◆ あらゆるところに自衛隊が入り込む (レイバーネット日本)
~ブックレット紹介『教育に浸透する自衛隊-「安保法制」下の子どもたち』
※「教育に浸透する自衛隊」編集委員会編、同時代社刊、2017年4月
*同時代社HPhttp://www.doujidaisya.co.jp/book/b286240.html
最近、近くの図書館からの帰りみち、すぐ脇で開かれていた市の主催する防災フェアをのぞいて驚いた。迷彩服の自衛隊員が、市民を足湯コーナーに招いて広報活動をし、自衛隊員の募集活動も展開していた。自衛隊が、少しも違和感をもたれずに市民生活に溶け込んでいる。
この本をよむと、しかし、驚いているほうが現実を知らないことに気づかされた。本書は、2014年に出版されたブックレット『高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れる教育行政』の続編にあたる。
2013年に都立田無工業高校の生徒が朝霞駐屯地(埼玉県)で「生活体験」行う、2014年には都立大島高校の生徒が武山駐屯地(神奈川県)で「生活体験」を行うという事態がおきて、これに対してブックレット編集委員会が東京都教育委員会に質問状を出す。このいずれも2011年の東日本大震災に名を借りた「防災訓練」をうたっていた。
都教委はこの質問状に対して「木で鼻をくくったような」回答に終始していたが、2015年度、2016年度には「生活体験」は行われていない。(本書巻頭「2014年-16年都教委への要請書・質問状提出経過の報告」)。粘り強く質問状を出すことが大切なのだ。
ところが、一方では中学生、高校生に対して「自衛隊員募集」のダイレクトメールが送られたり(東京、大阪、愛知)、インターンシップ(職場体験)という名目の体験入隊、基地見学、演習見学などが広がっている。
東京23区、大阪茨木市などでは、中学・高校の生徒達の情報が、そのまま自衛隊に提供されていることが、この本で明らかにされた。その根拠を行政は次のように説明する。
茨木市議会文教常任委員会での、山下けいき市議の質問に対する市民文化部長の答弁。
「自衛隊は優秀な人材を確保するために、自衛隊法の中でいろんな手続きを定めています。自衛隊法第29条を中心とした運用で、違法ではないという政府の見解が示されております。また住民基本台帳法の第11条に基づき制度上問題がありませんので、提供しました。」
これに対し、本書では「政府見解」と開き直って済むことではないと反論している。そのとおりであって、地域住民の保護を第一にすべき行政の立場が問われているのだ。
同時に、こうした募集活動は、「6人に1人」と言われる子どもの貧困につけ入ろうとする動きでもある。安保法制下の自衛隊が、死と向き合うことになり、募集が困難になるのは眼に見えているからだ。
この本が、教育現場に、自衛隊が入り込んできている様子を明らかにしたのには、大きな意義がある。
6月7日(水)のレイバーネット日本のメーリングリストに都営地下鉄駅務員のNさんの投稿がある。
改札口で勤務していると、男性が、「7月3日までの期日でお願いします」と言って、ポスターを置いていった。ポスターには、「あなたのやりたいことがきっと見つかる 陸・海・空 自衛官募集」の文字。置いていったのは、「自衛隊の広報官だった」。
Nさんは、「自衛官の募集ポスターを都営地下鉄の各駅に掲示するのは反対です! 都民のみなさん、都営地下鉄ご利用のみなさん、抗議の声を!」と呼びかけている。
自衛隊は教育現場に入り込んでいるだけではない。あらゆる場所で、本書の告発に応える声をひろげたい。【志真秀弘】
『レイバーネット日本』(2017-06-09)
http://www.labornetjp.org/news/2017/0609hon
~ブックレット紹介『教育に浸透する自衛隊-「安保法制」下の子どもたち』
※「教育に浸透する自衛隊」編集委員会編、同時代社刊、2017年4月
*同時代社HPhttp://www.doujidaisya.co.jp/book/b286240.html
最近、近くの図書館からの帰りみち、すぐ脇で開かれていた市の主催する防災フェアをのぞいて驚いた。迷彩服の自衛隊員が、市民を足湯コーナーに招いて広報活動をし、自衛隊員の募集活動も展開していた。自衛隊が、少しも違和感をもたれずに市民生活に溶け込んでいる。
この本をよむと、しかし、驚いているほうが現実を知らないことに気づかされた。本書は、2014年に出版されたブックレット『高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れる教育行政』の続編にあたる。
2013年に都立田無工業高校の生徒が朝霞駐屯地(埼玉県)で「生活体験」行う、2014年には都立大島高校の生徒が武山駐屯地(神奈川県)で「生活体験」を行うという事態がおきて、これに対してブックレット編集委員会が東京都教育委員会に質問状を出す。このいずれも2011年の東日本大震災に名を借りた「防災訓練」をうたっていた。
都教委はこの質問状に対して「木で鼻をくくったような」回答に終始していたが、2015年度、2016年度には「生活体験」は行われていない。(本書巻頭「2014年-16年都教委への要請書・質問状提出経過の報告」)。粘り強く質問状を出すことが大切なのだ。
ところが、一方では中学生、高校生に対して「自衛隊員募集」のダイレクトメールが送られたり(東京、大阪、愛知)、インターンシップ(職場体験)という名目の体験入隊、基地見学、演習見学などが広がっている。
東京23区、大阪茨木市などでは、中学・高校の生徒達の情報が、そのまま自衛隊に提供されていることが、この本で明らかにされた。その根拠を行政は次のように説明する。
茨木市議会文教常任委員会での、山下けいき市議の質問に対する市民文化部長の答弁。
「自衛隊は優秀な人材を確保するために、自衛隊法の中でいろんな手続きを定めています。自衛隊法第29条を中心とした運用で、違法ではないという政府の見解が示されております。また住民基本台帳法の第11条に基づき制度上問題がありませんので、提供しました。」
これに対し、本書では「政府見解」と開き直って済むことではないと反論している。そのとおりであって、地域住民の保護を第一にすべき行政の立場が問われているのだ。
同時に、こうした募集活動は、「6人に1人」と言われる子どもの貧困につけ入ろうとする動きでもある。安保法制下の自衛隊が、死と向き合うことになり、募集が困難になるのは眼に見えているからだ。
この本が、教育現場に、自衛隊が入り込んできている様子を明らかにしたのには、大きな意義がある。
6月7日(水)のレイバーネット日本のメーリングリストに都営地下鉄駅務員のNさんの投稿がある。
改札口で勤務していると、男性が、「7月3日までの期日でお願いします」と言って、ポスターを置いていった。ポスターには、「あなたのやりたいことがきっと見つかる 陸・海・空 自衛官募集」の文字。置いていったのは、「自衛隊の広報官だった」。
Nさんは、「自衛官の募集ポスターを都営地下鉄の各駅に掲示するのは反対です! 都民のみなさん、都営地下鉄ご利用のみなさん、抗議の声を!」と呼びかけている。
自衛隊は教育現場に入り込んでいるだけではない。あらゆる場所で、本書の告発に応える声をひろげたい。【志真秀弘】
『レイバーネット日本』(2017-06-09)
http://www.labornetjp.org/news/2017/0609hon
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