◆ 追悼記 (東京新聞【本音のコラム】)
世を去ったばかり、平野甲賀のエッセーを読んでいて「美しい女優と醜い政治家。それらが入り乱れて、創作のモチーフとなる」とあって、新鮮に感じた。「醜い政治家」などというマンガチックな言い方が、妙に時代にあっているからだ。
といって、あたかも封建時代の領主のように、地方を地盤として国会議員に成り上がった自民党二世、三世議員の頽廃(たいはい)や支持率急落の内閣について書きたいのではない。
平野甲賀は同い年の装丁家で四十年来の付き合いだった。会った頃から悠揚迫らざる大人だった。
彼の変種株のような強烈な描き文字を組み合わせた表紙カバーで、拙著を三十冊ほどドラマチックに飾ってもらった。
四十代の十年ほど、やはり同年の作曲家高橋悠治や評論家の津野海太郎などと月一回、小冊子「水牛通信」を発行していた。
そのこともあり先日高橋、津野と集まって追悼した。
平野が亡くなる二十日前、作家小沢信男さんが他界した。私たちより十一歳上、九十三歳だった。
若いとき肺を患っていたこともあってか、この三年ほど酸素ボンベを曳(ひ)いて歩いていた。二年前、横浜市の神奈川近代文学館での「花田清輝展」にご一緒した。
みすず書房のPR誌「みすず」が到着すると、表紙裏の連載コラム「賛々語々」を読み、お元気なのを確認してきたが、四月号から書き手が代わった。
『東京新聞』(2021年5月18日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
世を去ったばかり、平野甲賀のエッセーを読んでいて「美しい女優と醜い政治家。それらが入り乱れて、創作のモチーフとなる」とあって、新鮮に感じた。「醜い政治家」などというマンガチックな言い方が、妙に時代にあっているからだ。
といって、あたかも封建時代の領主のように、地方を地盤として国会議員に成り上がった自民党二世、三世議員の頽廃(たいはい)や支持率急落の内閣について書きたいのではない。
平野甲賀は同い年の装丁家で四十年来の付き合いだった。会った頃から悠揚迫らざる大人だった。
彼の変種株のような強烈な描き文字を組み合わせた表紙カバーで、拙著を三十冊ほどドラマチックに飾ってもらった。
四十代の十年ほど、やはり同年の作曲家高橋悠治や評論家の津野海太郎などと月一回、小冊子「水牛通信」を発行していた。
そのこともあり先日高橋、津野と集まって追悼した。
平野が亡くなる二十日前、作家小沢信男さんが他界した。私たちより十一歳上、九十三歳だった。
若いとき肺を患っていたこともあってか、この三年ほど酸素ボンベを曳(ひ)いて歩いていた。二年前、横浜市の神奈川近代文学館での「花田清輝展」にご一緒した。
みすず書房のPR誌「みすず」が到着すると、表紙裏の連載コラム「賛々語々」を読み、お元気なのを確認してきたが、四月号から書き手が代わった。
『東京新聞』(2021年5月18日【本音のコラム】)
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