パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

厳しい介護労働

2007年08月31日 | 格差社会
 ◆ 介護の現場から見えてくるもの
 「介護は信頼関係」と言うが人間性のかけらもない業務


 ◆ 誰も看取らずに亡くなる


 63歳の女性Aさんは喘息が持病であった。要介護1、1週間に2回(身体、家事含めて2時間)だったが、それは介護制度が変更される前だから、現在ならば家事1時間身体30分と区分されるだろう。
 生活保護を受けていて、ケア内容は近くのスーパーへ買物、掃除(部屋2、台所、トイレ、風呂)、洗濯、蒲団干しなど、ガスは止められていたので調理をすることはできなかった。
 食事は朝がパンー枚、レタスにコーヒー、昼は外食していたが、歩行困難となり配達の弁当に変える(昼半分、夜半分)。アパート代が3万5000円、光熱費1万円、食費、通院、薬代、日用品などで5万円。
 Aさんの所に訪問しはじめて間もなく、なかなかせきが止まらず微熱が続くので入浴はなしになり、清拭する。しかし、きれい好きなので、頭が洗いたいときには、浴室で洗髪する。

 ◆ 喘息でなく肺癌

 近所の主治医に症状を伝えると、薬を変えるだけなので、本人も不安になり病院に連れて行ってほしいと頼まれる。この旨を事業所に伝えると、自分の車は使わずタクシ!で行くようにと言われた。このことを言うと、タクシー代もないと言う。
 仕方なく自分の車で病院に連れて行きレントゲン検査をした。その結果は、末期の肺ガン。家族に伝えようとしたら、兄はいるが病気ということだった。

 即本人にがんの告知がされたので、私が家族代りに他の病院に入院の手続き、準備とつきつきりで世話をすることになった。
 時間外延長は支払われたが、利用者を自分の車で連れて行ったことを話すと、こんこんと事業所からはしかられてしまった。
 その後、Aさんからは「時々は顔を見せてほしい、頼みたいものもあるから」と言われた。事業所には内緒でこっそりと見舞に行ったが、そのときの嬉しそうな顔は忘れられない。それから2カ月後に亡くなった。

 ◆ 評価が低すぎる

 私と同じ世代で、誰にも看取られることなく一人、病院で亡くなったことを後で聞かされ、胸が熱くなる思いがしたのを忘れることはできない。
 この利用者さんから、主治医のいいかげさを痛感されられた。「喘息」と思い込み、いかに体調不良を訴えても看護士が違う薬を持って来るだけで、診察をしましようということを言わなかった。
 私がおかしいと思って、他の病院に連れて行き、「肺がん」と診断された。私には末期がんと告げられ、いろいろと聞かされたが、私はどうしてあげようもなかった。入院した利用者は、事業所から手が離れるために、見舞にも行けない。その上、事業所に無断で見舞に行くと買物やお金の引き出しまで頼まれるといやとは言えない。
 「介護は人間対人間の信頼関係」と教えながら、その実、介護現場は人間性のかけらもない業務遂行型介護になっている。
 時々、テレビなどで悪質なヘルパーのことが報道されたりすると、さらにヘルパーの質が問われ厳しい環境下に置かれてしまう。
 毎日毎日、誠心誠意を尽くして介護しているヘルパーへの評価は低すぎるのが当たり前みたいになっている。ヘルパーにとって、自分の仕事に自信と誇りを持って、明るく未来を見つめる日が来るのだろうか?(介護士山村正美)

『週刊新社会』(2007/8/21)

 ◆ 低賃金できつい仕事 労働環境の改善急務

 やりがいを求めて介護の仕事を選んだものの、現実は賃金が低く、仕事はきつい。
 介護報酬の不正請求が問題になるなかで、介護現場の厳しい労働環境も浮かび上がってきました。介護労働の実態は?

 ●厳しい介護労働
 厚生労働省の調査によると、介護の職に就く理由としてもっとも多いのは「働きがいのある仕事」という回答でした。介護が人を助ける重要な仕事として意識されていることが分かります。
 しかし、実際に介護の現場で働いている人には、さまざまな悩みがあります。とくに「給与などの収入が低い」「有給休暇をとりにくい」といった労働環境への不満が高くなっています。

 ●収入は月額20万円前後
 収入面で見ると、ホームヘルパー(訪問介護員)の一カ月の給与(手当、残業代含む税込み)は、二〇〇五年で十九万八千六百円でした。また介護福祉施設の介護員は二十一万一千三百円です。全労働者の三十三万八百円に比べ、それぞれ約40%、36%低くなっています。介護労働者は平均年齢が若く、勤続年数も短いため、単純には比較できませんが、収入面は厳しい状態です。
 とくにホームヘルパーの給与は、〇五年まで全体的に年々低下する傾向にありました。この背景には、訪問介護事業への参入が増加し、事業者間競争が激しくなったなどの影響が考えられます。
 また、事業所で見ると、〇二年に比べ〇五年では収益が若干改善されているものの、逆に給与費の割合が訪問介護事業所で低下。ホームヘルパーにしわ寄せがいったようです。これに対し特別養護老人ホームでは、給与費の割合が若干増加しています。

 ●半数が「腰痛」訴える
 労働時間でみても、週の実労働時間は全産業平均よりも長くなっています。ホームヘルパーは、ほとんどが女性です。しかも登録型ヘルパーや短時間労働(パート)という勤務形態で、実際の月間収入は約八万二千五百円でしかありません。交通費などが賃金として支払われないケースもあり、改善が必要です。
 労働者の半数は腰痛を訴えています。腰痛は、施設介護職員の間でも深刻な問題となっています。
 あるケアマネジャーは「やりがいだけで介護の職を続けていくのは限界です。賃金を含めた労働条件の向上がなければ、魅力ある仕事とはいえない」と訴えています。
 急速な高齢化が進むなか、介護労働者が報われる制度、労働環境の改善が必要です。

『東京新聞』(2007年8月5日「生活図鑑」No.167)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2007/CK2007080502039286.html

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