『週刊新社会』【沈思実行(145)】
☆ 絶望からの脱出
鎌田 慧
先行き、この国はどうなるのか。無責任に憂い顔でいえるような問題ではない。しかし、このところ、最大の権力者といえる首相が、公私混同を専らにして、政治の劣化が目につきすぎる。それは永過ぎた安倍首相時代から顕著になったのだが、「森友」、「加計」とほかならぬ教育問題、学校の創設に、首相の妻や首相の友人への身びいきがあった。
いまは岸田首相が長男を四代目政治家とするべく、政務秘書官に据え、妻を公費負担、随行員つき、米大統領夫人表敬訪問に送りだした。
中国やロシアのような、強権行使にくらべれば、罪は軽いとはいえ、みみっちすぎる。政治家の公私混同は国の恥だ。
その一方では、政治的亡命者が日本入国を希望しても、難民として認められず、「不法残留者」とされる。
単純労働力として「技能実習生」の名目で入国したものの、かつての強制連行のような人権抑圧、奴隷労働、極端な搾取が横行していて、脱走すれば強制収容、強制送還となる。
スリランカ人のウィシュマさんのように、入管で虐待されて、死亡する事件まで発生している。
かつてはアジアのなかでの圧倒的な軍事力を背景に、「大日本帝国」を自賛したこともあった。
アジアの人びとへの横暴は、その名残だが、いまや賃金水準は韓国よりも低い。
日本脱出、海外移住に未釆を託す若者たちは、2022年10月現在で、55万7千人。
3カ月以上海外で暮らす日本人は合計130万9千人。
永住権を取得した「永住者」は、20年連続で増加、10年目とくらべると14万人もふえている。
さらにいま、ワーキングホリデーとして、海外移住する若者が急増しているのは、理解できる。
いまの政治では若ものたちに未来を語りにくい。
非正規労働者からの脱出として、海外脱出に夢を託すのは冒険だ。しかし、そこに追いこんでいるのが自公、維新などの政治だ。
安倍暗殺は統一教会への不満からだが、岸田暗殺未遂は、あきらかに絶望的な政治が反映している。
若者に希望を与える政治。それがいま求められている。
『週刊新社会』(2023年5月3日)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます