◆ 分割・民営化の真実
-地方の切捨てー (週刊新社会)
国鉄の分割・民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する収容センターに送り込み、労働者.鉄道マンとしての誇りを奪って強行し、誕生させた「新生JR」。時の政権が進めてきた国鉄解体=分割・民営化=JR会社設立という国策が30年を経過した中で見えてきたものは、「うその大宣伝と利権獲得での大儲け、そして労働組合.労働運動破壊」(坂口智彦国労委員長)ではなかったのか。国鉄の分割民営化に反対した国労は、必ずや口-カル線の廃止や安全が破壊されるだろうと訴えてきた。そして今、それが現実のものになっている。
1987年の国鉄改革は、地方の赤字路線をできるだけ維持していくことが前提だった。実際、JR発足後に廃止が決まったのは全国でも9路線しかない。北海道管内は5路線であった。
全国の赤字ローカル線「特定地方交通線」83線であったが、本州三社は他の黒字路線収益でカバーし、三島会社には経営安定基金を設け、その運用益で路線を維持していく方法を採用した。
しかし、利益追求する民営化の下で、国民の足は脅かされる事態となっている。2000年以降、全国で廃線となったのは39路線7771.1キロである。
しかも、JR北海道が赤字路線を維持するための代償だった経営安定基金の運用益は、金利低下で当初見込みより不足した分の総額は過去30年間で約430億円にのぼる。国からの追加支援は1200億円の無利子融資などに限られ、同社の経営は悪化した。
JR北海道が見直し対象として昨年11月に公表した10路線13区間の総延長距離は、現在の路線の半分近くに及ぶ。赤字路線を極力維持することを前提にした「スキーム」は破綻したと言えるだろう。
石井啓一国土交通相は「人口減少が進み、マイカーなど他の交通手段や高速道路が拡充した」と北海道の地域性に原因があるとの主張だが、麻生太郎財務相は、国がJR北海道に対して行つてきた資金支援を「弥縫策だ」「根本に手を着けずにこの間題を解決するのは無理」と抜本的な支援の必要性を指摘した。「JR北海道をJR東日本と合併させるしかー2/28」参院予算委(『北海道新聞』3/28)。
◆ ドル箱路線をもっ「東日本」「東海」「西日本」に対し、北海道、四国は苦境
2016年3月の業績(本業のもうけを示す営業損益)は、
JR北海道▲352億円、
JR東日本4878億円、
JR東海5786億円、
JR西日本1815億円、
JR四国▲90億円、
JR九州208億円、
JR貨物0(15年ぶり赤字脱却)。
北海道、四国は鉄道事業が厳しく、貨物を含む3社は道筋が見えない。
とくに、北海道は深刻だ。16年3月期には352億円の営業損失を計上した。経営安定基金(6822億円)も当初想定の45%にあたる226億円(16年度見込み)まで目減りしている。
バブル崩壊後、低金利が続いた結果だが、低金利は国の政策である。その国は今も事実上、同社唯一の株主である。
国の責任は免れない。初めから純粋な民間企業として経営が成り立つ見込みがなかったと言える。
北海道は広大で、人口密度は全国の都道府県で最低。積雪寒冷地なので除雪や凍結対策などの維持費もかさみ、本州の旅客3社とは根本的に条件が違う。
国民は公共交通サービスを等しく受ける権利を有することは言うまでもない。
初めから成り立つ見込みがなく出発したJR北海道、最大の被害者は、10路線13区間を単独で維持できなくされた北海道の沿線住民だ。
安倍政権は昨年、JRの設備投資は自前で行う原則を曲げ、JR東海のリニア建設に3兆円の公的資金の投入を決めた。上場したJR九州には、本来禁じられている経営安定基金取り崩しを認めた。
JR北海道の危機に限って「地域が考える問題」などと責任転嫁を許すわけにはいかない。
国民の財産であり、公共交通の基軸であった国鉄を解体し、新自由主義をあらゆるところにまで浸食させ、格差と対立・分断の社会の先端を開いたのは国鉄改革であった。
労働者・国民・利用者、地方にすべての犠牲を押し付け、利益は株主・経営者が総取りする。
これが明らかになったJR30年ではないのか。(秋葉雄一郎)
『週刊新社会』(2017年6月6日)
-地方の切捨てー (週刊新社会)
国鉄の分割・民営化に反対する国労組合員らを「人材活用センター」と称する収容センターに送り込み、労働者.鉄道マンとしての誇りを奪って強行し、誕生させた「新生JR」。時の政権が進めてきた国鉄解体=分割・民営化=JR会社設立という国策が30年を経過した中で見えてきたものは、「うその大宣伝と利権獲得での大儲け、そして労働組合.労働運動破壊」(坂口智彦国労委員長)ではなかったのか。国鉄の分割民営化に反対した国労は、必ずや口-カル線の廃止や安全が破壊されるだろうと訴えてきた。そして今、それが現実のものになっている。
1987年の国鉄改革は、地方の赤字路線をできるだけ維持していくことが前提だった。実際、JR発足後に廃止が決まったのは全国でも9路線しかない。北海道管内は5路線であった。
全国の赤字ローカル線「特定地方交通線」83線であったが、本州三社は他の黒字路線収益でカバーし、三島会社には経営安定基金を設け、その運用益で路線を維持していく方法を採用した。
しかし、利益追求する民営化の下で、国民の足は脅かされる事態となっている。2000年以降、全国で廃線となったのは39路線7771.1キロである。
しかも、JR北海道が赤字路線を維持するための代償だった経営安定基金の運用益は、金利低下で当初見込みより不足した分の総額は過去30年間で約430億円にのぼる。国からの追加支援は1200億円の無利子融資などに限られ、同社の経営は悪化した。
JR北海道が見直し対象として昨年11月に公表した10路線13区間の総延長距離は、現在の路線の半分近くに及ぶ。赤字路線を極力維持することを前提にした「スキーム」は破綻したと言えるだろう。
石井啓一国土交通相は「人口減少が進み、マイカーなど他の交通手段や高速道路が拡充した」と北海道の地域性に原因があるとの主張だが、麻生太郎財務相は、国がJR北海道に対して行つてきた資金支援を「弥縫策だ」「根本に手を着けずにこの間題を解決するのは無理」と抜本的な支援の必要性を指摘した。「JR北海道をJR東日本と合併させるしかー2/28」参院予算委(『北海道新聞』3/28)。
◆ ドル箱路線をもっ「東日本」「東海」「西日本」に対し、北海道、四国は苦境
2016年3月の業績(本業のもうけを示す営業損益)は、
JR北海道▲352億円、
JR東日本4878億円、
JR東海5786億円、
JR西日本1815億円、
JR四国▲90億円、
JR九州208億円、
JR貨物0(15年ぶり赤字脱却)。
北海道、四国は鉄道事業が厳しく、貨物を含む3社は道筋が見えない。
とくに、北海道は深刻だ。16年3月期には352億円の営業損失を計上した。経営安定基金(6822億円)も当初想定の45%にあたる226億円(16年度見込み)まで目減りしている。
バブル崩壊後、低金利が続いた結果だが、低金利は国の政策である。その国は今も事実上、同社唯一の株主である。
国の責任は免れない。初めから純粋な民間企業として経営が成り立つ見込みがなかったと言える。
北海道は広大で、人口密度は全国の都道府県で最低。積雪寒冷地なので除雪や凍結対策などの維持費もかさみ、本州の旅客3社とは根本的に条件が違う。
国民は公共交通サービスを等しく受ける権利を有することは言うまでもない。
初めから成り立つ見込みがなく出発したJR北海道、最大の被害者は、10路線13区間を単独で維持できなくされた北海道の沿線住民だ。
安倍政権は昨年、JRの設備投資は自前で行う原則を曲げ、JR東海のリニア建設に3兆円の公的資金の投入を決めた。上場したJR九州には、本来禁じられている経営安定基金取り崩しを認めた。
JR北海道の危機に限って「地域が考える問題」などと責任転嫁を許すわけにはいかない。
国民の財産であり、公共交通の基軸であった国鉄を解体し、新自由主義をあらゆるところにまで浸食させ、格差と対立・分断の社会の先端を開いたのは国鉄改革であった。
労働者・国民・利用者、地方にすべての犠牲を押し付け、利益は株主・経営者が総取りする。
これが明らかになったJR30年ではないのか。(秋葉雄一郎)
『週刊新社会』(2017年6月6日)
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