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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

18歳選挙権:学校が生徒たちの思想を調べ、監視することは許されるのか

2016年05月24日 | 平和憲法
  【東京新聞 社説】
 ◆ 週のはじめに考える 主役は君たち、高校生 (TOKYO Web)


 夏の参院選では十八歳選挙権が実現します。高校生の政治活動制限も条件つきながら緩和されました。自ら問いを立て、社会へ思いをぶつける好機です。
 ○ 福島県立福島高校
 「現在の高校は人格形成の場ではなく、大学受験のベルトコンベヤーと化しており人間不在の教育と化している」=一九六八年送辞
 ○ 私立麻布高校
 「受験体制の中で羊のごとく飼いならされ、反抗することを忘れていた私たちも、主体性を取り戻そうとする第一歩を踏み出す」=六九年答辞
 ◆ 今に通じる問題意識
 ○ 広島県立呉宮原高校
 「戦争に向かって着々と進む軍備の拡充、教育の反動化、生徒の人間性を認めない学校や社会に対し、我々は強い反抗心を抱いている」=六九年送辞
 ○ 岐阜県立多治見北高校
 「先生たちの中にはポスターを検閲したり、ビラ配布を拒否したり、生徒会活動に首を突っ込む、かちかち人間がいた。監視された生活より、人間らしく生きる生活がほしかった」=七〇年答辞
 東大安田講堂事件に象徴される大学紛争は六〇年代から七〇年代初めにかけて、全国各地の高校にまで広がった。その時代の卒業式で、生徒たちが述べた送答辞からの抜粋です。
  (小林哲夫著『高校紛争1969-1970』)

 政治や学校教育の在り方について、生徒たちは自ら問いを立てました。今でも通じる問題意識が読み取れるのではないでしょうか。
 そうした考えや価値観は、頭髪や制服制帽の自由化、定期試験廃止、学費値上げ阻止といった身近な要求へと転じます。
 さらにはベトナム戦争反対、沖縄奪還、日米安全保障体制粉砕のようなグローバル規模の要求へと高まった。
 ◆ 管理優先の行政体質
 だが、一部は表現方法を誤ります。授業妨害や校長室占拠、バリケードで学校を封鎖したり、機動隊と衝突して火炎瓶を投げたり。暴力や破壊に走ってしまった。
 翻って、今はどうでしょう。
 安保法案にあらがった昨年の国会前デモ
 自由の森学園高校(埼玉)から参加した有志たちは歌を熱唱しました。例えば、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中歌「民衆の歌」。自由で平等な社会への願いを込めて。
 新聞を読み比べて学んだという二年生の田上凪(なぎ)さん(16)は「平和を求めるんだから、怒りをぶつけるんじゃなく平和的にやりたい。大切なのは、僕たち一人一人が意見を持ち、発信すること」。ネット世代の感性がにじみます。
 生徒たちの過激化を抑え込もうと、文部省は六九年に、校内外を問わず政治活動を一律に禁止しました。憲法で保障された集会や結社、表現の自由、良心や思想の自由を傷つけてまで、現実政治から高校生を遠ざけてしまった。
 学校は管理統制を強めます。
 生徒会の自治はもがれ、実力行使を伴う運動は衰えた。
 代わって、無気力、無関心、無責任の“三無主義”の空気に覆われていった。

 六七年に70%近くあった総選挙での二十代の投票率は、二年前は33%足らずでした。
 全世代で下落傾向にあるものの、破格の急降下ぶり。民主主義の維持に欠かせない問いを立てる人、意見のある人は育っていないのでしょうか。
 実は、先生たちも萎縮気味のようなのです。授業の公正中立を求められ、生々しい政治問題は扱いにくいからです。四十年近く東京都立高校に勤めた元社会科教員の安達三子男(みねお)さん(67)は語ります。
 「広島を訪問するオバマ米大統領が謝罪しないのはなぜか。それじゃ、安倍首相はパールハーバーを訪問して謝罪するべきか。そんな議論にこそ意味があるのに、難しいかもしれません。政治的中立性というのは、現状追認と同じことです」
 十八歳選挙権の実現を前に、文部科学省は四十六年ぶりに、校外に限り政治活動を認めました。ところが、紛争のトラウマ(心的外傷)からか、学校への届け出を課すこともできると言い出した。
 愛媛県の高校のように、校則で事前の届け出を定める動きが早速現れた。暴力に巻き込まれないよう、学業がおろそかにならないよう見守るという建前です。
 ◆ 問いを立てて熟議を
 でも、それでは生徒たちの思想を調べ、監視するに等しい。就職や進学に不利にならないかと困惑して、政治への関心を失えば、主権者教育の理念とも矛盾する。
 制限そのものが憲法や子どもの権利条約に反し、人権を損ねているとの声も大きくなっています。自ら問いを立て、仲間や親たちと熟議をし、考えを表明するべき重大な問題ではないでしょうか。
 主役は君たち高校生。その力こそが民主主義を鍛えるのです。

『東京新聞』(2016年5月22日【社説】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016052202000168.html
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