◆ 《大阪都構想》 大阪市廃止の狙いと住民投票 (週刊新社会)
大阪都構想=「大阪市廃止、四つの特別区設置」をめぐる住民投票が11月1日に実施さ、れることが決まった。
2015年(約1万票差で否決)に続き、大阪市民(有権者約224万6000人)は再び大阪市をなくすのかどうか?」という選択を迫られることになった。
今回の住民投票では、前回と異なる点がいくつか見られる。
まず、投票用紙に「大阪市廃止」が明記されることになった。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を理由として、住民説明会が前回の39回から、今回はわずか8回に減らされた。
逆に、大阪市の広報では、都構想賛成の宣伝が一方的に掲載されてきた(前回は賛否両論が掲載されていた)。そのため、市の特別参与から「広報というより広告」「バラ色の表現は避けたほうがいい」との指摘を繰り返し受けたという。
最近では、大阪市立保育所・幼稚園で無料配布されている子育て情報誌に、大阪都構想を宣伝する「大阪維新の会」の広告が規定に反して掲載されたことも発覚した。まさに「やったもの勝ち」の状態だ。
◆ 世論調査に見る市民の意識
大阪市民を対象にした最近の世論調査では、読売新聞が賛成48%、反対34%、答えない18%で、毎日新聞もほぼ同じような傾向だった。
しかし、注目すべきなのは、想定される特別区ごとの賛否、あるいは政党支持者別の賛否である。
読売新聞によれば、「北区」では「賛成」62%、「反対」25%だったのに対し、他の三つでの賛否は「淀川区」42%対39%、「天王寺区」41%対37%、「中央区」41%対39%とわずかな差だった。とくに財政状況が厳しくなると思われる「特別区」で賛否が拮抗している。
また、政党支持者別の賛否では、自民支持層で賛否が拮抗している一方で、公明支持層では反対が賛成の倍以上にのぼっている。無党派層では、反対の方が多い(毎日新聞)。
◆ 新自由主義的都市政策の推進
そもそも大阪都構想の狙いは、大阪市の財産・税収・権限を大阪府に吸い上げて、夢洲をはじめとしたベイエリア開発などの大規模開発を一元的にすすめようとするものだった。
さらに維新は、大阪市内でジェントリフィケーションの推進、スーパーシティ構想などの新自由主義的都市政策を推進しようとしており、その財源確保という側面もある。
その結果、各特別区の独自財源は市税収入6600億円が区税1800億円に激減し、府からの財政調整交付金に依存することになるが、その額はあくまで府と各「特別区」との協議に委ねられる。
このことを大阪・市民交流会のチラシは「特別区は『おこづかい制』です」と表現した。
確かに、公明党との協議によって、今後10年間に370億円を府から上積み配分されることになっている。
しかし、府の財政状況は、カジノ・IRの先行き不透明、大阪メトロの収支悪化、インバウンド激減による税収減、コロナ渦による経済状況悪化などで、極めて厳しくなることが予想される。
しかし、維新はこうした状況の変化を財政試算に盛り込むことを拒否し、「都構想で経済効果見込み額、最大約1・1兆円」と根拠のない数字を並べている。
世論調査での都構想賛成の理由で一番多いのは、読売でも毎日でも「二重行政がなくなる」だったが、最近の維新は「二重行政の解消」に触れずに、「住民サービスの向上」「成長する大阪の実現」を宣伝文句にしている。
しかし、「住民サービスの向上」に具体的な中身はなく、「1人だった市長の仕事を4人の区長で分けて行う」ことで「課題解決のスピードは4倍に」なると言っているだけなのだ。
◆ 広範な反対運動を展開
住民投票に向けた都構想反対運動は、前回と違って、自民党市議団、立憲民主党・連合、共産党、市民運動などがそれぞれで反対運動を展開する状況になっている。
市民運動サイトでは、7月に「大阪・市民交流会」(元大阪市長の平松邦夫さんと「大阪を知り・考える会」の中野雅司さんが共同代表)が発足し、反対運動のプラットフォーム作りを目指して活動してきた。
私が所属する「どないする大阪の未来ネット」(南大阪地域の労働組合や市民団体などで構成)も、大阪・市民交流会に参加する一方で、毎週土曜日の街宣・商店街練り歩きなど持続的な運動を展開している。
街宣をしていると、飛び入りで手伝ってくれたり、横断幕を寄付してくれたりと市民の反応は徐々に良くなっている。
私たちは、これからーカ月間の闘いを、住民投票での協定案否決に向けて、多くの大阪市民とともに取り組んでいく決意だ。
『週刊新社会』(2010年10月6日)
どないする大阪の未来ネット運営委員 寺本勉
大阪都構想=「大阪市廃止、四つの特別区設置」をめぐる住民投票が11月1日に実施さ、れることが決まった。
2015年(約1万票差で否決)に続き、大阪市民(有権者約224万6000人)は再び大阪市をなくすのかどうか?」という選択を迫られることになった。
今回の住民投票では、前回と異なる点がいくつか見られる。
まず、投票用紙に「大阪市廃止」が明記されることになった。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を理由として、住民説明会が前回の39回から、今回はわずか8回に減らされた。
逆に、大阪市の広報では、都構想賛成の宣伝が一方的に掲載されてきた(前回は賛否両論が掲載されていた)。そのため、市の特別参与から「広報というより広告」「バラ色の表現は避けたほうがいい」との指摘を繰り返し受けたという。
最近では、大阪市立保育所・幼稚園で無料配布されている子育て情報誌に、大阪都構想を宣伝する「大阪維新の会」の広告が規定に反して掲載されたことも発覚した。まさに「やったもの勝ち」の状態だ。
◆ 世論調査に見る市民の意識
大阪市民を対象にした最近の世論調査では、読売新聞が賛成48%、反対34%、答えない18%で、毎日新聞もほぼ同じような傾向だった。
しかし、注目すべきなのは、想定される特別区ごとの賛否、あるいは政党支持者別の賛否である。
読売新聞によれば、「北区」では「賛成」62%、「反対」25%だったのに対し、他の三つでの賛否は「淀川区」42%対39%、「天王寺区」41%対37%、「中央区」41%対39%とわずかな差だった。とくに財政状況が厳しくなると思われる「特別区」で賛否が拮抗している。
また、政党支持者別の賛否では、自民支持層で賛否が拮抗している一方で、公明支持層では反対が賛成の倍以上にのぼっている。無党派層では、反対の方が多い(毎日新聞)。
◆ 新自由主義的都市政策の推進
そもそも大阪都構想の狙いは、大阪市の財産・税収・権限を大阪府に吸い上げて、夢洲をはじめとしたベイエリア開発などの大規模開発を一元的にすすめようとするものだった。
さらに維新は、大阪市内でジェントリフィケーションの推進、スーパーシティ構想などの新自由主義的都市政策を推進しようとしており、その財源確保という側面もある。
その結果、各特別区の独自財源は市税収入6600億円が区税1800億円に激減し、府からの財政調整交付金に依存することになるが、その額はあくまで府と各「特別区」との協議に委ねられる。
このことを大阪・市民交流会のチラシは「特別区は『おこづかい制』です」と表現した。
確かに、公明党との協議によって、今後10年間に370億円を府から上積み配分されることになっている。
しかし、府の財政状況は、カジノ・IRの先行き不透明、大阪メトロの収支悪化、インバウンド激減による税収減、コロナ渦による経済状況悪化などで、極めて厳しくなることが予想される。
しかし、維新はこうした状況の変化を財政試算に盛り込むことを拒否し、「都構想で経済効果見込み額、最大約1・1兆円」と根拠のない数字を並べている。
世論調査での都構想賛成の理由で一番多いのは、読売でも毎日でも「二重行政がなくなる」だったが、最近の維新は「二重行政の解消」に触れずに、「住民サービスの向上」「成長する大阪の実現」を宣伝文句にしている。
しかし、「住民サービスの向上」に具体的な中身はなく、「1人だった市長の仕事を4人の区長で分けて行う」ことで「課題解決のスピードは4倍に」なると言っているだけなのだ。
◆ 広範な反対運動を展開
住民投票に向けた都構想反対運動は、前回と違って、自民党市議団、立憲民主党・連合、共産党、市民運動などがそれぞれで反対運動を展開する状況になっている。
市民運動サイトでは、7月に「大阪・市民交流会」(元大阪市長の平松邦夫さんと「大阪を知り・考える会」の中野雅司さんが共同代表)が発足し、反対運動のプラットフォーム作りを目指して活動してきた。
私が所属する「どないする大阪の未来ネット」(南大阪地域の労働組合や市民団体などで構成)も、大阪・市民交流会に参加する一方で、毎週土曜日の街宣・商店街練り歩きなど持続的な運動を展開している。
街宣をしていると、飛び入りで手伝ってくれたり、横断幕を寄付してくれたりと市民の反応は徐々に良くなっている。
私たちは、これからーカ月間の闘いを、住民投票での協定案否決に向けて、多くの大阪市民とともに取り組んでいく決意だ。
『週刊新社会』(2010年10月6日)
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