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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

国鉄分割・民営化から30年 検証と見直し(2)

2017年06月23日 | 格差社会
 ◆ 存亡の危機に立つ北海道
   収益より公益を
(週刊新社会)
名寄市議会議員 佐久間誠

 民営化後、「重大な人的被害が生じた運転事故」は11件も発生している。死者107人、負傷者562人という大惨事となつた福知山線脱線事故(2005年)では、JR西日本の「企業体質」が問題になり、私鉄との競争に勝つためのスピードアップと過密ダイヤが事故の要因になつた。無人化駅が加速されていて、JR北海道と四国は75%、西日本は56%、東日本と九州は半数の駅が無人化され、利用者、住民に不安を広げている。
 かつてJR北海道は「冬こそJR」というCMを流した。しかし今は、天気予報で「明日が吹雪く」と報道されただけで翌日の列車運休が突然発表される。国鉄時代にはまず考えられないことだ。
 極限まで鉄道員を減らし、非常時に対応することができない状態では、「安全・正確」な輸送などできるはずがない。
 年度ごとの黒字決算を至上命題としてきたから、本来やらなければならない設備投資をせず、結果として車両の老朽化で回す車両もなくなる。ツケは全て利用者へのしわ寄せとなり、不便な列車ダイヤとなっていく。
 JR北海道は、今や「負のスパイラル」に陥ってしまつている。こうした状態に、有効な手立てを講じてこなかったJR北海道の経営陣の罪は大きい。
 「2020年度中に資金不足に陥る」と公表せざるを得ない状況に陥るまで手をこまねき、「上下分離」で財政状況の厳しい自治体に負担を求めても反発しか返ってこないだろう。また、「公有民営」という手法も研究されている地域もあるが、財政難に苦しむ北海道において、自治体負担は無理だと言わざるを得ない。
 運休から2年の日高線だけで86億円、16年8月の台風復旧費用40億円、車両の老朽化・普通軌道車平均車齢32年、特急軌道車平均車齢20年、橋梁306カ所のうち、約半数が50年超、約1割が100年超、トンネルが176カ所のうち約3分の1は50年超、100年超が21カ所にのぼるといわれている。
 鉄道事業法の精神からも、福祉の恩恵は全国平準化されるものだ。したがって私は、JR北海道の再国有化か、あるいは鉄道建設運輸施設整備支援機構に線路の維持管理をさせることが、安定的な鉄路の維持・運営を図るうえでの最善策だと考えている。
 地域の鉄道は、大切な生活路線として暮らしを支える「交通弱者の足」である。また、国民の食糧基地としての北海道は、首都圏の台所を支え、安全な農産物の供給を通して都市部に貢献している。
 昨年の台風被害によって鉄道網が遮断され、首都圏ばかりか全国的に一気に野菜類をはじめとする農産物が高騰したのは記憶に新しい。単純に、運賃収入の収益性だけで推し量ることはできない
 便利で快適な公共鉄道網を創ることで、ゆとりある生活が可能になり、自動車渋滞のない快適な都市生活も生まれる。社会的効率性も高まるだろう。
 地方路線は、まだまだ社会的な役割を果たせる。国鉄の分割・民営化から30年。収益よりも公益を重視した国の総合交通政策の策定こそが求められる。
『週刊新社会』(2017年6月6日)

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