パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

安保3文書が閣議決定で改定されて、これから何が変わっていくのか

2024年02月14日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

  =百万人署名運動全国通信から=
 ◆ 安保文書改定で変わった武器生産と輸出

半田 滋さん(防衛ジャーナリスト)

 ◆ ミサイルや戦闘機の輸出始まる

 2022年12月に安保3文書が閣議決定で改定されて以降、さまざまな変化がありました。もちろん、軍事力強化へ向けた一本道です。
 日本は長い間、海外に武器を輸出しないという「武器輸出三原則」を保持してきましたが、第二次安倍政権で「防衛装備移転三原則」と名前を変え、殺傷力のない武器であれば、また紛争当事国でないならば、と条件付きで武器輸出を解禁しました。
 さらに23年12月に「防衛装備三原則と運用指針」を改定しましたが、その核心部分は、ライセンス生産の武器であればライセンス元の国に、日本で生産した武器を輸出してもかまわないとしたことです。

 実際に米国から求められたのは、三菱重工業が造っているPAC2PAC3(パトリオットミサイル)をライセンス元国である米国に輸出することです。
 PAC2は航空機対処のため、またPAC3は弾道ミサイルを迎撃するための地対空迎撃ミサイルです。
 米国は戦争中のウクライナに米軍のPAC2を無償供与しているので、米軍にとって必要なPAC2が減ってきた。そこでライセンス生産している日本政府に「それを輸出してくれ」という話がきました。
 日本は「輸出はします、ただしそれは米国が引き取るにとどめて海外に輸出しないことが条件です」として輸出を解禁したのです。
 でも実際には米軍は玉突きでPAC2をウクライナに送ることができる。これは間接的に武器輸出と同じことになります。
 PAC2はいわゆる防御的兵器ですが、飛んできた航空機の手前でミサイルは爆発して機体を破壊したり乗員を殺傷したりするわけですから殺傷兵器でもあります。

 もう一つ、英国やイタリアと共同開発を進めている次期戦闘機も開発が終わり、生産が始まれば、両国とも輸出を求めるのは間違いない。すると、数年後には日本が開発生産に関わった戦闘機が多くの国に売却されていくことになる。
 防衛装備移転三原則には憲法9条を受けて「平和国家の立場を守る」と書かれていますが、武器をどんどん輸出しながら平和国家だなんて詭弁です。

 武器輸出が解禁された後、インドにはUS2という飛行艇とか、アラブ首長国連邦にはP1という哨戒機とか、いろんな国へ国産武器を売り込みました。しかし、まったく売れない。
 まず値段が高いこと、次に日本は戦争したことがない国で、国産武器を戦場で使った経験がないので信頼性が低いのです。
 安倍内閣での武器輸出の解禁から8年経ちましたけれども、売れたのはフィリピン向けの防空レーダーだけです。それでライセンス生産品や共同開発品を輸出すべきだとなるのです。

 ◆ 長射程ミサイルが武器の軸に

 安保3文書の改定の中身は敵基地攻撃能力の保有で、防衛力を抜本的に強化するために防衛費を5年間で43兆円にする、2027年度に国内総生産(GDP)の2%に倍増するとしています。
 問題は財源です。27年度には4兆円も不足するからです。

 そこで政府は護衛艦潜水艦の建造費に建設国債4343億円を計上しました。
 アジア太平洋戦争で敗戦色が濃厚になった政府が、大量の戦時国債を発行して財源にして、ズルズルと負け戦を続けた。その反省から「軍事費の財源として公債を発行することはしない」(1966年福田蔵相答弁)としたのに、政府自らその禁を破りました。
 税金としては、東日本震災復興特別所得税2.1%が2037年まで上乗せされるので、そのうちの1パーセントを転用することと、たばこ税を3円上げることを決めました。
 法人税については経団連の十倉雅和会長が反対していますし、昨年暮れの自民党の税制調査会でも2年連続で、いつ増税を始めるか決まらなかった。
 税外収入として、昨年の通常国会では「防衛力強化資金」を新設して、特別会計からの資金繰り入れや、独立行政法人の積立金の前倒しとか、歳出改革などをあげていますが、いずれも不安定な財源なので、結局、最後の最後には消費税増税に踏み切るのではないでしょうか。

 敵基地攻撃に使う武器類はその質が変わっています。例えば米政府から購入する巡航ミサイルトマホークは、200発のトマホークBlockⅣ(ブロック4)と200発のトマホークBlockⅤ(ブロック5)を合計400発、および14基の管制システム(TTWCS)等々を、総費用23億5000万ドル(約3500億円)で買うことにしました。
 ブロック4は低速で中国のレーダーに探知されやすく性能に疑問はあるのに急いで買った理由はまったく説明されていません。

 F15戦闘機から撃つ空対地とか、空対艦の長射程ミサイルのJASSM(ジャズム)も米政府から買います。
 また三菱重工に発注している12(ひとに)式地対艦誘導弾能力向上型島嶼(とうしょ)防衛用高速滑空弾極超音速誘導弾の3種の武器も開発を経て量産に入ります。
 F35に長射程ミサイルを積んで飛んでいけば(上図)、大きな機体にたくさんの爆弾を積んで相手の領土にガンガン落とすB29みたいな長距離戦略爆撃機の機能を果たします。
 日本海から撃てば朝鮮半島に届くし、東中国海から撃ったら中国に届きます。
 日本政府は「憲法第9条第2項で戦力に該当する武器は持てない、他国に脅威を与えるような戦力は持てない」(1988年参院予算委員会、瓦防衛庁長官)と明言し、具体例として①ICBM(大陸間弾道ミサイル)、②長距離戦略爆撃機、③攻撃型空母の3種類は「持てません」と何回も答弁しています。
 2023年度から開発や量産を始めた武器の中には、この3種類に該当するものが他にもあるのです。

 12式地対艦誘導弾は100km程度の短射程ミサイルで、攻撃してきた艦艇を撃沈するための防御的なミサイルですが、これを「能力向上型」にすると射程が1000km以上になる。陸上から発射したり航空機から発射したりして敵基地攻撃ができるように一変します。
 高速滑空弾は早期装備型と能力向上型と2種類あって、能力向上型の方は射程2000kmから3000km飛ぶ。日本列島は北から南まで3000kmもないわけですから、防御的に使うなんて言い訳はなりたたないですよ。
 護衛艦「いずも」型から搭載しているヘリコプターを降ろし、垂直離着陸戦闘機「F35B」を載せることを決めた(2018年閣議決定)ので、「いずも」は攻撃型空母に変わることになりました。空母とは「動く航空基地」で攻撃的兵器そのものです。

 ◆ 国産兵器の生産が強化される

 自衛隊が持ってる武器では戦闘機のF15とかF35は米国のライセンス生産品です。F2戦闘機は日米共同開発です。護衛艦はすべて国産ですが、イージス護衛艦の「イージス・システム」は米政府から買っています。
 戦車も国産で、10式戦車90式戦車74式戦車もすべて三菱重工で造っています。89式小銃も国産で、かなりの武器は国産です。
 安倍政権で米政府から米国製兵器の「爆買い」が始まり、防衛費が不足して、政府は2015年4月に特措法を作り、国内の防衛産業への支払いを5年の分割払いから10年払いに延長した。その「爆買い」もあって国内の防衛産業への発注が減り、衰退していきました
 安倍氏は『安倍晋三回顧録』の中で

「イージスアショアはFMS制度(米企業製の装備品を同盟国などに有償提供する対外有償軍事援助)の枠組みで最新鋭の装備として購入する予定でした。私はトランプ大統領との首脳会談でFMSを通じてF35戦闘機を147機購入する、イージスアショアは2基導入すると強調して、これだけ米国の兵器を買うんだと言って、米国の軍事力増強の要求をかわしてきたのです。『ありがとう晋三』とトランプに言われてきたのに、配備中止で『なんだ買わないのか』となったらまずいでしょう」

 と実に端的に言っています。米国製の武器を大量購入すること自体が安倍氏の対米政策だったと考えるほかない。
 国内の防衛産業と防衛省との取り引きは縮小していったので、政府は、昨年の通常国会で「防衛生産基盤強化法」を成立させました。防衛産業育成のために税制措置や優遇措置をする。撤退する場合には、その部門を国有化することにしたのです。

 冷戦が終ったあとに、米英仏などは国防費を削減し、山のようにあった防衛産業を束ねていきました。日本は冷戦後も地勢的位置づけは変わらないとして防衛費をあまり減らさなかったし防衛産業の統廃合も進めなかった。
 日本の大手防衛産業は7社三菱重工、三菱電機、川崎重工、IHI=旧石川島播磨重工、NEC、東芝、日本製鋼所)でその下請けは数千社になると言われています。米国やフランスの大手は5社、英国は1社です。
 例えば、三菱との契約は年間3000億円ぐらいですがアメリカとのFMSは23年度防衛費で1兆4000億円以上ですから、日本の防衛産業を全部足しても米政府との武器取引にはかなわないんです。

 米軍のオスプレイは24年度国防費で発注するのが最後です。本当はもっと海外に売れる前提でしたが日本が17機買っただけでどの国も買わなかった。これ以上ラインを維持しても無駄なので製造中止にしました。
 米軍は15回の墜落事故で65人の米兵を失っています。こんな欠陥機を購入したのは世界でも日本だけです。「国民の安全」より「米国の都合」を優先させた本末転倒の対米追従、日米同盟の結果です。

 ◆ 沖縄南西諸島を戦場にするな

 南西諸島への自衛隊配備が始まったのは2010年の民主党政権の防衛計画大綱からですが、自民党政権・安倍が現在の姿にしていきました。「中国の脅威に備える」ための配備のはずが、「中国の脅威になる」ための配備にがらりと変わってきています。政府は離島の人たちの保護はすると言って、12万人を九州に避難させる図上訓練を行い、シェルターも設置するとしています。米軍基地、自衛隊が集中する沖縄本島こそが一番危ないはずですが、沖縄県民の全員146万人を九州に運ぶためには73日間もかかるので、沖縄本島は「屋内避難」ということにしています。台湾有事に巻き込まれたら、沖縄全島は標的で、沖縄の人々は「令和の捨て石作戦」だと「再びの戦場化」と闘っています。
 本来なら、1月26日から始まる通常国会で「加速度を増す軍事力強化=攻撃できる国づくり」に対して論戦をしなければならないのに野党はその役を果たさず、絶望的な状況ですが、「新しい戦前」になる前にまともな国になるよう、選挙や日常の活動を通じて、共感できる政治家や仲間を増やしていかなければなりません。(文責 事務局)

とめよう戦争への道!『百万人署名運動全国通信 第315号』(2024年2月)

 


コメント    この記事についてブログを書く
« ◆ 権力による教育内容への管... | トップ | ☆ 自衛隊は災害救助に向いて... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

暴走する都教委と闘う仲間たち」カテゴリの最新記事