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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

中学校理科3年・新指導要領にもとづく「エネルギー資源の利用」指導内容について

2011年04月07日 | フクシマ原発震災
 大阪の松田です。

 今日、勤務する中学校に、新学習指導要領の移行実施のための中学校理科教科書の補助教材が届きました。今年の3年生から「放射線の性質と利用」にふれるということで、補助教材にその内容がのっているのですが、ひどいものです。
 福島原発事故を経験した上で、なお、そのまま教えられるようなものではありません。このような学習教材にした責任を追及するとともに、生徒が身を守るために必要な知識を提供する学習にしなければならないと思います。以下、報告します。
 【中学校理科3年・新指導要領にもとづく
  「エネルギー資源の利用」指導内容について(松田)】


 教育により直接的に国と財界の意向を反映させようとする動きは、2006年12月教育基本法「改正」、2007年6月学校教育法「改正」、2008年3月学校教育法施行規則「改正」・新学習指導要領公示と進み、中学校では、その新学習指導要領に基づく移行措置が2011年度に完了することになっている。
 すなわち、今年度の中学生は、すべて新学習指導要領通りに学習することになっている。
 新学習指導要領に基づく教科書は2012年度(来年度)からなので、それまでは、旧学習指導要領に基づく教科書とともに2009年度から移行で増える内容を補助教材で配布し、段々と内容を増やして移行を完了するようになっていた。
 2009年4月入学の今年度の中学3年生は1年生からすべて新学習指導要領にそった学習をしてきたことになる。
 2011年度(今年度)の3年生理科の補助教材に初めて「放射線の性質」の項目がのっている。
 新学習指導要領の内容的取り扱いに「放射線の性質と利用について触れること」という事項が加わったことを根拠としている。
 教科書にある「7.科学技術と人間」の項目の「第1章エネルギー資源の利用」の中の「1.電気エネルギーはどこからくるのだろうか」で、水力発電、火力発電、原子力発電しくみや課題を説明した後で、取り上げることになっている。
 4月の新学期早々、生徒たちに配布予定である。

 現在の教科書(1分野下「東京書籍」)の「原子力発電」に関わる記述(P94)は、以下のとおり。
 「原子力発電では、放射線を出すウランなどの物質が燃料として用いられる。ウランなどの核燃料は、少量でばく大なエネルギーを得ることができる反面、放射線が人体や作物などに多量にあたると危険なので、常に厳しく監視して安全を確保する必要がある。万一事故が起きた場合の放射能汚染の防止や、使用済み核燃料の安全な処理など、今後さらに研究して解決しなければならない問題が残されている。また、ウランの埋蔵量にも限りがある。」
 P95に「図6原子力発電のしくみ」として、図がのり、以下の解説がある。
 「原子炉の中で核分裂反応によって発生する熱で水蒸気をつくり、それによってタービンを回して発電する。熱源の温度が高くないので、エネルギーの変換効率は35%程度が上限である。」
 3年生の補助教材(「東京書籍」)の「1放射線の性質」(P67)の記述は以下の通り。
 「原子力発電では、ウランなどの核燃料から放射線が発生する。放射線には、物質を透過しやすいという性質があり、人体や作物の内部に入ると悪影響をあたえる場合がある。しかし、実は、放射線には、宇宙空間からふり注ぐものや、自然界に存在する放射性物質から出るものなどもあり、わたしたちは日常的にある程度の放射線をあびている。放射線は、その透過性を利用して、医療に利用されたり、物体内部の検査に利用されたりしている。」
 【やってみよう】「放射線測定器や霧箱などを使って、放射線について調べてみよう」
 図1「霧箱の実験」…放射線が入射すると、その進路にそって白い軌跡が見られる。
 図2「放射線治療装置」…がんの治療の場合、放射線をがん細胞のDNAを破壊し、細胞分裂できなくすることで、治療する。
 図3「放射線を利用した害虫駆除」…放射線を照射して卵をうまないようにした害虫を放すことで、害虫を駆除する方法がある。ウリにつく害虫のウリミバエは、沖縄県などでこの方法で根絶された。

 福島原発事故を経験して、この内容を見ると不十分などというものではなく、犯罪的であることがよくわかる。
 放射線の危険性については、「放射線には、物質を透過しやすいという性質があり、人体や作物の内部に入ると悪影響をあたえる場合がある。」という記述がすべてである。
 この補助教材が、「放射線は日常的にあびているし、怖くない」と放射線の危険に対して、生徒を無防備にすることは明らかである
 放射線がどんな影響を体にあたえるか、体を守るために何が必要かということは絶対に必要な学習課題である。
 たとえば、大量の放射線をあびると死亡するのはなぜか、ヨウ素131を取り込めば数年後、特に子どもたちの甲状腺がんが増大する(チェルノブイリ原発事故後明らかになった事実)のはなぜかについて解説し、身を守るために必要なことを教えることが求められている。
 その学習を具体化しなくてはならないと思う。

 文科省・都道府県教委・市町村教委に見解を迫り、原発推進を目的にした教育ではなく、子どもたちが身を守るために不可欠な科学的知識を提供する教育への転換を要求して行かなくてはならないと思う。
『今 言論・表現の自由があぶない!』(2011/4/7)
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/19684256.html

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