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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

右傾化と国際化、安倍政権の教育方針の矛盾

2014年10月26日 | こども危機
 ◆ 安倍政権の教育現場への介入が生む混乱と困惑 (星の金貨プロジェクト)
   マイケル・フィッツパトリック / ニューヨークタイムズ 2014年10月12日

 ○ 日本人のアジア近隣諸国についての研究意欲を削ぎ、日本への留学者も減らしている安倍政権の教育方針
 ○ 日本の新しい教科書検定基準は、アメリカを始めとする同盟国さえも幻滅させている
 ○ 日本の政治指導者たちが排他的で普遍性の無い攻撃的な歴史観を持ち、あらゆる分野で日本を後退させている
 日本の教育現場では国際感覚に優れた人材の育成が求められる一方で、同時に国家主義的教育の実施も要求され、教育政策の立案現場には困惑が生じています。
 日本では『愛国的教育』の実践への圧力が強まる中、教科書の内容を書き換える作業が進められ、近隣諸国の不興を買っています。
 しかし日本では同時に、大学の国際競争力を高めるためその国際化と広く門戸を開く取り組みが行われています。
 「教育方針に関する日本の右傾化と、大学の国際化を図ろうとするその取り組みの間には明らかな矛盾が存在します。」
 日本の政治を専門に研究しているボストン大学のトーマス・バーガー教授がこう語りました。
 「日本が教科書検定基準を改め、記述内容を変えようとしていることは、アジア地区における緊張を高めることにつながっています。そして日本国内では近隣諸国の研究を行なおうという意欲を削ぎ、国外では日本に留学しようと考える学生の減少につながっているのです。」
 バーガー教授はこう続けました。
 「日本の教育方針はここに来て行き詰っています。経済的にも政治的にも国際的感覚を養成する強い必要性があるにもかかわらず、日本は実際には教育をその逆の方向に動かそうとしてきました。」
 民主党が政権を握っていた間の失われた時間を取り戻そうとでもするように、日本の保守勢力は昨年末に安倍政権の誕生によって再び権力の座に座ると、まずは第二次世界大戦当時の日本の事歴について反省的な姿勢を捨てることに着手しました。
 そして歴史教科書の重要な記述である、第二次世界大戦当時の日本軍の侵略行為は『愛国的』行動という表現に変えられてしまいました。
 安倍政権は右翼的な見方を学校の教育方針に強引に持ち込もうとしているという批判が高まっています。
 新しい教科書検定基準で認可された教科書では、中国の南京大虐殺の犠牲者の数を減らし、さらには虐殺では無く単に『事件』という表現に変えられました。
 こうした変更に対しては若干の抵抗もありましたが、全国の教育委員会は概ねこの変更を受け入れました。
 新しい教科書を採用する最初の教育委員会のひとつは日本で二番目に大きな市、横浜市教育委員会でした。
 しかし日本では同じ保守勢力がその内向きな教育制度を国際化するための取り組みが同時進行させています。
 安倍首相は国内の10の大学あるいは研究機関が世界のトップ100の中に入ることを望んでいると語りました。
 現在は世界の最高学府のランキングにおいては、東京大学と京都大学だけがトップ100の中に入っています。
 政府の計画には外国人教授を迎え入れて教授陣を強化し、大学の施設設備を充実させ、一定の規準の下確立した評価システムを導入することなどが含まれています。
 新しい教科書検定基準の採用によりさらなる関係悪化が懸念される、まさにその当事国-アメリカ合衆国、中国と韓国-との間で交流を促進しようという動きも見られます。-。
アジアの近隣諸国は、新たな『愛国主義的教育』が日本を平和主義から国家主義体制へと変貌させ、戦争時の残虐行為については曖昧にしてしまう事を恐れています。
 そして戦後の日本で長く否定されてきた軍国主義について、その価値感を復活させたとして安倍首相を批難しています。
 安倍政権は軍国主義国家としておこなった軍事行動の侵略性を「否定し、さらには美化しようとさえしている。」
 今年に入り、中国外務省はこう表現しました。

 中国と日本の間には離島の領有権を巡っても紛争が起きています
 そして互奥深く隠された敵意に基づく偏った内容の歴史教科書と教育方針が、両国間の50年に及ぶ友好関係を壊す原因になっているとして、互いに相手を批判しています。
 日本の新しい教科書検定基準と記述内容は、アメリカ合衆国を始めとする同盟国においてさえ、幻滅を呼んでいます。
 ワシントンの独立した研究機関のアジア政策の責任者であるミンディー・コトゥラー氏が次のように語りました。
 「日本の政治指導者たちが歴史の真実に向き合うのではなく、排他的で普遍性の無い、しかも攻撃的な歴史観を持つことにより、日本を人種問題、女性、戦争、平和、そして各国間の友好関係の確立、あらゆる分野で日本を後退させているという現実に、私たちは大いに失望させられています。」
 「簡単に言えば、現在の日本の政権には求められる妥当な見識・判断能力があるのか、という点が問題なのです。」
 しかしその政権の当事者は、第二次世界大戦時に行った行為について、日本が周辺各国の理解を得るために充分な取り組みをしてきたと語っています。
 戦争時代の間に日本の攻撃性についてその隣人の感度を満たすために十分にしたと言います。
 下村博文文部科学大臣は、現在の政権が特定の歴史に関する解釈を強要してはいないと語りました。
 彼は、日本の教科書検定が専門家による学問的評価に基づき、公正に、そして公平に行われていると語りました。
 しかしその一方で日本国内において、もっと愛国的風潮が強化されることを望んでいることを認めました。
 「歴史には正の側面と負の側面の両面があります。」
 「日本の子供たちが負の側面と同時に正の側面についてもしっかりと認識し、自分たちの国の歴史に誇りを持てるようにしたいのです。」
http://www.nytimes.com/2014/10/13/world/asia/japans-divided-education-strategy.html?_r=0
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 この記事(評論)を翻訳していた時、NHKのテレビニュースがイタリアかどこかで開催中の国際会議で折から感染の拡大が懸念されているエボラ出血熱の問題について、「安倍総理大臣は国際的取り組みが必要だと指摘しました。」と伝えているのを聞き、NHKも北朝鮮の国営放送に似てきたなと感じてしまいました。
 北朝鮮のテレビニュースは国内の様々な場所で「偉大なる将軍様が指導を」していることを度々伝えています。
 アメリカや英国のニュースメディアでは、一カ月以上前からエボラ出血熱の感染拡大を防ぐためには何より国際的取り組みが必要なことを各メディアに登場した『専門家』が繰り返し『指摘』してきました。
 そのような当たり前の、すでに繰り返し聞かされてきた事実を『指摘』した事のどこにニュース性があるのでしょうか。
 『国営放送』がこうなってしまった以上、現政権が作り出している様々な問題については、なおさら海外のメディアに頼らざるを得ないようです。
 日本の闇が拡大しているという危機感を新たにせざるを得ません。

『星の金貨プロジェクト』(2014年10月20日)
http://kobajun.chips.jp/?p=20395

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