=都運営「東京しごとセンター」=
◆ 行政の足元で"違法"求人
東京都が委託運営する「東京しごとセンター」で出した求人票に性別や年齢制限が記されていた問題。男女雇用機会均等法や雇用対策法(雇用法)では、性別や年齢を制限した職業の募集・採用を禁止しており、法律に抵触していた可能性がある。業務を委託し、監督する立場である都の責任も厳しく問われる。
「□」=男性
「△」=女性
「☆」=年齢制限
東京・飯田橋のビジネス街に立つ「東京しごとセンター」。低層部は全部ガラス張りで地上二十五階の豪華ビルだ。一-十二階にはセンターを運営する「東京しごと財団」や就労関係の各種団体が入る。十九日にビル内に入ったところ、内部はきれいなオフィスビルのよう。ハローワークのような混雑はなく来館者はちらほら。三十代程度の人が多いようだ。今回明らかになったのは同センターで中高年の就業支援業務を委託された再就職支援会社「ライトマネジメントジャパン」が、求人票に特定の記号を付け、事実上、それらを求人条件として使っていた問題だ。
都によると、同社は「□」を男性、「△」が女性、「☆」は年齢制限あり、「※」は同社が独自開拓した求人を示す記号として使用していた。
男女雇用機会均等法は事業主が労働者の募集・採用で男女に均等な機会を与えることを義務化。女性を募集から排除することはもちろん、男女で募集条件が異なることも認めていない。さらに雇用法も二〇〇七年十月の改正で募集・採用に年齢制限を禁止した。
◆ 「実害がなく公表控えた」
このため、企業側は性別や年齢の制限を記載した求人を出せない。ところが、ライト社はこれらを記号に置き換え「この求人は男性のみ」「こっちは年齢制限あり」などと社内で識別することに使用していた。
使い始めたのは雇用法改正と同時だという。都は今月五日、外部からこの事実を指摘され、財団に是正を勧告。これを受け財団は同社に記号の削除を命じたという。
民間ではこうした差別的な求人が、現在も法の網をかいくぐって横行している。不況がそれに拍車をかけている。だが本来は、こうした法の定着を推進すべき行政の足元で許されざる求人が見過ごされていた。
業務を委託した都就業推進課の担当者は「ライト社は企業と求職者の希望を円滑にマッチングさせるために記号を付けたという。だが、年齢や性別を識別する記号を付けたこと自体が問題で望ましくない。非常に遺憾だと思う」と話す。
いまひとつ、理解しにくいのは都による業務委託という運営形態だ。都によると、ライト社以外にもセンターで就業業務委託を受ける民間企業は七、八社もあるという。都の担当者は「就業あっせんの委託は民間企業にノウハウが豊富にあるため。記号の問題は実害がなかったので公表を控えた」と説明する。とはいうものの、実際には求人票を見て応募した後、記号の条件に合わず採用を見送られた人や面接すら受けられなかった人もいるのではないか。深刻化する雇用の最前線。そこでの行政の責任感欠如は否定できない。
『東京新聞』(2008/3/20【ニュースの追跡】)
◆ 行政の足元で"違法"求人
東京都が委託運営する「東京しごとセンター」で出した求人票に性別や年齢制限が記されていた問題。男女雇用機会均等法や雇用対策法(雇用法)では、性別や年齢を制限した職業の募集・採用を禁止しており、法律に抵触していた可能性がある。業務を委託し、監督する立場である都の責任も厳しく問われる。
「□」=男性
「△」=女性
「☆」=年齢制限
東京・飯田橋のビジネス街に立つ「東京しごとセンター」。低層部は全部ガラス張りで地上二十五階の豪華ビルだ。一-十二階にはセンターを運営する「東京しごと財団」や就労関係の各種団体が入る。十九日にビル内に入ったところ、内部はきれいなオフィスビルのよう。ハローワークのような混雑はなく来館者はちらほら。三十代程度の人が多いようだ。今回明らかになったのは同センターで中高年の就業支援業務を委託された再就職支援会社「ライトマネジメントジャパン」が、求人票に特定の記号を付け、事実上、それらを求人条件として使っていた問題だ。
都によると、同社は「□」を男性、「△」が女性、「☆」は年齢制限あり、「※」は同社が独自開拓した求人を示す記号として使用していた。
男女雇用機会均等法は事業主が労働者の募集・採用で男女に均等な機会を与えることを義務化。女性を募集から排除することはもちろん、男女で募集条件が異なることも認めていない。さらに雇用法も二〇〇七年十月の改正で募集・採用に年齢制限を禁止した。
◆ 「実害がなく公表控えた」
このため、企業側は性別や年齢の制限を記載した求人を出せない。ところが、ライト社はこれらを記号に置き換え「この求人は男性のみ」「こっちは年齢制限あり」などと社内で識別することに使用していた。
使い始めたのは雇用法改正と同時だという。都は今月五日、外部からこの事実を指摘され、財団に是正を勧告。これを受け財団は同社に記号の削除を命じたという。
民間ではこうした差別的な求人が、現在も法の網をかいくぐって横行している。不況がそれに拍車をかけている。だが本来は、こうした法の定着を推進すべき行政の足元で許されざる求人が見過ごされていた。
業務を委託した都就業推進課の担当者は「ライト社は企業と求職者の希望を円滑にマッチングさせるために記号を付けたという。だが、年齢や性別を識別する記号を付けたこと自体が問題で望ましくない。非常に遺憾だと思う」と話す。
いまひとつ、理解しにくいのは都による業務委託という運営形態だ。都によると、ライト社以外にもセンターで就業業務委託を受ける民間企業は七、八社もあるという。都の担当者は「就業あっせんの委託は民間企業にノウハウが豊富にあるため。記号の問題は実害がなかったので公表を控えた」と説明する。とはいうものの、実際には求人票を見て応募した後、記号の条件に合わず採用を見送られた人や面接すら受けられなかった人もいるのではないか。深刻化する雇用の最前線。そこでの行政の責任感欠如は否定できない。
『東京新聞』(2008/3/20【ニュースの追跡】)
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