=メディアの今 見張り塔から(『東京新聞』【日々論々】)=
◆ 日本青年会議所との協定
責任問われるツイッタージャパン
ツイッターの日本法人「ツイッタージャパン」は二月十日、地域の若手経営者らがつくる「日本青年会議所(JC)」とメディアリテラシー向上の取り組みに関してパートナーシップ協定を結んだことを発表した。
ソーシャルメディアの普及により情報の取得・発信が極めて容易になる一方、情報の氾濫、過激主義・排外主義の台頭、デマをはじめとする偽情報の蔓延(まんえん)、嫌がらせの横行といった負の側面も看過できない問題となっており、ソーシャルメディア各社にとっても、社会全体にとっても、メディアリテラシーの向上は喫緊の課題となっている。
協定では、「多量の情報群を正確に読み解く力」「情報の真偽を見抜く力」「情報をスムーズに検索し正しく活用する力」「適切な情報の発信を行う力」の向上・確立を目指すことを掲げている。
その一環として、JCメディアリテラシー確立委員会が公式アカウント「情報を見極めよう!」を開設し、メディアリテラシーやモラル向上に向けた啓蒙(けいもう)活動を実施するとされた。
ツイッタージャパンはこの提携を大々的に取り上げ、同社の公式アカウントからJCの啓発アカウントをフォローするよう呼びかけた。
その直後から、協定を疑問視する声が相次ぎ、JCの啓発アカウントが保守派として知られる著名人の意見や、産経新聞の記事ばかりをリツイートし始めた。
驚いたのは、この協定に疑問を投げかけた筆者のツイートに対してJC幹部が「発狂」という強い言葉で非難するツイートを投稿し、それを啓発アカウントがリツイートしたことだ。
「発狂」という言葉が反論であるとは思えず困惑した。
両者の提携に批判が相次いだ背景には、JCが過去に起こした同様の問題がある。
JCは一七年十二月に「宇予くん」というアカウントを開設し、JCとの関係を隠した上で中国や韓国、報道機関、政治家、個人に対する排外主義的な投稿や諫謝中傷を繰り返していた。
のちにJCとの関係が明らかになり、JCは謝罪に追い込まれた。再発防止に向けて、コンプライアンスチェヅクを徹底すると約束したにもかかわらず、今回同様の現象が起きてしまったということだ。
しかし、今回の騒動でより責任が問われるのは、月間四千五百万人の利用者を誇り、社会的影響力の大きいツイッタージャパンであろう。
同社は過去に問題を起こしたJCにメディアリテラシー啓発を委ねた理由について「過去の問題を反省し、リテラシー教育を進めようとする姿勢を支援するために連携を決めた」としながらも、こうした運用は想定外だったと弁解する。
だが、過去に問題を起こし、信頼回復の途上にある組織をあえて起用したのであれば、こうしたことも想定してしかるべき事態だったはずだ。
協定が締結された際、ツイッタージャパンの笹本裕社長は、これをきっかけに企業経営者にツイッターを有効活用してもらいたいと語っていた。
同社が求めていたのは、JCによるリテラシー啓発だったのか、それとも三万を超える企業経営者からなるJCの会員ネットワークとのつながりだったのか。真相は闇の中である。
(毎月第4木曜日に掲載)
◆ 日本青年会議所との協定
責任問われるツイッタージャパン
ジャーナリスト・津田大介さん
ツイッターの日本法人「ツイッタージャパン」は二月十日、地域の若手経営者らがつくる「日本青年会議所(JC)」とメディアリテラシー向上の取り組みに関してパートナーシップ協定を結んだことを発表した。
ソーシャルメディアの普及により情報の取得・発信が極めて容易になる一方、情報の氾濫、過激主義・排外主義の台頭、デマをはじめとする偽情報の蔓延(まんえん)、嫌がらせの横行といった負の側面も看過できない問題となっており、ソーシャルメディア各社にとっても、社会全体にとっても、メディアリテラシーの向上は喫緊の課題となっている。
協定では、「多量の情報群を正確に読み解く力」「情報の真偽を見抜く力」「情報をスムーズに検索し正しく活用する力」「適切な情報の発信を行う力」の向上・確立を目指すことを掲げている。
その一環として、JCメディアリテラシー確立委員会が公式アカウント「情報を見極めよう!」を開設し、メディアリテラシーやモラル向上に向けた啓蒙(けいもう)活動を実施するとされた。
ツイッタージャパンはこの提携を大々的に取り上げ、同社の公式アカウントからJCの啓発アカウントをフォローするよう呼びかけた。
その直後から、協定を疑問視する声が相次ぎ、JCの啓発アカウントが保守派として知られる著名人の意見や、産経新聞の記事ばかりをリツイートし始めた。
驚いたのは、この協定に疑問を投げかけた筆者のツイートに対してJC幹部が「発狂」という強い言葉で非難するツイートを投稿し、それを啓発アカウントがリツイートしたことだ。
「発狂」という言葉が反論であるとは思えず困惑した。
両者の提携に批判が相次いだ背景には、JCが過去に起こした同様の問題がある。
JCは一七年十二月に「宇予くん」というアカウントを開設し、JCとの関係を隠した上で中国や韓国、報道機関、政治家、個人に対する排外主義的な投稿や諫謝中傷を繰り返していた。
のちにJCとの関係が明らかになり、JCは謝罪に追い込まれた。再発防止に向けて、コンプライアンスチェヅクを徹底すると約束したにもかかわらず、今回同様の現象が起きてしまったということだ。
しかし、今回の騒動でより責任が問われるのは、月間四千五百万人の利用者を誇り、社会的影響力の大きいツイッタージャパンであろう。
同社は過去に問題を起こしたJCにメディアリテラシー啓発を委ねた理由について「過去の問題を反省し、リテラシー教育を進めようとする姿勢を支援するために連携を決めた」としながらも、こうした運用は想定外だったと弁解する。
だが、過去に問題を起こし、信頼回復の途上にある組織をあえて起用したのであれば、こうしたことも想定してしかるべき事態だったはずだ。
協定が締結された際、ツイッタージャパンの笹本裕社長は、これをきっかけに企業経営者にツイッターを有効活用してもらいたいと語っていた。
同社が求めていたのは、JCによるリテラシー啓発だったのか、それとも三万を超える企業経営者からなるJCの会員ネットワークとのつながりだったのか。真相は闇の中である。
(毎月第4木曜日に掲載)
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