連を無視し歴史改ざん・死刑執行・外国人差別を続行
外国の「人権」状況を批判する資格なし
◎ 岸田氏は会見で、バイデン米大統領が9・10日にオンライン形式で開いた民主主義サミットに参加したことに触れ、「自由で開かれたインド太平洋」実現を目指すと強調した。
政府が北京冬季五輪への対応で、政府関係者の派遣を見送る一方、東京五輪関係者らを送ることを決めたことについて、岸田氏は24日、「自由、基本的人権の尊重、法の支配、こうした普遍的価値が中国でも保障されることが重要だ」と強調した。
◎ 岸田氏は日本が人権を守る民主主義国と思い込んでいるが、果たして日本は「民主主義国」と言えるだろうかと思った。
国連(連合国)憲章は二次世界大戦で全体主義国だった日本、ドイツなどを今も「敵国」と見なしている。
ところが、安倍政権以降、国連が度々、謝罪と補償を勧告している日本軍性奴隷(慰安婦)、強制連行などの事実を否定するなど歴史改竄を続けている。
法務省入管当局者がスリランカ人女性を虐殺しても、誰も処罰されていない。
安倍昭恵氏が名誉校長をしていた安倍記念小學院への国有地売却に関する公文書を改竄した公務員が自死しても、誰も罪に問われない。
「私、妻(昭恵氏)、事務所が関わっていれば総理も議員も辞める」(2017年2月17日)と啖呵を切った安倍氏がキングメーカーを気取っている。
◎ 東京都武蔵野市議会の本会議が12月21日に開かれ、外国人住民も参加できるかたちの住民投票条例案を、反対多数で否決した。
条例案は、自民党の極右議員らが「8万人の中国人を日本国内から転居させる事も可能。行政や議会も選挙で牛耳られる」(佐藤正久・参院議員)などと反対していた。
約20年前、公明党が自民党と連立政権を組んだ時、外国人参政権導入の合意があった。公明党は一貫して、外国人の地方参政権を公約にしてきたのに、自民党に忖度した。本会議当日、市と議会側が警視庁に警備を要請するなど、厳戒態勢での採決となった。
◆ 「人権」重視の岸田政権はメディアのデマ
◎ 岸田氏が会見した12月21日の朝、東京、大阪両拘置所で確定死刑囚3人が国家によって殺された。
欧州など死刑制度を廃止した国が野蛮と見る死刑の執行は2年ぶり。
1人は中国人の元専門学生。再審請求中の人もいた。殺された死刑囚の弁護人たちは死刑執行に抗議し、日本弁護士連合会も抗議の会長声明を出した。
大阪拘置所前では、市民たちが死刑執行に抗議したが、拘置所職員と警察官が集会を妨害した。
12月22日の朝日新聞は「海外では廃止の流れ」という見出しでサイド記事を載せたが、「先進国で日本だけ」とすべきだ。
https://www.asahi.com/articles/ASPDP3QMRPDPUTIL00J.html
死刑を実質廃止した国は140を超え、存置する55カ国でも実際に執行しているのは中東、東アジアなど毎年20カ国程度しかない。
OECDでは日本だけ。
「Hoppoken」特集の「北欧にはなぜ死刑がないのか?」が参考になる。
https://www.hiecc.or.jp/archive/archive_05_08.pdf
◎ 日本は民主主義国家かを問う前に、「独立国」と言えるのかを議論した方がいい。敗戦から76年4カ月経つのに、今も米軍基地が各地にあり、5万人を超える米兵、軍属が駐留する。
外交・防衛は米国に隷従だ。
沖縄では米軍基地にコロナ感染クラスターが発生し、感染者は数百人に上っている。米兵は入管、検疫を経ずに、日本に入っている。
政府は12月21日、22年度以降の5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を年平均約2110億円で米側と合意したと発表した。新たに米軍と自衛隊が共同訓練で使う資機材費用を負担する「訓練資機材調達費」を新設。負担の通称を「同盟強靱(きょうじん)化予算」とすることも明らかにした。
◎ 国政選挙に半数が棄権し、自治体選挙では投票率は20%代が普通で、日本の民主制は機能していない。
経済力は衰退を続け、「先進国」と言えるかどうかも怪しい。
外国から見たら日本が独立した民主主義国か疑わしい。
メディア(報道)とアカデミズム(大学)が権力監視を怠っているからだ。
国際標準のジャーナリズムの創成が急務だ。
◆ 「日本は民主主義国か」を問う報道を
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◎ 岸田文雄首相は12月21日、首相就任後初の本格論戦となった臨時国会(たった16日間)閉会を受けて記者会見し、冒頭発言で、「来年、新しい資本主義の実現などに向けた重要法案の成立に向けて力の限り尽くし、積極的に首脳外交を推し進める一年にしたい」と表明した。
岸田氏は「アベノマスク」の在庫に関し、「希望者に配布した上で、年度内をめどに廃棄するよう指示した」と表明した。
また、「国会では、私が首相になってから初めて憲法審査会(16日)が開催された。国会において憲法改正の議論が始まったことを歓迎する」と壊憲に意欲を見せた。
岸田首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(記者会常勤幹事社19社の持ち回り)が代表して質問。
その後、司会の四方敬之内閣広報官が挙手した記者を指名し、幹事社を含め計14人が質問した。
挙手する記者はまだ残っていたが、1時間11分で打ち切られた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/150305
◎ 記者の質問は、コロナ対策、10万円給付、訪米の予定、北京五輪への対応などで、日本学術会議問題、自民党のダミー会社の収納センター(岸田氏も元役員)と取引のあるワンズクエスト所有のアカウント「Dappi」による情報操作、岸田氏や斎藤鉄夫国交相(広島3区)の応援演説での日当支払い事件について誰も聞かなかった。
今年最後となった会見も緊張関係はなかった。
朝日新聞の池尻記者が「森友改ざん問題で、近畿財務局元職員の赤木(俊夫)さんの家族が起こした損害賠償訴訟で、国は一転して(認諾で)賠償責任を認めた。家族の願いは真相究明にあり、御家族の中には落胆の声が上がっている。首相自ら対応する考えは。国交省の書き換えの問題のように第三者委員会を立ち上げるなどの対応をとるか」と質問したのはよかった。
◎ しかし、岸田氏は「14日の日に私自身、財務省から報告を受け、全面的に損害賠償責任を認めるということを承知した。別に、情報公開に関する訴訟が係属中で丁寧に対応すること、様々な場で真摯に説明を尽くすことを指示した。私自身も真摯に向き合う」と述べたが、再調査などの具体策は示さなかった。
岸田首相は就任以来、4回会見を開いたが、会見の進め方は安倍晋三・菅義偉政権時代と全く変わらない。
元外務官僚の四方広報官の司会で、1時間前後で強制的に終わらせる。
会見は昨年4月の緊急事態宣言発令を機に、参加記者を29人(制限前は約130人)に縮小している。
主催の内閣記者会(正式名・永田クラブ)は記者席の拡大を申し入れているが、官邸側は拒否している。
記者会見のあり方をめぐる、記者会と政府(官邸報道室)とのやりとりが、市民(読者・視聴者)に十分伝わっていないのは異常だ。
内閣記者会は日本にしかないキシャクラブの中でも最も影響力がある。
内閣記者会は常勤幹事社19社が事実上、運営している。
キシャクラブが今のままでは、日本の民主化は進まない。
◆ 国連を無視し歴史改ざん・死刑執行・外国人差別を続行
外国の「人権」状況を批判する資格なし
◎ 岸田氏は会見で、バイデン米大統領が9・10日にオンライン形式で開いた民主主義サミットに参加したことに触れ、「自由で開かれたインド太平洋」実現を目指すと強調した。
政府が北京冬季五輪への対応で、政府関係者の派遣を見送る一方、東京五輪関係者らを送ることを決めたことについて、岸田氏は24日、「自由、基本的人権の尊重、法の支配、こうした普遍的価値が中国でも保障されることが重要だ」と強調した。
◎ 岸田氏は日本が人権を守る民主主義国と思い込んでいるが、果たして日本は「民主主義国」と言えるだろうかと思った。
国連(連合国)憲章は二次世界大戦で全体主義国だった日本、ドイツなどを今も「敵国」と見なしている。
ところが、安倍政権以降、国連が度々、謝罪と補償を勧告している日本軍性奴隷(慰安婦)、強制連行などの事実を否定するなど歴史改竄を続けている。
法務省入管当局者がスリランカ人女性を虐殺しても、誰も処罰されていない。
安倍昭恵氏が名誉校長をしていた安倍記念小學院への国有地売却に関する公文書を改竄した公務員が自死しても、誰も罪に問われない。
「私、妻(昭恵氏)、事務所が関わっていれば総理も議員も辞める」(2017年2月17日)と啖呵を切った安倍氏がキングメーカーを気取っている。
◎ 東京都武蔵野市議会の本会議が12月21日に開かれ、外国人住民も参加できるかたちの住民投票条例案を、反対多数で否決した。
条例案は、自民党の極右議員らが「8万人の中国人を日本国内から転居させる事も可能。行政や議会も選挙で牛耳られる」(佐藤正久・参院議員)などと反対していた。
約20年前、公明党が自民党と連立政権を組んだ時、外国人参政権導入の合意があった。公明党は一貫して、外国人の地方参政権を公約にしてきたのに、自民党に忖度した。本会議当日、市と議会側が警視庁に警備を要請するなど、厳戒態勢での採決となった。
◆ 「人権」重視の岸田政権はメディアのデマ
◎ 岸田氏が会見した12月21日の朝、東京、大阪両拘置所で確定死刑囚3人が国家によって殺された。
欧州など死刑制度を廃止した国が野蛮と見る死刑の執行は2年ぶり。
1人は中国人の元専門学生。再審請求中の人もいた。殺された死刑囚の弁護人たちは死刑執行に抗議し、日本弁護士連合会も抗議の会長声明を出した。
大阪拘置所前では、市民たちが死刑執行に抗議したが、拘置所職員と警察官が集会を妨害した。
12月22日の朝日新聞は「海外では廃止の流れ」という見出しでサイド記事を載せたが、「先進国で日本だけ」とすべきだ。
https://www.asahi.com/articles/ASPDP3QMRPDPUTIL00J.html
死刑を実質廃止した国は140を超え、存置する55カ国でも実際に執行しているのは中東、東アジアなど毎年20カ国程度しかない。
OECDでは日本だけ。
「Hoppoken」特集の「北欧にはなぜ死刑がないのか?」が参考になる。
https://www.hiecc.or.jp/archive/archive_05_08.pdf
◎ 日本は民主主義国家かを問う前に、「独立国」と言えるのかを議論した方がいい。敗戦から76年4カ月経つのに、今も米軍基地が各地にあり、5万人を超える米兵、軍属が駐留する。
外交・防衛は米国に隷従だ。
沖縄では米軍基地にコロナ感染クラスターが発生し、感染者は数百人に上っている。米兵は入管、検疫を経ずに、日本に入っている。
政府は12月21日、22年度以降の5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を年平均約2110億円で米側と合意したと発表した。新たに米軍と自衛隊が共同訓練で使う資機材費用を負担する「訓練資機材調達費」を新設。負担の通称を「同盟強靱(きょうじん)化予算」とすることも明らかにした。
◎ 国政選挙に半数が棄権し、自治体選挙では投票率は20%代が普通で、日本の民主制は機能していない。
経済力は衰退を続け、「先進国」と言えるかどうかも怪しい。
外国から見たら日本が独立した民主主義国か疑わしい。
メディア(報道)とアカデミズム(大学)が権力監視を怠っているからだ。
国際標準のジャーナリズムの創成が急務だ。
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