☆ 次は狭山事件再審開始へ(東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
袴田事件の再審請求。東京高裁前の支援者から「開始決定」との電話がきた。ほっとした。
姉ひで子さん(90)の喜びを思った。長年にわたつて弟の巌さん(87)の無実を訴えてきた。
彼は死刑判決を受けた後、執行の恐怖から、解離性同一性障害というのか、「袴田巌」である自分を否定するようになった。
九年前、静岡地裁の村山浩昭裁判長は「証拠が捜査機関によって捏造(ねつぞう)された疑いがある。拘置をこれ以上継続することは耐えがたいほど正義に反する」と明快な判断を下した。
ところが、検察側が面子(めんつ)のために即時抗告して、ようやく再度の再審開始決定。検察の横車、悪あがきが断罪された。
検察は人間の道に反するこれ以上の抵抗はやめるべきだ。
これまでもいくつかの再審開始や無罪判決の場に立ち会ったが、喜びと同時にやり切れなさを感じてきた。
どうして警察や検察は自分たちの過ちを認めないのか。
裁判官はなぜ正義を発揮しないのか。
「疑わしきは罰せず」。それが人間を救う道なのに。
二月下旬の日野町事件の再審開始決定でも検察側は抗告している。この野蛮は法的に規制すべきだ。
五月で事件発生から六十年になる「狭山事件」の再審開始が、次の課題だ。
石川一雄さんは八四歳になった。仮釈放されているが、いままだ「見えない手錠をかけられている」と訴えている。(ルポライター)
『東京新聞』(2023年3月14日【本音のコラム】)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます