パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国家が国民に命令する「家庭教育支援法」

2017年06月03日 | こども危機
 《子どもと教科書全国ネット21ニュース》
 ◆ 「家庭教育支援条例」
吉田典裕 子どもと教科書全国ネット21常任運営委員


 ◆ 「家庭教育支援法」国会提出の動き
 今国会に提出すると言われている悪法案の一つに「家庭教育支援法案」があります。
 「週刊女性」2017年2月21日号は、この法案を「聞こえのいい名称とは裏腹に、この法案が掲げる“家庭教育”はトンデモない」として、「核家族化や地域との関係が希薄になったことで家庭教育の緊急支援が必要だとして、《保護者が子に社会との関わりを自覚させ》るための責任を負っていると強調、さらに《国家や社会の形成者として必要な資質が備わるよう環境を整備する》よう保護者に要求している。支援といっても、子どもの虐待防止や貧困解消につながるものではないのだ」と批判しています。
 「森友学園問題」のあおりを受けて、今国会への提出は断念せざるをえないとの観測もありますが、遅かれ早かれ提出されることは確実です。
 「24条変えさせないキャンペーン」のウェブサイトにアップされた「家庭教育支援法案(仮称)未定稿」(2016年10月20日付)によると、次のような内容となっています(https://article24campaign.wordpress.com/)。
 その目的は「同一の世帯に属する家族の構成員の数が減少したこと、家族が共に過ごす時間が短くなったこと、家庭と地域社会との関係が希薄になったこと等の家庭をめぐる環境の変化に伴い、家庭教育を支援することが緊要な課題となっていることに鑑み、…家庭教育支援に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、家庭教育支援に関する必要な事項を定めることにより、家庭教育支援に関する施策を総合的に推進すること」(第1条)とし、「家庭教育は、父母その他の保護者の第一義的責任において、父母その他の保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めることにより、行われるものとする」(第2条〉ことを基本理念としています。
 第2条には「2 家庭教育支援は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、社会の基礎的な集団である家族が共同生活を営む場である家庭において、父母その他の保護者が子に社会との関わりを自覚させ、子の人格形成の基礎を培い、子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにすることができるよう環境の整備を図ることを旨として行われなければならない」
 「3 家庭教育支援は、家庭教育を通じて、父母その他の保護者が子育ての意義についての理解を深め、かつ、子育てに伴う喜びを実感できるように配慮して行われなければならない」
 「4 家庭教育支援は、国、地方公共団体、学校、保育所、地域住民、事業者その他の関係者の連携の下に、社会全体における取組として行われなければならない」との規定もあります。
 いささか引用が長くなりましたが、それは次に見るように、県や市で制定された家庭教育支援条例とよく似ているからです。
 ◆ 家庭教育支援条例を制定した県・市議会とその内容
 本稿執筆時点までに表に掲げた県市議会で家庭教育支援条例(名称は微妙に違うものもあります)が制定・施行されています(もしかしたらほかにもあるかもしれません)。
 ご覧のとおり、どれもほとんど同じと言ってよいほど類似した構成です。どの条例にも前文がありますが、そのいずれもまず「家庭が教育の原点である」とし、次に各県または市に教育の伝統があり、それにもかかわらず「家庭の教育力が低下している」ことを憂え、そこで家庭教育支援条例が必要になっていることを述べるという共通の組み立てになっています。
 本文ではどれも第3条に理念、そして概ね第6条に保護者の責務または役割を規定しています。
 前述の「未定稿」ともよく似ていますが、どう見ても背後にこれを進めた勢力があるとしか思えません。
 条例が制定された議会のほとんどでは行政側ではなく議員によって提案されています。ほぼ日本会議地方議員連盟のメンバーと見て間違いないでしょう。つまり、ここでもまた背後にいるのは日本会議であると見て間違いないということです。さらに条例を詳細に見ると、「親の学び」が「親としての学び」「親になる学び」の2つの条文から成っています。
 これを見て思い当たるのが、高橋史朗・明星大学教授が提唱する「親学」です。同氏が会長を務める「親学推進協会」のウェブサイトには次のような文言があります。
 親になるためにこれだけは学んで欲しいこと、それを伝えるのが親学です。親学という言葉には、「親としての学び」と「親になるための学び」の二つの意味が含まれています。
 各条例の「親としての学び」と「親になるための学び」にぴたりと当てはまります。これだけ見ても発信源がどこにあるかがわかるというものです。
 ◆ 改憲に道を拓く「家庭教育支援法」
 「家庭教育支援法案」や同「条例」がねらっているのは何でしょうか。それは端的に言えば、改憲に道を拓くことでしょう。国があるべき家庭教育のあり方を規定してそれに従えということです、つまり国家が国民に命令することです。
 例えば最初に制定された熊本県の「くまもと家庭教育支援条例」第6条は「保護者の役割」として次のように規定しています。
 「保護者は、基本理念にのっとり、その子どもの教育について第一義的責任を有するものとして、子どもに愛情をもって接し、子どもの生活のために必要な習慣の確立並びに子どもの自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする」としています。
 このような明白に立憲主義に反する条例がすでに存在していることに慄然とします。
 各地の「家庭教育支援条例」制定は、「家庭教育支援法」制定に向けての戦略的位置づけをもって進められてきたと言えるでしょう。しかし、日本会議や法の制定の担い手である親学推進議員連盟(設立時会長は安倍晋三首相)の思惑通りに事が進んでいるわけではありません。
 実は「家庭教育支援条例」制定運動は、最初につまずきました。それは大阪市です。
 「大阪維新の会」市議団が議員提案を予定していた「児童虐待や子どもの非行などを「発達障害」と関連付け、親の愛情不足が原因とする内容」(毎日新聞2012年5月7日)の「家庭教育支援条例案」に医師や発達障がいの子どもを持つ保護者らが「根拠がない」「偏見を助長する」と猛反発し、白紙撤回に追い込まれたことです。
 この条例案には「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する」(第18条)、「親としての学び、親になるための学びを支援、指導する『親学アドバイザー』など、民間有資格者等の育成を支援する」(第21条)と「親学」という文言そのものまで入ったものでした。
 この経過に見られるように、「家庭教育支援法」や同「条例」の内容が広く知られれば、阻止することは十分可能です。(よしだのりひろ)
「子どもと教科書全国ネット21ニュース」113号(2017.4)

コメント    この記事についてブログを書く
« アベを倒そう!(270)<人間... | トップ | 7月23日 コンサート・自... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

こども危機」カテゴリの最新記事