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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「人権と犯罪報道」について、真剣に考えてほしい

2019年06月23日 | 平和憲法
  たんぽぽ舎です。【TMM:No3676】「メディア改革」第5回
 ◆ 吹田拳銃強奪事件報道の大問題
   ~既に拘束されている被疑者の男性の実名、連行写真は必要だろうか
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

 大阪府吹田市の交番前で警察官が刃物で刺され、拳銃が奪われた事件で17日朝、逮捕された被疑者の男性(33)の実名、住所、経歴などがメディアで大きく報道されている。
 事件発生の後、加害者が逃亡したので、重大ニュースとして扱うのは当然だが、被疑者が拘束された後は、冷静に報道すべきだ。
 日本国憲法、国際人権法が補償する無罪の推定、公正な司法手続きを受ける権利はすべての被疑者・被告人に保障されている。どんなに凶悪な事件であっても、すべての個人に保証され、例外はないのだ。
 事件で被害を受けた被害者の人権もまた、擁護されなければならない。

 メディアは一斉に、男性の不可解な供述内容を伝え、調書への署名を拒んでいると報道。また、「○○容疑者は、精神障害者保健福祉手帳を保有し、病院の精神科の診察券も持っていた」(共同通信、記事では実名)と伝えている。
 NHKは「2級の精神障害者保健福祉手帳を持っているということで、警察は精神状態についても慎重に調べています」と報じている。
 キシャクラブメディアは男性が供述したとして、「 」で報じているが、捜査官と被疑者しかいない密室での取り調べで、被疑者が話したことがなぜメディアに伝わるのだろうか
 海外では、「大阪府警の捜査官が私たちに絶対に自分の名前は匿名にしてほしいという条件で明らかにしたところによると、○○被疑者は取り調べに応じた際、・・・と話したという。私たちは被疑者に取材できないので、実際のところは分からない」と書かなければならない。
 警察官が職務上知り得た情報を民間企業である企業メディアに漏洩するのは公務員法の守秘義務に違反しているのではないか。
 捜査段階で、被疑者が自供したとされる内容が、裁判で出てこなかったり、再審裁判で刑事による強要や捏造だったことが明らかになったりしたケースは少なくない。
 被疑者が精神科の治療を受けていたことをこの段階で報道するのも問題がある。精神障害患者への偏見を強めてはならない。
 登戸の小学生刺殺事件の際も、被疑者が引きこもりだったことが報道され、引きこもりの人たちがつらい思いをした。
 被疑者が精神医療を受けていたことと、この事件の関連性は明らかになっていない。おそらく精神鑑定が行われるだろうから、報道機関は鑑定が公正に行われるか監視すべきだ。
 逮捕された男性の父親は17日夕、代理人弁護士を通じて、「重大な怪我をおわせてしまった警察官の方及びご家族様に対し、心よりお詫び申し上げます。このような事態となったことについて、大変驚いており、未だ信じられない気持ちがありますが、今後の警察の捜査にも全面的に協力する所存でございます」という自筆のコメントを発表した。
 また、テレビ朝日が17日午後6時半過ぎ、父親が常務取締役を務めている近畿の準キー局の局名を明らかにして、同局が「弊社常務取締役から『自分の息子である』との報告を受けた。大変、重大なことと受け止め、今後も社会的責任を果たしていきたい」とするコメントを発表した。https://news.tv-asahi.co.jp
 NHKは「父親は民放の役員」と報じている。
 こういうことをニュースにしていいのか、と思う。聖書に、「親の罪を子は負わない。子の罪を親は負わない」とある。
 父親を非難してはならない。父親が、20歳をとうに過ぎた子どもの逮捕で、仕事を失うことは絶対にあってはならない。
 また、既に拘束されている被疑者の男性の実名、連行写真は必要だろうか
 しんぶん赤旗だけは男性の実名を出さず、<職業不詳の容疑者(33)=東京都品川区=と報じている。赤旗は1989年から犯罪報道で一般市民は匿名を原則にしている
 マスコミで働く労働者、メディア情報に接する市民は、この事件を機に、「人権と犯罪報道」について、真剣に考えてほしい。
 マスコミ関係者が報道被害に遭う時代になった。拙著「犯罪報道の犯罪」が出版された1984年からの議論を参考にしてもらえたら幸いだ。
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