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再雇用拒否二次訴訟第7回弁護団陳述

2011年05月03日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 《再雇用拒否二次訴訟第7回弁護団陳述》
 ◎ 準備書面(8)要約
 ~起立斉唱命令は法律の授権のない違法な命令

2011.4.25 石井庸久(弁護士)

1 本準備書面(8)は、
 「10.23通達→職務命令→懲戒処分→採用拒否」という10.23通達を核心とする一連の仕組みによる国旗・国歌の強制が、
 ①法律に基づかない国民に対する義務付け、権利の制約に該当し、違憲であること
 ②10.23通達などによる国旗・国歌の強制が、学習指導要領に基づくものであり、これを法律上の根拠とする旨の被告の主張が失当であること

 について論じたものです。

「報告集会」 《撮影:平田 泉》

2 10.23通達を核心とする一連の国旗・国歌の強制には、法律上の根拠(法律に基づく授権)がありません。
 被告は、答弁書において、「10.23通達は、学習指導要領に基づく」、「法規としての効力を有する学習指導要領が、入学式や卒業式などにおいて国旗・国歌の指導をすることを特定的に命じている」と主張し、10.23通達の法律上の根拠を、学習指導要領にもとめています。
 ところで、行政機関が国民に義務を課し、または国民の権利を制約するには、主権者である国民の代表機関である国会で成立した法律によることを要します(憲法41条)。
 しかし、学習指導要領自体は、一行政機関である文部科学省による単なる「告示」であり、国会が制定した「法律」ではありません。
 したがって、学習指導要領に基づいて国民に義務を課し、またはその権利を制約するためには、「法律の授権」が必要となります。
 では、本件において「法律の授権」はあるのでしょうか。
 まず、学習指導要領は、学校教育法に基づいて制定されていますが、同法は、学習指導要領に「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ」と命令を発することも、命令に従わない教員に対して不利益を課すことも、まったく委任していません。
 さらに、国旗国歌法も、制定過程での国会における議論を前提に国民の国旗・国歌に対する尊重義務を定めず、学習指導要領において国旗・国歌の一律強制を定め、これに従わない教員に不利益を課することは、何ら授権していません。
 このように、被告において、例外を認めることなく、一律に国旗・国歌の強制を行い、もって原告らに国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務を課し、または原告らの思想良心の自由を制約することについて、法律上の根拠(法律にもとづく授権)は何ら存在しません。
 したがって、10.23通達を核心部分とする一連の国旗・国歌の強制の仕組みは、憲法第41条に反し、違憲です。
3 次に、被告は、10.23通達の法律上の法的根拠を、学習指導要領にもとめています。しかし、
 ①学習指導要領から、直ちに10.23通達が導き出されるわけではありません。
 むしろ、②10.23通達は、学習指導要領に反します。


4 旭川学テ事件判決によれば、
学習指導要領は、あくまで大綱的な基準であり、被告主張のように「何かを特定的に命じる法規としての性質を有する」ものではありえず、かえって国旗・国歌の指導の具体的な方法や態様については、多様な選択の幅を残しています。
 しかし、10.23通達の内容は、国旗・国歌の指導の具体的な方法や態様について、一切の選択の幅を残していません。明らかに学習指導要領とは相容れません。
 したがって、学習指導要領は、10.23通達の正当性を支える根拠とはなりえません。
 よって、学習指導要領から10.23通達が直ちに導かれる旨の被告の主張は誤りです。
5 むしろ、10.23通達は、次に述べるのように、学習指導要領に反します。
(1)学習指導要領は、その冒頭で、高等学校における全ての教育活動にあてはまる基本理念について、
 各学校に対し、地域や学校の実態、過程や学科の特色及び生徒の心身の発達段階や特性等を考慮した上で、創意工夫を加え、生徒の個性を生かせる教育課程を編成せよと規定し、
 第4章「特別活動」の冒頭では、「望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と伸長を図り、集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養」えと規定しています。
 また、学習指導要領は、特別活動における指導の基本理念について、学習指導要領の冒頭と同様に、
 特別活動においても、「学校の創意工夫を生か」せ、「学校の実態や生徒の発達の段階及び特性等を考慮」せよ、「生徒による自主的、実践的な活動が助長」せよとも規定しています。
 そして、国旗国歌指導条項は、「・・指導するものとする。」と定めていますが、この「ものとする」という法令用語は、一切の例外を許さない義務規定としてではなく、合理的な理由があれば、例外を認めるという意味を表す趣旨で用いられるものです。
 さらに、学習指導要領は、国旗・国歌の指導にあたり、自国の国旗・国歌のみならず、諸外国の国旗・国歌をも相互に尊重する態度を育てるよう配慮を求めています。
 しかし、被告は、10.23通達において、国旗の掲揚の位置等について、極めて細目的、かつ、詳細に指示しています。そして、これらの指示は、各学校の裁量を一切認めない一義的な内容となっており、個々の生徒の個性に応じた指導、教師による創造的かつ弾力的な教育実践を完全に不可能にしています
 そうすると、被告による国旗・国歌の一連の仕組みによる強制は、
 ①各学校に、創意工夫を加えた生徒の個性を生かすための入学式や卒業式等の実施の余地を残さず、
 ②各学校の特色を生かす余地を全く与えない結果、たとえば、卒業式という生徒にとって学校生活最後の集大成の場において、教師から、生徒に「生きる力」をはぐくむ機会を完全に奪い去り、
 ③車いすの生徒がいる養護学校や、外国籍の学生が多数在籍する学校の実態や、生徒の発達段階・特性等も一切考慮せず、
 ④「するものとする」という法令用語の本来の意味を完全に無視した、合理的な例外を一切認めない画一的な強制となっており、
 さらには、⑤諸外国の国旗・国歌を相互に尊重する態度を育てる配慮どころか、単に日本の国旗・国歌のみを尊重を強制する形となっているなど、
 学習指導要領の規定及びその理念にことごとく違背しているのです。
(2)さらに、旭川学テ事件判決は、生徒一人一人の個性に応じた教育の実現のために、教師の教育の自由を一定の範囲で認めています。また、教育行政機関の教育内容の決定に関する権限を、原則として、ごく大綱的な基準の設定に限定しています。
 このように、同判決は、生徒達に対する教育の内容決定について、生徒達の個性に応じた、教師による教育の自由を認め、かつ、行政機関による教育内容決定に対する介入の抑止的態度の必要性を述べた上で、学習指導要領について、合憲・合法としているのです。
 とすれば、学習指導要領の国旗国歌条項を具体的に実施、運用する際には、上述した学習指導要領が生徒の個性・主体性、各学校の創意工夫を認めた趣旨を反映させなければなりません
 しかし、10.23通達は、入学式等での国旗掲揚・国歌斉唱の方法について、式典会場の設営方法等について、極めて細目的、かつ、詳細に指示するなど各学校の裁量を認めない一義的な内容になっており、個々の生徒の個性に応じた指導も、教師による創造的かつ弾力的な創意工夫のある教育実践も不可能にしています。
 よって、10.23通達は、学習指導要領に反します。
(3)以上のとおり、被告による10.23通達を核心部分とする国旗・国歌強制の一連の「仕組み」は、学習指導要領に基づいているなどということはできず、むしろこれに反しているのです。
6 以上より、10.23通達を核心とする国旗・国歌の強制が、学習指導要領に基づくものであるとする被告の主張は、失当です。
 以上

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