《止めよう!教育の民営化・非正規職化⑪私学教員の非正規化》
▼ 明日の保障もない非正規教員/こんな働かせ方は間違っている!
ある私立高校の時間割。白は専任教員で特進クラスは白ばかり
全国の私立高校で非正規教員が増えている。文科省の調査によれば、2011年には常勤講師が7・3%、非常勤講師が29・6%、合わせて約37%の約3万4千人に達し、10年で1割近く増えている。
少子化で生徒数が減少し、経営難の高校が増え、総経費の7割を占める人件費を抑えるためだという。大手派遣会社によれば、首都圏の私立高で働く非常勤講師の待遇は、50分授業あたり平均2800円程度。手当のつかない時間外労働が当たり前のように押しつけられている。
■ 広がる派遣教員、偽装請負も
学校と直接雇用契約を結ばす、人材会社から派遣された講師が授業を受け持つケースも増えている。
科目数の増加など急なニーズに間に合わせられ、自前で人材を探せない学校には便利なためだという。
全国私教連が傘下の私立校を調査したところ、回答があった262校中、少なくとも35校で計140人が人材会社から派遣を受けたり業務委託として授業を請け負う講師がいることが分かった。
業務委託による授業など、完全な偽装請負だ。埼玉県の正智深谷高校では、人材派遣会社イストと委託契約を結んで、女性講師に学習指導をさせていた。女性講師とイストとの契約も「個人請負」とされ、二重の委託契約となっていた。
1コマ9000円の契約で16コマの授業をして14万4千円を受けとっていたが、学校側の指示で補講やテスト作成もさせられていたという。
女性の申告を受けた東京労働局は、偽装請負にあたるとして、学校と派遣会社に是正指導を行った。
■ 「電話一本で学校までお連れします」
この問題をきっかけに、NHKは派遣教員の実態を取材し、11月20日の「クローズアップ現代」で「広がる“派遣教師”教育現場で何が」が放映された。
派遣教員の存在を保護者や生徒に知らせていない学校が多く、文科省も調査をしていないため、その詳しい実態はよくわからない。しかし今回のNHKの調査では、教員派遣会社は都内に5社あって1社だけで100人以上を派遣しており、3年前の5倍に増えているという。
なぜ、ここにきて派遣教員が広がるのか。私学の経営者が「直接契約の先生は生徒や保護者とのつながりも出ますし、経営の都合だけではなかなか切れない。派遣の先生とは、契約関係は派遣会社での関係なので、一つの“調整弁”ですね」と語れば、人材会社の社長は、「全員専任をとるというのは、学校にとってはかなりのリスク、そこにまだ大きなマーケットがある。」と語る。
「お電話ありがとうごさいます。英語ですね。来週早々にお連れできると思いますので。」登録者9000人、首都圏の51校に117人を派遣するという人材会社の営業風景も映し出されていた。
■ 特進クラスは専任、一般クラスは非正規
教員採用が狭き門となる中で、正規教員になれない若者が派遣会社に登録するケースが増えている。
数学の派遣教師をしている20代の男性は、月収は手取りで17万円、専任教員の半分以下。最近、「この学校では派遣で3年、非常勤など学校との非正規契約でさらに6年、そこまで勤め上げなければ専任教員になるチャンスはない」と告げられた。
「安定した職にならない限り、不安があるので授業に集中できない」「契約にしばられて、思うように生徒に接することができない」など、派遣教員の声が紹介されていた。
ショッキングだったのは、教員の雇用形態によって色分けされたある私立高校のクラス別の時間割表だ。
横がクラス、縦が曜日と時間で、派遣は赤、非常勤は黄色、専任教員は白で表示されている。
1学年に3つある難関大学をめざす特進クラスは、全部白。それ以外の一般クラスは、大半が赤や黄色だ。
非正規教員に教えられた生徒たちが非正規労働者になる。
教育が営利追求の場となり、コスト優先の非正規職化が進めば、機会均等も破壊される。
公立学校でも土曜補習を進学塾に業務委託したり、TTに派遣教員を充てる動きが広がっている。
行き着く先は、学校丸ごとの業務委託=公設民営化だ。教育の民営化、非正規職化をとめよう。
『教育労働者全国通信 第34号』(2012.12.19)
▼ 明日の保障もない非正規教員/こんな働かせ方は間違っている!
ある私立高校の時間割。白は専任教員で特進クラスは白ばかり
全国の私立高校で非正規教員が増えている。文科省の調査によれば、2011年には常勤講師が7・3%、非常勤講師が29・6%、合わせて約37%の約3万4千人に達し、10年で1割近く増えている。
少子化で生徒数が減少し、経営難の高校が増え、総経費の7割を占める人件費を抑えるためだという。大手派遣会社によれば、首都圏の私立高で働く非常勤講師の待遇は、50分授業あたり平均2800円程度。手当のつかない時間外労働が当たり前のように押しつけられている。
■ 広がる派遣教員、偽装請負も
学校と直接雇用契約を結ばす、人材会社から派遣された講師が授業を受け持つケースも増えている。
科目数の増加など急なニーズに間に合わせられ、自前で人材を探せない学校には便利なためだという。
全国私教連が傘下の私立校を調査したところ、回答があった262校中、少なくとも35校で計140人が人材会社から派遣を受けたり業務委託として授業を請け負う講師がいることが分かった。
業務委託による授業など、完全な偽装請負だ。埼玉県の正智深谷高校では、人材派遣会社イストと委託契約を結んで、女性講師に学習指導をさせていた。女性講師とイストとの契約も「個人請負」とされ、二重の委託契約となっていた。
1コマ9000円の契約で16コマの授業をして14万4千円を受けとっていたが、学校側の指示で補講やテスト作成もさせられていたという。
女性の申告を受けた東京労働局は、偽装請負にあたるとして、学校と派遣会社に是正指導を行った。
■ 「電話一本で学校までお連れします」
この問題をきっかけに、NHKは派遣教員の実態を取材し、11月20日の「クローズアップ現代」で「広がる“派遣教師”教育現場で何が」が放映された。
派遣教員の存在を保護者や生徒に知らせていない学校が多く、文科省も調査をしていないため、その詳しい実態はよくわからない。しかし今回のNHKの調査では、教員派遣会社は都内に5社あって1社だけで100人以上を派遣しており、3年前の5倍に増えているという。
なぜ、ここにきて派遣教員が広がるのか。私学の経営者が「直接契約の先生は生徒や保護者とのつながりも出ますし、経営の都合だけではなかなか切れない。派遣の先生とは、契約関係は派遣会社での関係なので、一つの“調整弁”ですね」と語れば、人材会社の社長は、「全員専任をとるというのは、学校にとってはかなりのリスク、そこにまだ大きなマーケットがある。」と語る。
「お電話ありがとうごさいます。英語ですね。来週早々にお連れできると思いますので。」登録者9000人、首都圏の51校に117人を派遣するという人材会社の営業風景も映し出されていた。
■ 特進クラスは専任、一般クラスは非正規
教員採用が狭き門となる中で、正規教員になれない若者が派遣会社に登録するケースが増えている。
数学の派遣教師をしている20代の男性は、月収は手取りで17万円、専任教員の半分以下。最近、「この学校では派遣で3年、非常勤など学校との非正規契約でさらに6年、そこまで勤め上げなければ専任教員になるチャンスはない」と告げられた。
「安定した職にならない限り、不安があるので授業に集中できない」「契約にしばられて、思うように生徒に接することができない」など、派遣教員の声が紹介されていた。
ショッキングだったのは、教員の雇用形態によって色分けされたある私立高校のクラス別の時間割表だ。
横がクラス、縦が曜日と時間で、派遣は赤、非常勤は黄色、専任教員は白で表示されている。
1学年に3つある難関大学をめざす特進クラスは、全部白。それ以外の一般クラスは、大半が赤や黄色だ。
非正規教員に教えられた生徒たちが非正規労働者になる。
教育が営利追求の場となり、コスト優先の非正規職化が進めば、機会均等も破壊される。
公立学校でも土曜補習を進学塾に業務委託したり、TTに派遣教員を充てる動きが広がっている。
行き着く先は、学校丸ごとの業務委託=公設民営化だ。教育の民営化、非正規職化をとめよう。
『教育労働者全国通信 第34号』(2012.12.19)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます