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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

使える!労働契約法20条

2014年06月27日 | 格差社会
 均等待遇をめざす運動は労働契約法20条という「新しいツール」を手にした。そして始まった2つの裁判は、「非正規差別」の壁を揺さぶろうとしている。
  =提訴のすすめ=(『労働情報』)
 ◆ 労働契約法20条を活用した格差是正への挑戦
水口洋介・弁護士

 労働契約法が改正され、労働契約法20条は、有期契約労働者(有期社員)の労働条件が無期契約労働者(通常は正社員)の労働条件と比較して不合理な格差ではあってはならないと定めました。
 この20条は、①職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して不合理性を判断するとしています。
 この法律を活用して、今年、2つの事件を東京地裁に提訴しました。

 ◆ メトロコマース訴訟

 東京メトロコマース㈱は、東京地下鉄の子会社で、駅構内の販売店等を展開しており、約840名の従業員(正社員と有期社員の合計)を雇用し、営業収入は年間169億円に上ります。
 原告ら4名は、東京メトロコマースにて有期1年の労働契約を締結し、7年から10年にわたり更新して働いている店舗販売を担当するフルタイム有期社員です。
 各販売店には、正社員も有期社員も同様に配置され、有期社員も正社員と同一の業務に従事しています。店での販売、商品の注文・管理、売上金管理等、正社員と同じ仕事を担当し、責任も同様です。店舗間の異動も同様です。
 にもかかわらず、有期社員は時給制(1050円)で、フルタイムで働いても月額約17万円です。原告らと同一勤続期間の正社員の月額給与は25万円を下りません。
 住宅手当も正社員には月額9200円が支給されますが、有期社員はなし。
 賞与は、正社員は年間150万円支給されますが、有期社員は年間24万円程度。
 さらに退職金は、有期社員には一切支給されません。

 ◆ 給与規定も見せず
 正社員である販売員とまったく同一の職務に従事し、求められる責任も同様、異動範囲も同様であるにもかかわらず、前述のような著しい労働条件の格差は、不合理というしかありません。
 原告らは、全国一般東京東部労働組合に加入し、格差是正を要求して団体交渉を行ってきましたが、会社は正社員の給与規程や賃金なども明らかにせず、格差是正要求を拒否するという極めて不誠実な対応をしてきました。
 そこで5月1日、東京地裁に、基本給、住宅手当、賞与及び退職金につき、正社員との差額を損害として提訴したのです。6月から裁判が開始されます。
 ◆ 日本郵便訴訟

 日本郵便㈱の従業員は全体で約39万人、正社員以外の有期社員は約19万人で49%を占めています。
 有期社員には、時給制契約社員(約18万人)、月給制契約社員(約1万人)、エキスパート社員(約1400人)がいます。
 原告ら3名は、時給制契約社員です。職種は、郵便外務事務(郵便の集配業務)、郵便内務事務(郵便局内で窓口、郵便の仕分け業務等)です。
 原告らの時給は950円から1500円です。有期社員と正社員は同じ仕事の従事をしています。郵便集配業務であれば、正社員と有期社員が同じ郵便局の同じ集配部に配属されて、同一の班に所属し、同一の勤務シフト制で勤務時間が決められ、労働時間・残業時間・休日労働も正社員と同様です。
 にもかかわらず、正社員と有期社員の労働条件が異なります。明白な労働条件の格差は手当です。
 年末年始は年賀状、お歳暮などの配達で繁忙期に、郵便労働者は正社員・有期社員の違いなく、年末年始の郵便業務に従事します。正社員には年末年始手当が1日4000円から5000円が支給されます。ところが、同じく年末年始に働く有期社員には、この手当が支払われません。
 そのほか、住居手当や外務手当も正社員とは異なり、一切支払われません。
 賞与も、夏冬それぞれ月例賃金の3割が有期社員に支払われるだけです。正社員には、年間賞与は月例賃金の約3ヶ月が支払われます。
 ほかにも、夏季冬季休暇や病気休暇も正社員はとれますが、有期社員にはありません。
 ◆ 大阪でも提訴準備
 5月8日、この労働条件の格差是正を求めて、病気休暇を取得する地位や諸手当の支払いを求めて提訴しました。原告らは、郵政産業労働者ユニオンの組合員です。
 この諸手当の格差も労働契約法20条に違反する不合理な格差です。郵政産業労働者ユニオンは、大阪でも提訴の準備をしており、全国的な取り組みになるでしょう。
 ◆ 労働組合の支援が鍵
 民主党政権が、労働者の権利を守るために制定したのがこの労働契約改正法です。改正法施行から1年経過して、有期社員と応援する労働組合が立ち上がって提訴しました。
 このような正社員と有期社員の労働条件の格差は、多くの職場にあると思います。しかし、労働者個人で、格差是正を要求したら、雇止めされるのではないかと不安になり、多くの有期社員は声を上げることができません。実際に、相談を受けても提訴までできないという例は珍しくありません。
 やはり労働組合の支援と応援がないと、不合理な労働条件を是正する取り組みを広げることはできません。
 ◆ すべての労働者のために
 これに対して、企業側は、「有期社員の労働条件を改善するなら、正社員の労働条件を下げざるを得ない」とのおどしをかけてきます。
 しかし、正社員の労働組合が、この企業の脅しにひるめば、労働組合は一層弱体化し、結局、自分の権利も守れないことになるでしょう。
 労働組合が、すべての労働者の労働条件の改善のために取り組みを強める必要があります。この取り組みを強めることで、労働組合運動が社会的な共感と支持を得て、労働運動全体の力が強まると思います。
 すべての労働組合に、職場の有期社員の労働条件を調査して、格差是正の取り組みに力を入れるように呼びかけたいと思います。
 そして、全国各地で、この2つの事件に続いて、労働者・労働組合と弁護士が協力して裁判闘争を進めましょう。
『労働情報 889号』(2014/6/15)

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