パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 今年の中学校新教科書の採択の状況(下)

2025年01月16日 | こども危機

  《子どもと教科書全国ネット21 事務局通信から》
 ★ 2025年度中学校教科書の採択に関する交流会(続)

●【大阪府】永石幸司さん

 大阪ネットでは、4月に全部で4つの要請書を送り、教科書の内容分析をして、6月にそれを発表する大阪教育集会を開催しました。
 また、大阪府内の採択地区で一番人数が多いのは堺市ですが、教科書展示会が1か所しかありませんでした。地元で増設を要求し、今回2か所になりました。

 歴史・公民・道徳について、2015年度、2020年度、2024年度の3回分の教科書採択の結果をまとめてみました。
 2015年の採択では、大阪市など5市で育鵬社の採択がありましたが、前回は泉佐野市の公民だけになりました。今回、その泉佐野市も不採択にしたので、公立’での育鵬社の採択は無くなりました
 教育委員は、今回、新たに3人が選ばれて7人体制になりました。前回は3対1で育鵬社になりましたが、今回は、3人が育鵬社、他の3人は事務局が推した教科書を支持しました。そこで教育長は、事務局に育鵬社の問題点を挙げさせました。
 事務局は、4点指摘しました。

子ども食堂が貧困対策と書いているが、そこに行っている子たちが傷つくのではないか。
非核三原則の記述がない。
部落差別について、門地が原因ではない。
ジェンダー平等の考えに立っていない。

 このうち、②と③は市の方針と異なるとして、教育長は東書を推しました
 事務局がこのような報告をしたのは、「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」の人たちや退職した先生たち、新婦人の人たちが声をあげていきたことが影響しているの’ではないかと思います。

 

●【石川県】安原昭二さん

 石川県では、金沢市の歴史が育鵬社から帝国に変わりましたが、小松市加賀市歴史・公民とも育鵬社を採択しました。
 加賀市は、採択の時だけ公開するのですが、パソコンの前でボタンを押すところを見るだけなので、誰がどこを推しているのか全くわかりません。
 小松市は、前回、公民は帝国だったのですが、今回、また育鵬社を採択してしまいました。市長が参政党であること、自衛隊の関係者がPTA会長をしている学校で、PTAの企画で「櫻井よし子後援会」が開催されることなどから、心配していました。
 金沢市で、育鵬社を帝国に変えさせた要因は3つあると思います。
 1つは、「育鵬社の教科書は使いにくい」という声が現場から上がったこと。
 2つは、昨年の小学校の採択で教育委員会の会議録に発言者の氏名が載るようになったこと、
 3つは、採択会議の公開を求める署名のとりくみなどを、「教科書石川ネット」だけでなく「いしかわ教育総研」など広範な団体と共闘しておこなったことです。
 会議の公開を求める請願は、文教委員会では可決されたものの、本会議で否決されてしまいました。しかし、教育委員会は市民の要求を無視できず、議事録への発言者の記載を決めました。
 このことによる変化は大きなものでした。2020年の議事録を見ると、教科書の装丁や見やすさばかり審議していましたが、今回は教科書の内容に踏み込んだ発言が多かったです。
 帝国を推す発言が多い中、教育長は最後まで育鵬社にこだわっていましたが、帝国5、東書1、育鵬社1で帝国が採択されました。

 交流会の翌日、石川ネットより、開示請求によって明らかになった、小松市での審議の状況をまとめた資料が送られてきましたので紹介します。
 小松市の今回の採択では、教育委員会が選定委員会の答申を覆す形で決定されました。〈歴史〉選定委員会は、「教科書は育鵬社、ワークは東書。教科書とワークができる教科書を選んでいただきたい」などの意見も添えて、東書と帝国にO印をつけて報告。教育委員会の審議では、5人のうち3人が、「自分の国の歴史を正しく理解して、……愛国心を育むことが必要」「調査書の○印の数が絶対となると、教育委員会自体が事実上拘束されてしまう」などと主張し、教育長は「順番に段階を経て会を重ねてきたものを重く考えてきた」が、「合議制ということで育鵬社に決定します」。
 〈公民〉選定委員会では「帝国が学習しやすい」「東書、育鵬社も工夫されている」などの意見があり、委員長が「どういう社会になるのが良いのか、話し合っていけるような教科書を選んでいただきたい」とまとめた。教育委員会では、3人が、O印に関係なく「自衛隊が合憲であることを取り上げている」などの理由で育鵬社を推し、他の1人が「歴史は育鵬社なので、公民も同じにした方がよい」と発言。委員長は「もう、どうしようもありませんので、育鵬社にします」。

 

【広島県】岸直人さん

 4月に県内24の教育委員会に請願を出し、それに対する回答を以下のように分析しました。

 ①「基本的人権、平和主義、民主主義、多文化共生」を重視する教科書の採択:

4/24教委が採択、2教委が採択も不採択もしない、4教委が不採択と結果はさまざまですが、毎回この要請をすることによって、考えてもらえるのではないかと思います。

 ②採択時の教育委員会会議の公開:

16/24教委が公開しました。前回7教委、昨年は12教委と、公開する教育委員会が増えています。

 ③教育委員会会議録、選定委員会会議録での発言者名の記載:

教育委員会会議録への発言者名の記載は20/24教委、選定委員会会議録への発言者名の記載は9教委でした。

 ④選定委員会での意思形成終了後、速やかに「視点・方法」の公開:

「観点」は県教委の観点を使うことになっており、「視点・方法」は各教委または採択地区で作っています。採択前に「観点」「視点・方法」を公開させることで、市民は教委がどのような価値を重視しているのかがわかるので、採択前の公開を求めています。
採択前に「視点・方法」を公開したのは4/24教委でした。

 ⑤採択要綱・規約などを法的拘束力のある規則・条例にすること:

規則にしているのは3/24教委、条例は1教委でした。2015年の中学校教科書採択で呉市教委の「採択規程」が不適正であると裁判で訴えたところ、「規程は内規であるから、不適正でも違法とは言えない」との判示がされました。違法となるのは規則・条例だということだったので、規則・条例化を求めています。

 ⑥採択に教職員の意見を反映させること:

20/24教委が「展示会のアンケート結果を教育委員に示した」「調査員が教員だから、教職員の意見が反映されている」と回答しましたが、これは反映したとは言えません
私たちが望むのは、学校ごとにどの教科書が良いかをまとめて採択に反映をする学校意見の復活、または、教科ごとに市内の教員が集まり、調査をしてふさわしい教科書を選ぶことです。次回の採択に向け、重点的に取り組みたいと考えています。

 ⑦採択結果・理由を遅滞なく公表すること:

「遅滞なく」とは、採択日から土日・休日を入れて10日を考えて請願しています。
2020年の採択では、遅滞なく公表したのが12/24教委でしたが、今回は7教委に激減してしまいました。理由はわかりません。毎回、請願をする必要があると考えます。

 ⑧教育委員会会議運営規則に請願を人れること:

規則があるのは20/24教委でした。

 ⑨教科書展示会での市民アンケートを実施すること:

20/24教委が実施しましたが、採択に反映したかどうか明らかでないところもあるので、反映するように働きかけをする必要があります。

 ⑩教科書展示会で写真を撮らせること:

写真撮影が可能なのは11/24教委です。これができれば、教科書の内容を早く共有できるので、引き続き請願のとりくみを続けていきたいと思います。

『子どもと教科書全国ネット21 事務局通信』(2024年12月15日)

 


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