2020年2月26日
原子力規制委員会 更田豊志委員長殿◎ 安全対策が不十分で、かつ実効性のある防災・避難計画がない
もとでの女川原発2号機の再稼働の撤回を求める申し入れ書
もとでの女川原発2号機の再稼働の撤回を求める申し入れ書
みやぎ脱原発・風の会(事務局長 舘脇章宏)
本日2月26日、貴委員会が、東北電力女川原発2号機の適合性審査について正式に了解したことについて、私たちは多くの宮城県民とともに抗議いたします。
1.女川原発は、東日本大震災で大きな事故を起こした東京電力福島第一原発の隣県の宮城県にあります。
いまだに4万人以上の方が避難している現状のなか、一度原発事故を起こしてしまえば、地域に取り返しのつかない被害を与えてしまうことを、多くの宮城県民が危惧しております。何度世論調査をしても、再稼働に反対する意見が必ず多いのが現実です。
そのなかで、今回の適合性審査では、事故があった場合に、100テラベクレルまでは、環境に放出してかまわない、とされています。
それ自体、地域住民にとっては脅威以外のなにものでもありませんが、さらに貴委員会は、耐圧強化ベントを炉心損傷後に使用した場合には約360テラベクレルの放射能が放出されるという評価をしていたことが公表されました(2019年10月4日の事業者ヒアリングに提出された『自主対策設備に関する補足説明』)。
もちろん、東北電力は炉心損傷後には、耐圧ベントではなくフィルターベントを使用するので、実際にはそれほどの放出はないとしていますが、福島第一原発事故を見ても容易に想定されるように、事故の混乱のなかどう放射能が排出されるか大いに疑問です。
いずれにしても万が一事故があった場合、今の制度では100テラベクレルまでは放出してもおとがめなし、という審査では、私たちは安心して暮らすことができません。
2.適合性審査には、避難計画の実効性は担保されていません。
東日本大震災の時に、女川原発周辺も含め、多くの道が寸断され、津波で当然海路も使えない状況でした。
東北電力は多くの住民を女川原発の施設に避難させたと「美談」にしていますが、万が一女川原発で大量の放射能排出を伴う事故が起きていた場合、それは「悲劇」になっていたでしょう。
そして、その状態は現在も基本的には変わっていません。
現在、地元自治体が作成している「避難計画」ですが、例えば石巻市が作成している避難計画に関して、昨年11月に地元住民が仙台地裁に県と市に対して同意差し止めの仮処分申請を行っています。
その訴えによれば、実際に計画通り避難してみた結果、交通渋滞で30km圏内から脱出できない恐れや避難退域時検査所や受付ステーションを経て避難所までたどり着けない恐れがあること、風向きで避難先を変更する場合はどうするのか、指定された避難先で拒否されたら二次避難所はどうなるのかと様々な疑問が生じたとしています。
また、避難者受け入れの予定の仙台市は、「原発事故と地震・津波の複合災害は想定していない」「避難者の駐車場の確保は考えていない」としています。
なによりも、適合性審査に避難計画の実効性が入っていない日本の審査は、「世界一厳しい審査」とことあるごとに強調する政府の言い分が事実と全く反していることを明確に証明しています。この状態で、女川原発2号機の適合性審査を認めることは間違っています。
3.女川原発は東日本大震災で大きな被害を受けた「被災原発」です。
原子炉建屋では1000か所以上もひび割れが確認され、また、建屋の剛性、つまり変形のしにくさ、は7割も低下しています。数多くのタービンも損傷しました。
貴社はこれらの被害については、十分に補修し稼働に耐えるとしていますが、果たして本当にすべてを点検しつくしたのか、補修しつくしたのか疑問が残っています。
さらに、廃炉を決めた女川1号機の被害については、十分に解明されずに廃炉作業に入ろうとしており、いわば「証拠隠滅」のおそれがあります。
また、防潮堤の建設など3400億円もかけて安全対策工事をする、としていますが、その有効性も十分に検証されていません。
しかも、この巨額の対策費により、女川原発2号機は国内の原発で最も高くつくことが識者から指摘されています(大島堅一龍谷大学教授の試算)。
この現状で再稼働に道を開く審査結果を出す必要があるのでしょうか?
以上より、女川原発2号機を動かそうとするのは愚の骨頂であり、原子力規制委員会は女川原発2号機の適合性審査合格を撤回することを求めます。
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