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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

人と人とのコミュニケーションを基盤にした、従来の教育のあり方大きく変えかねない「学校のデジタル化」

2021年08月04日 | こども危機
 ◆ 今高校現場で起こっていること
   ~「学校のデジタル化」を中心に
(『いまこそ』)


 昨年来のコロナウィルスの感染拡大とそれに伴う「緊急事態宣言」発出のもとで、学校現場には大きな混乱が生じたとともに、教育のあり方そのものが大きく変貌してきています。
 今の高校現場について、自分の勤務する高校を例にしつつ「学校のデジタル化」を中心に、その一端をご紹介します。
 この間、都教委は、「コロナウイルス感染防止対策」や「分散登校」などの設定について一方的かつ概略的に「通知」を出すだけに終始し、具体的な対応策については現場教職員に「丸投げ」しています。
 まさに現場教職員の必死の努力で何とか保ってきた、というのが現実であり、私はこのことにまずもって大きな怒りを感じています。また現場任せか、と言わざるを得ません。
 しかし、そのことはさておき、このかん、分散登校による「自宅学習」の増加によって、「オンライン授業」に関わる技術が一気に進み、
 まさに2,3年前には想像すらできなかった形での授業が行われるようになりました。
 この「オンライン授業」で本校で使われているものが、Microst社の「Teams」というアプリです。
 「オンライン授業」というと、学校(教員)→生徒という一方的なもの、と考えがちですが、このTeamsは、生徒→教員という形で、生徒が配信の時間に受講しているかどうかはもちろん、生徒からの意見や質問なども受けることができる、という双方向性の機能を持っています。
 教員が配信する授業としては、本校では、教員が通常行っている授業をカメラで撮影し、それをTeamsにのせて配信する(撮影は無人の教室で行う場合もあるし、教員が自宅で行う場合もあります)という形が主ですが、中には教員の姿が登場せず、パワーポイントで教材を送ってそれをマイクで説明しつつ授業する、という場合もあります。
 そこだけとれば、このシステムは、学校で授業を受けることとあまり変わりがないように見えますが、しかしやはり多くの問題をはらんでいると思います。
 まず第一に、この通信システムを設定する担当の教員の負担が非常に大きいものになります。
 通信環境によってはTeamsがつながらない場合も出てきますので、それを防ぐために担当教員は常に注意していなければなりません。
 また、担当の教員以外でもこのシステムを使いこなすには新しい技術や知識が必要であり、私のような「古い」教員には正直負担です。
 なにより、「オンラインができない教員はダメ教員」というような風潮にまでつながるような恐れを感じます。
 第二に、生徒の側の負担です。
 「オンライン授業」に関わる機器や通信費は、生徒の側の自己負担です。
 また、スマホの小さな画面を、場合によっては数時間も見ているのはかなり辛いことです。実際、「途中で寝てしまった」という声も聞きました。
 このシステムが続けば、「ついていける生徒」「ついていけない生徒」がはっきり分かれてくるように思います。
 「ついていける」生徒だけを伸ばす、という「エリート教育」にはある意味もってこいであり、だからこそ、コロナ禍を利用して、文科省や都教委は「オンライン授業」を推進せよ、と強く言うのではないでしょうか。
 第三に、このシステムが更に進めば、近い将来、パワーポイントの教材を配信してそれをAIが解説する、というような形で教員がいらなくなるのでは、という危惧も感じます。
 少なくとも、数時間の授業の場合には講師を頼むよりは安く済む、となれば文科省・都教委は実際にやりかねない、と私は思います。
 何より、人と人とのコミュニケーションを基盤にした、従来の教育のあり方が大きく変えられてしまうということ、そのこと自体の危険性を忘れてはならないと思います。
 私自身現場で働くものとして、「デジタル」化には一定対応しなければならないのですが、同時に、そのことの持つ意味や狙いも常に考えていきたいと思っています。(A・H)
『いまこそ 23号』(2021年7月10日)


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