【進む言論統制】安倍首相の応援演説で、質問ボードを掲げようとした女性を警察官複数で取り囲み執拗に個人情報を聞き出す。 | ずっとウソだった
http://nekotoenpitu.blogspot.jp/2013/07/jiminntou.html
◆ 怖い話
鎌田慧(ルポライター)
近づいてきた見知らぬ男が押し殺した声で「警察の者ですが」というだけで、十分に威圧的だ。
JR福島駅頭での安倍首相の街頭演説の場で、「原発廃炉に賛成?反対?」という手づくりの質問ボードを掲げようとした主婦が、私服刑事と自民党スタッフに取り囲まれ、ボードを没収された本紙記事(七月十四日付)を読んで、猛暑なのに肌寒くなった。毎日、読売の両紙には掲載されていない。
一主婦のささやかな行動だが、官憲と与党が一緒になって、言論を妨害した事実は重い。
一時代前なら、警察にマークされるのは共産党や社会党、新左翼のメンバーたちだった。
が、最近はそれぞれ力を落として、無党派市民や少数派労組が運動を担うようになった。首相にもの申す市民もまた「過激派」扱いだ。
主婦を取り囲んだ刑事と自民党員の忠誠心に輝く目と、さげすむような視線を想像して恐ろしくなる。
没収されたボードは一週間たってわざとらしく、教えた覚えのない勤務先に送り付けられてきた、と記事にある。
軍事国家か戒厳令下のような市民の口封じが公然とまかり通りながら、排外主義の「ヘイトスピーチ」は野放しだ。自民党の「壊憲」憲法草案には首相による「緊急事態宣言」が盛り込まれている。
民主主義は強引に幕引きされそうだ。いま、めげずに声を上げなくては。
※動画
◆ 参院選演説で聴衆のボード没収
「原発廃炉に賛成?反対?」。安倍晋三首相の街頭演説で、女性(40)がこんな質問ボードを掲げようとして、没収された。掲げる前に、自民党スタッフや警察官を名乗る男性4人に取り上げられた。この様子の動画はインターネットで公開され、「言論封殺か」と疑問の声が噴出する騒ぎになっている。(出田阿生)
◆ 首相の考えを聞けないの?
「自民党福島県連は県内の全原発の廃炉を公約にしているのに、党本部は再稼働を目指している。その矛盾が分からなかった。せっかく首相が来るなら、聞いてみたいと思って」
ボードを取り上げられた女性は福島県内に住む主婦。五児の母でもある。福島原発事故後、子どもを被ばくから守る活動に取り組んできたという。
「事件」が起きたのは、参院選公示日の四日。女性は、JR福島駅前で行われた安倍首相の第一声を聞きに行った。
持っていたボードはA3判サイズ。「総理、質問です。原発廃炉に賛成?反対?」と印字した紙を段ボールに貼り付けた。
「私たちの声を届けるチャンスはなかなかない。直接、質問に答えてはくれなくても、ボードの文字が首相の目にとまるかもしれないと思って」
演説会開始の前に、男性四人が取り囲んだ。一人は「警察の者ですが」と名乗った。別の一人は「ここは演説会で、国会とか質問して応答する場所じゃないですから」ととがめた。
自民党スタッフの名刺を差し出した男性はボードを「一時預かる」と持ち去った。
男性たちは「どういったアレですか、どちらから来られたんですか」と質問を続け、「連絡先を教えて」と執拗に迫った。女性の住所や名前を聞き出してメモをした。
女性は、「もう帰りますから」と泣きながらその場を立ち去った。
女性が演説を撮影しようとしたスマートフォンの動画に、一連の様子の一部が記録された。
「連絡先をしつこく聞かれ、本当に怖かった。逮捕されるのではと思うくらいだった」と女性は振り返る。
ボードは一週間後の十一日、教えていないはずの女性の勤務先宛てに、郵送で返却されてきた。
◆ 4人で囲み女性に詰問「逮捕されるかと思った」
動画がアップされると、「言論の封殺ではないか」などと批判が噴出。
弁護士有志が、自民党本部や警察庁、福島県警に抗議文を提出した。
事実関係を確認する質問状も送ったが、一切回答はないという。
梓澤和幸弁護士は「表現の自由の侵害だ。参院選初日で国民の政治意識が高まる時に、市民が首相に声を届けようとした行為を与党や警察とおぼしき人々が妨害した」と憤る。
安倍首相は、六月の東京都内の街頭演説で、環太平洋連携協定(TPP)に反対してドラムをたたいていた人たちを「左翼の演説妨害」と決めつけた文章をフェイスブックに書き込んだことがある。
倉地智広弁護士は「自民党に反対する意見を首相の目に触れさせまいと、警察が過剰に反応したのではないか」と推測する。
自民党は、TBSのニュース番組の報道に「公正公平を欠く部分があった」と抗議し、一時取材を拒否した。
田場暁生弁護士は「TBS問題もそうだが、大人げない対応だ。政権与党なのだから、もっと大きく構えればいい。ともかく公党として到底許される行為ではない」と話した。
『東京新聞』(2013/7/14【ニュースの追跡】)
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